評価報告書 > 評価対象研究開発課題の個別評価

大学発ベンチャー創出推進
平成17年度採択課題事後評価報告書

4.評価対象研究開発課題の個別評価

1.研究開発課題名称

低HDL血症治療の総合的技術開発

2.開発代表者、起業家 氏名(所属)

開発代表者:横山 信治(名古屋市立大学 教授)
起業家:金澤 一

3.研究開発の目的

 動脈硬化性疾患の発症予防には低HDL血症の治療が効果的であることが判明しているが、低HDL血症を直接標的とした治療技術の開発は十分とはいえない。本研究開発では、HDL産生に関する細胞と動物レベルでの薬物効果の評価技術を開発・標準化し、その基盤技術を基に独自の作用機構を有するHDL増加薬の開発を行う事を目標とする。介護の対象になっている多くの高齢者が脳梗塞・心筋梗塞と関連した病態によるものであり、本技術に対する社会の期待は非常に大きい。

4.事後評価内容

A)成果
 HDL産生律速膜タンパク質であるABCA1に対する分解抑制作用を有するシーズ化合物を基に、それらの類縁化合物の最適化研究を進め、数点の代表化合物を見出した。これらの化合物のうち、一部は毒性試験と動物試験による動脈硬化進展への抑制効果試験を終え、基本的な安全性と予備実験レベルでの臨床効果を確認した。また、ABCA1遺伝子の発現に関わる抑制機構を見出し、これに関わる酵素の阻害により動物実験レベルでのHDL増加も確認した。これらの成果をもとに、合同会社ハイスクラボラトリーを設立した。
本事業期間中の特許出願数:2件
B)評価
①研究開発計画の達成度
 HDL産生律速膜タンパク質であるABCA1の分解を抑制するシーズ化合物の独自構築評価系によるHDL産生増加効果と、動物実験での動脈硬化抑制効果を確認した。また、このシーズ化合物を基にしてオプティマイズした新規誘導体でも細胞レベルでの更に強いHDL産生増加効果を確認した。
②知的財産権の確保
 概ね確保されている。
③起業計画の妥当性
 提携企業を選定し、そことの共同研究にて事業運営を行い、臨床開発を進めるプランは妥当と思われる。
④新産業創出の期待度
 HDL産生増加薬は、新たな創薬ターゲットであるが、代謝制御の創薬研究は未解決部分も多く、相当なコストとリスクが想定される。提携企業と共に当該薬剤の開発がその突破口となることを期待したい
⑤総合・その他
 独創的な着想を基にした基礎研究成果は高く評価できる。今後も確実な実用化を目指して、作用機序や薬理作用についての差別化要因の継続的な掘り下げにより、提携会社との本格的な共同開発ステージに移行することを期待したい。

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