評価報告書 > 評価対象研究開発課題の個別評価

大学発ベンチャー創出推進
平成17年度採択課題事後評価報告書

4.評価対象研究開発課題の個別評価

1.研究開発課題名称

医療・食品・環境計測に向けたマルチケミカルセンシングデバイスの開発と実用化

2.開発代表者、起業家 氏名(所属)

開発代表者:鈴木孝治(慶應義塾大学 教授)
起業家:五十嵐賢

3.研究開発の目的

 医療・食品・環境分野において、「その場」で、「一度」に、「複数」、「瞬時」にセンシングする技術が求められているが、従来の測定システムでは複数項目の測定は困難である。本研究開発では、測定環境に応じた複数のケミカルセンサを集積化し、一度に多項目を同時、かつ長期にわたって連続測定することのできるマルチケミカルセンシングデバイスを開発する事を目標とする。本デバイスによって、医療分野において救急医療や集中治療室・医療検査での患者の救命率の向上や、食品業界において味の均一化や毒性判定への応用などの新規市場開拓が期待される。

4.事後評価内容

A)成果
 各種選択性電極技術とニューラルネットワーク解析手法を融合して、味覚成分の定量化と人間による感能試験データを基にした学習が可能な味覚センサーを開発した。このセンサーは①測定速度の迅速さ、②少量サンプルで測定可能、③人間の舌の味覚機能の再現、等の競合技術にはない優位性を有している。また、この味覚センサー装置用の開発過程で、電位窓が大きく多くのカーボン電極の代替となる可能性のあるECRスパッタカーボン電極も開発した。これらの成果をもとに、AISSY株式会社を設立した。
本事業期間中の特許出願数:0件
B)評価
①研究開発計画の達成度
 味覚センサーとしての製品価値を向上させるためには、データベース構築とデータの精度をより向上させる為の測定対象食品毎のニューラルネットワークのカスタマイズが必要であるが、味覚センサー試作機が完成したことから、概ね研究開発計画を達成できたと考えられる。
②知的財産権の確保
 基本特許の国際出願が進められているが、知的財産権の強化を考慮すべきである。
③起業計画の妥当性
 先ずは、味覚関連の研究およびコンサルタント事業の受託から始め、味覚センサー装置の完成度を高めて行くとする事業戦略は概ね妥当と考えられる。本装置のコンセプトである「味のデザインが可能」は他技術と差別化する上で非常に重要なポイントである。
④新産業創出の期待度
 味覚センサーとしての有用性(定量性と効率性)を実証できれば、他の用途への展開も期待できる。
⑤総合・その他
 事業を成功させる事ができるかどうかは、 競合技術との差別化が不可欠であり出来るかどうかに懸かる。例えば「データベースの蓄積」、「味のデザイン」、「食品毎のカスタマイズ」などが重要な差別化要因になると考えられる。また、今後どの用途を選択して展開していくかも重要となる。

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