評価報告書 > 評価対象研究開発課題の個別評価

大学発ベンチャー創出推進
平成17年度採択課題事後評価報告書

4.評価対象研究開発課題の個別評価

1.研究開発課題名称

機器の簡単確実な操作を実現するハプティックユーザインターフェースの研究開発

2.開発代表者、起業家 氏名(所属)

開発代表者:熊澤 逸夫(東京工業大学 教授)
起業家:佐藤 啓

3.研究開発の目的

 感覚を刺激する機構の動力源を「人間の指先の力」とするハプティックユーザインタフェース(HUI)実装技術のプロトタイプを発展させ、実装体積の小型化、低消費電力化等の技術を開発し、量産設計を行う。本技術により、操作性及び正確性に優れたHUIの、高信頼化及び低コスト化を実現でき、様々な情報機器に搭載されることで、誰もがその便利さの恩恵を受けられる社会の実現に大きく貢献する。

4.事後評価内容

A)成果
 2重制御ループにすることにより迅速性と柔軟性を兼ね備えた制御技術と機器の操作中の指に簡易な機構で豊富な触感を提示するハプティックアダプタを開発した。さらに、ユーザインターフェース(UI)を研究開発するための開発環境として、開発ツール、ソフトウェアライブラリ、組み込みシステム等を研究者に提供するため、上記技術を、2種類の次世代UI開発キットとして開発した。これらの成果をもとに、インピュテクス株式会社を設立した。
本事業期間中の特許出願数:17件
B)評価
①研究開発計画の達成度
 HUI開発ツールを開発できたことは一つの成果であるが、具体的なデバイスについては要素技術の応用の可能性を示すコンセプトモデルの試作にとどまっている。ターゲットを絞った上で試作を行い、それぞれについて十分な検討を行って掘り下げた研究開発を進めるべきであった。
②知的財産権の確保
 アイデアとしては新規性があるので知財化は進んでいる。また重要な3件に絞ってPCT出願をするのも妥当である。事業化を阻害する特許の存在はないかよく精査した上で、今後ともパテントマップによる価値判断を続けてほしい。
③起業計画の妥当性
 スモールマーケットながら、プロ用のHUI開発キットのマーケットは立ち上がる可能性はある。ゲームなどのコンシューマ向けとプロ用に限らず、ターゲットを絞って実用化していく経営戦略が必要である。また、事業化のためには小型、軽量、低価格の実現が必須である。
④新産業創出の期待度
 コンシューマ向けの新しいタイプの機器は新産業創出が比較的容易であり、成功の可能性は大きいが、逆に後発メーカーでも参入障壁が低く、マーケティング力で市場を占有できるなどベンチャーとしてはリスクも大きいので、適切なパートナー獲得を含め、慎重に市場選択を進めてほしい。
⑤総合・その他
 ユーザインターフェースについては、大衆の選択は、必ずしも技術そのものの優劣で決まるわけではなく、マーケティング力に負うところが大きい。現時点は有望要素技術の市場性評価の第一段階試作であるが、具体的なニーズ側からの引き合いがあるのであれば、まずはそれに合わせた開発を進め、パートナーとともに実用化を展開していくことを期待したい。

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