評価報告書 > 評価対象研究開発課題の個別評価

大学発ベンチャー創出推進
平成17年度採択課題事後評価報告書

4.評価対象研究開発課題の個別評価

1.研究開発課題名称

二次元培養細胞マニピュレーション装置の開発

2.開発代表者、起業家 氏名(所属)

開発代表者:金森敏幸(独立行政法人産業技術総合研究所 チーム長)
起業家:柳沢真澄

3.研究開発の目的

 分子生物学や遺伝学あるいは細胞工学の研究において、動物細胞が盛んに利用されるようになり、個々の細胞を自在にマニピュレートする技術の開発が必要とされている。本研究開発では、光・温度・pHに応答する高分子材料表面において個々の細胞を光で遠隔的に接着・脱着させることにより、細胞の選抜やパターンニングなどを簡便かつ自在に行うことができる細胞の二次元マニピュレーション装置を開発する事を目標とする。これは、初代培養細胞を用いた実験の門戸を大きく広げるものであり、細胞工学分野の研究の飛躍的発展が期待される。

4.事後評価内容

A)成果
 任意細胞の精密配置や選別、増殖範囲の制限等の細胞操作技術の確立を目指して、光・温度・pHに応答する高分子材料表面上で個々の細胞を光で遠隔的に接着・脱離させる基盤技術を基に、以下に示す主な技術を開発した。
①細胞が増殖できる領域を任意に設定できる技術
②複数種細胞の精密配置と接着を行う技術
③抗体が知られていない足場依存細胞を効率的に選別する技術
上記成果をもとに、Cytonicss株式会社を設立した。
本事業期間中の特許出願数:7件
B)評価
①研究開発計画の達成度
 研究開発はほぼ計画通り進められ、当初の目標通りに光応答性ポリマーを利用したマニピュレーション技術を確立した。また、積極的なプレマーケティング活動により、上記①〜③技術を応用しユーザー自身が医薬品開発プロセスに組み込みが可能な理化学機器をターゲットとして設定できた事も評価できる。
②知的財産権の確保
 質・量共に十分な知財権の確保がなされている。
③起業計画の妥当性
 事業計画は現在具体的に販売の目処が立っている研究用理化学機器としての展開に基づいて立てられており、販売ルートも中堅ディーラーと総販売代理店契約を結ぶなど、現実的かつ妥当なものであると考える。販売体制の強化により、大口ユーザーが獲得される事を望む。
④新産業創出の期待度
 当該技術の応用・発展形である組織チップ(チップ上に配列した細胞あるいはそれにより形成させた微小組織)による動物試験代替の薬理活性アッセイへの利用を始め、多くの応用例と新規分野への発展が期待できる。
⑤総合・その他
 二次元培養細胞マニピュレーション技術の確立およびそれに要する装置や器具等に関する当初開発目標については、ほぼ達成した。現時点において決定的な用途開発には至っていないが、開発技術のポテンシャルは国内外で高く評価されている。技術自体は他に類似するものはなく、組織チップによる薬理活性アッセイの有効性が示されれば、革新的な医薬品開発ツールとなることが期待される。それ以外にも、各機関との共同研究で新しい用途が創出される可能性があり、今後の積極的な事業展開を期待したい。

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