評価報告書 > 評価対象研究開発課題の個別評価

大学発ベンチャー創出推進
平成17年度採択課題事後評価報告書

4.評価対象研究開発課題の個別評価

1.研究開発課題名称

ナノ粒子構造を有する中空粒子のバブルテンプレート法による量産プロセスの開発

2.開発代表者、起業家 氏名(所属)

開発代表者:高橋 実(名古屋工業大学 教授)
起業家:冨岡達也

3.研究開発の目的

 医薬、食品、化粧品などの各種フィラー分野における軽量化基材として注目されている無機中空粒子の低コスト化が待望されている中、液―ガス界面反応によりナノオーダーの微細結晶を析出させて殻を形成させうるバブルテンプレート法の開発を行う。同方法は気泡自体がテンプレートのコアであることから不要な廃棄物が生成しないため、従来法のようなテンプレートの除去工程も不要になるなど極めて簡便・低コストの優れた無機中空粒子製造技術である。

4.事後評価内容

A)成果
 炭酸カルシウムの中空粒子生成条件についての詳細検討結果により、CO2バブリング時におけるpHの変化速度とその変動範囲、反応時間の制御が重要であるとの知見を得た。その結果、量産方式としては、反応槽の大容量化よりも2槽方式の方が合成サイクルタイムの点で有利であるとの結論に達し、溶液リサイクルを含めた生産方式を確立した。さらに蛍光増白材として期待できる酸化亜鉛チューブの生成にも成功し、製造条件を確立することができた。これらの結果を基に株式会社NCAPを設立した。
本事業期間中の特許出願数:4件
B)評価
①研究開発計画の達成度
 炭酸カルシウムの機能性中空粒子および酸化亜鉛チューブの安定な製造条件、量産方式を計画通り確立した。応用分野が多岐にわたり、少しずつ異なるスペックが求められるので、優先順位をつけて今後の研究を進める必要がある。
②知的財産権の確保
 様々な分野での応用を目指しており、各分野の企業との連携も始めている。今後実用化をすすめるにあたり応用分野ごとの特許を適切に抑えていくなど、今後の知財戦略が重要である。
③起業計画の妥当性
 当初の2年間は大学とユーザー間の共同研究用サンプルの供給会社としてスタートし、最終的には高付加価値製品は自社で製造、量産品は専業メーカーに製造委託というビジネスモデルであるが、具体的なユーザーやパートナーも存在し、適切と思われる。
④新産業創出の期待度
 大手ユーザーが興味を示しているように、本技術は軽量化基材のみならず、表面改質材や蛍光塗料など多くの産業分野への用途展開が期待される。
⑤総合・その他
 ユーザー企業との連携も着実に進められており、最初の2年間は研究用サンプル供給会社としてスタートするなど、堅実な事業計画である。応用製品を積極的に開発していく計画は妥当と思われるが、各用途ごとに品質保証項目とスペックを適切に確定するとともに、用途特許や外国出願等、知財権の確保についても確実に対応して頂きたい。

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