評価報告書 > 評価対象研究開発課題の個別評価

大学発ベンチャー創出推進
平成17年度採択課題事後評価報告書

4.評価対象研究開発課題の個別評価

1.研究開発課題名称

長時間動画キャプチャ機能を有する高速ビジョンシステムの開発

2.開発代表者、起業家 氏名(所属)

開発代表者:石井 抱(広島大学 教授)
起業家:松田久仁子

3.研究開発の目的

 イメージャーから必要な画像領域のみを知的画素選択する方式により、1024×1024画素の空間解像度と1000fps以上での実時間特徴量計算・長時間動画キャプチャ機能が両立する超高速ビジョンシステムを開発する。本ビジョンシステムにより、スポーツやバイオの分野で様々な物理・生理現象の発見への貢献や、長時間かつ高速のオンライン画像検査を必要とする産業分野で技術革新の創出が期待できる。

4.事後評価内容

A)成果
 1000fpsレベルでの実時間特徴量計算と長時間動画キャプチャを同時実現する高速ビジョンシステムとして、矩形領域追跡型高速ビジョン方式と知的・画素フレーム選択型高速ビジョン方式の2種類のプロトタイプシステムを開発した。さらに、多数のユーザから実用化の要求が大きかった矩形領域追跡型高速ビジョンについて改良を進め、低価格化を実現した。これらの成果をもとに、株式会社アイアイラボを設立した。
本事業期間中の特許出願数:6件
B)評価
①研究開発計画の達成度
 2種類のプロトタイプシステムを開発し、当初の計画は達成されたと判断できる。多数のユーザからの実用化要請に絞って開発計画を見直すなどの点は評価できる。低価格化の高速ビジョンに見通しをつけたが、さらなるコスト低減が必要と思われる。
②知的財産権の確保
 出願済みの新権利6件の取得は数的には十分評価できる。他社との競争において強力な権利となっているか、今後さらに検討が必要である。
③起業計画の妥当性
 何社かのパイロットユーザと実用性についての具体的実験を実施してサンプル出荷を達成し、関連企業とも開発・製造に係わる協力体制を構築した点は評価できる。スモールスタートに徹しており着実であるが、多様な用途を視野に入れたエンジニアリング事業の性格が強いため、さらなる事業の成長を図るためには、ターゲットユーザの絞込等何らかの対応策が必要である。
④新産業創出の期待度
 事業化のため、大手との協業も積極的に進めており、製品検査などで利用できるようになると市場が大きく広がる可能性がある。そのためにはパイロットユーザ、協業先との量産を見据えたディスカッションをおこない、応用システム開発のプライオリティを明確にして事業を進める必要がある。
⑤総合・その他
 事業体制を確立している点は評価できる。技術をアピールできる適切なアプリケーションは見つかっているが、今後はニーズの大きい応用システムの開発が急がれる。そのためにはターゲットユーザの絞り込みと共に、代替技術がなく、成長性のある分野を見つけて集中すると共に、いずれかの時点で外部資金、外部人材を導入して大きな展開を図ることを期待したい。

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