評価報告書 > 評価対象研究開発課題の個別評価

大学発ベンチャー創出推進
平成17年度採択課題事後評価報告書

4.評価対象研究開発課題の個別評価

1.研究開発課題名称

胃潰瘍も心筋梗塞も起こさない、第四世代NSAIDsの開発

2.開発代表者、起業家 氏名(所属)

開発代表者:水島 徹(熊本大学 教授)
起業家:新居 泰

3.研究開発の目的

 非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)の胃潰瘍性副作用や心筋梗塞を誘発する副作用が臨床現場で大きな問題となっている。本研究開発では、膜傷害作用がなく、かつシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)に対して選択性を持たないNSAIDsが胃潰瘍も心筋梗塞も起こさない真に安全な第四世代のNSAIDsであるということを検証し、続いてこのコンセプトに基づいた新しいNSAIDs誘導体を合成・評価し、安全性試験、体内動態解析を経て臨床開発へ繋げていく事を目標とする。この薬剤開発により、抗炎症薬、鎮痛薬、解熱薬などとして広く使用され、その治療効果の向上に貢献する事が期待される。

4.事後評価内容

A)成果
 NSAIDsの胃潰瘍性副作用はそれまでの定説であったシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)阻害作用とは無関係であり、NSAIDsによる胃粘膜上でのプロスタグランジン低下と膜障害作用であることが、開発代表者等らの実験動物モデルを用いた作用機序研究から明らかになった。この新たな知見とそれに基づき開発したスクリーニング法により、膜障害を起こさないNSAIDsの探索を行い、当初の一次リード化合物より膜傷害性とCOX-2選択性が抑制され、既存NSAIDsとほぼ同様な抗炎症作用を示す二次リード化合物を見出した。
本事業期間中の特許出願数:0件
B)評価
①研究開発計画の達成度
 スクリーニング系の構築は計画通りながら、化合物探索のための合成研究体制の構築が遅れた結果、研究計画に遅延が生じた。研究開発時期の後半には合成研究体制も整備され、遅れも挽回されてきたが、目標とする開発ステージには届かなかった。
②知的財産権の確保
 新たに見出した二次リード化合物周辺の知財権確保を急ぐべきである。
③起業計画の妥当性
 研究開発に遅れが生じているため、起業家を中心に起業計画の再構築が必要である。
④新産業創出の期待度
 抗炎症薬を取り巻く環境に関しては、大きな状況変化がなく、当該研究開発の重要は引き続き高い。この機会を活かした本格的な創薬研究の実施と実用化への努力を望む。
⑤総合・その他
 合成研究体制構築の遅れにより研究計画が遅延し、当初目標が充分に達成できなかったことが残念である。今後の努力により確実に創薬に繋げる事を期待する。

■ 目次に戻る ■