評価報告書 > 評価対象研究開発課題の個別評価

大学発ベンチャー創出推進
平成17年度採択課題事後評価報告書

4.評価対象研究開発課題の個別評価

1.研究開発課題名称

進化的画像処理による画像処理・認識システムの研究開発

2.開発代表者、起業家 氏名(所属)

開発代表者:長尾 智晴(横浜国立大学 教授)
起業家:大津 良司

3.研究開発の目的

 進化的計算法を最適化に用いた"進化的画像処理"を、高速化・高性能化・並列化して認識機構を付与するとともに、専用処理ボードによりハードウェア化し、複雑かつ高度な画像処理・認識プロセスを、事例学習することにより全自動で構築する画像処理システムを開発する。本技術は、工場内欠陥検査・品質管理等の2次元画像処理だけでなく、医用応用等の3次元処理やITS、自律ロボット等の動画像処理など様々な産業・社会分野において高い利用価値を期待できる。

4.事後評価内容

A)成果
 進化的画像処理・認識ソフトウェアとして、木構造型アルゴリズム自動生成ツール、ネットワーク型アルゴリズム自動生成ツール、進化的画像認識ツール等を開発した。さらに、これらの進化的画像処理を実装した進化的画像処理ボードを開発し、超高速進化的画像処理を実現した。これらの成果をもとに、株式会社マシンインテリジェンスを設立した。
本事業期間中の特許出願数:6件
B)評価
①研究開発計画の達成度
 事業化を意識した開発計画になっており、当初の計画通りの成果をあげたと評価できる。適用例についての実績的な記述や報告がほしかったが、得られた成果は、従来技術に対し、十分な優位性を持っていると思われる。
②知的財産権の確保
 新権利を6件出願していること、起業後のための商標登録を済ませていることは評価できる。
③起業計画の妥当性
 潜在的ユーザに対するヒアリングを実施して、ターゲットを絞って起業した点は評価できる。展示会やセミナーなどでの販促計画やWebを利用したサービスなど現状の計画も妥当と考える。
④新産業創出の期待度
 キズ検査、自動車産業の金型異常検出などの分野だけでなく、自動化が困難でこれまでは全て人手に頼ってきた領域にも画像処理技術を普及させることが期待できる。ただし、分野毎に許容される計算機資源の制限があり、またドメイン固有のノウハウがあるので、本提案手法が競争力を有するためには、ユーザの要求する性能、計算機資源、開発期間などを踏まえた対応も検討してほしい。
⑤総合・その他
 全般的に明確な研究開発姿勢と事業化姿勢が見られ、成長が期待できる。事業化での実績が広がることを期待しているが、新しい技術であるので実ビジネスでは技術の説明力が問われることにも留意して取り組んでほしい。

(*)"進化的画像処理"は横浜国立大学の登録商標

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