4.評価対象研究開発課題の個別評価
1.研究開発課題名称
スギ花粉アレルギーに対する経口免疫寛容剤およびアレルゲン不活化剤の開発
2.開発代表者、起業家 氏名(所属)
開発代表者:加藤昭夫(山口大学 名誉教授)
起業家:神田真治
起業家:神田真治
3.研究開発の目的
スギ花粉症患者が増加し、社会問題化しているが、根本的な治療法はなくアレルゲン除去療法や抗炎症剤等による対症療法が行われている。本研究開発は、スギアレルゲンCry j1を食用多糖であるガラクトマンナンを用いて天然に生じるメイラード型の多糖修飾法により得られるアレルゲン−多糖複合体にて、アレルゲンに対する免疫応答を根本的に低減化できる腸管経口免疫寛容剤を開発する事を目標とする。さらに、マスク、エアフィルター等に展着し、アレルゲン除去剤としての利用ができるスギアレルゲンの卵黄抗体を用いたアレルゲン不活化剤を開発することも次の目標とする。これらの技術は、ブタクサ、ヒノキなど他の花粉症にも応用展開が可能であり、大きな社会的効果が期待される。
4.事後評価内容
A)成果
本研究開発において、①スギ花粉からアレルゲンを効率的に大量精製する技術と、②得られたアレルゲンの抗体エピトープ部位を多糖修飾にて複合化させることにより、スギ花粉症患者血清中のIgEとの反応性を消失させて、アナフィラキシーを生じない安全な経口免疫寛容剤を開発するための基礎技術を確立した。また、動物試験にてこのスギ花粉エピトープ部位の多糖修飾複合体の作用メカニズムを検証すると共に、ボランティア花粉症患者の協力による経口投与試験にて、70〜80%の患者で花粉症低減効果を確認した。これらの成果をもとに、プロテック株式会社を設立した。
本研究開発において、①スギ花粉からアレルゲンを効率的に大量精製する技術と、②得られたアレルゲンの抗体エピトープ部位を多糖修飾にて複合化させることにより、スギ花粉症患者血清中のIgEとの反応性を消失させて、アナフィラキシーを生じない安全な経口免疫寛容剤を開発するための基礎技術を確立した。また、動物試験にてこのスギ花粉エピトープ部位の多糖修飾複合体の作用メカニズムを検証すると共に、ボランティア花粉症患者の協力による経口投与試験にて、70〜80%の患者で花粉症低減効果を確認した。これらの成果をもとに、プロテック株式会社を設立した。
本事業期間中の特許出願数:1件
B)評価
①研究開発計画の達成度
本研究開発にて、スギアレルゲン−多糖複合体がスギ花粉症に対する経口免疫寛容を誘導し、70〜80%の患者に対する明確な症状低減効果を示し、安全性が高くアナフィラキシ−を生じないこと、さらには腸管免疫細胞(樹状細胞、マクロファージ)により貪食されやすく、経口免疫寛容を起こしやすいこと、以上の各知見を得たことは評価される。
本研究開発にて、スギアレルゲン−多糖複合体がスギ花粉症に対する経口免疫寛容を誘導し、70〜80%の患者に対する明確な症状低減効果を示し、安全性が高くアナフィラキシ−を生じないこと、さらには腸管免疫細胞(樹状細胞、マクロファージ)により貪食されやすく、経口免疫寛容を起こしやすいこと、以上の各知見を得たことは評価される。
②知的財産権の確保
スギ花粉からのアレルゲンの効率的大量精製技術等に関する知財権の強化が必要である。
スギ花粉からのアレルゲンの効率的大量精製技術等に関する知財権の強化が必要である。
③起業計画の妥当性
スギ花粉やその精製品を商品として販売しつつ、パートナーの製薬会社と協力して経口免疫寛容剤の臨床例を増やし、特定保健用食品や医薬品を狙う事を旨とするビジネスプランは概ね妥当と思われる。今後、許認可に関する要件や環境情報に留意して開発を進め、経口免疫寛容剤として確実に実用化することを期待する。
スギ花粉やその精製品を商品として販売しつつ、パートナーの製薬会社と協力して経口免疫寛容剤の臨床例を増やし、特定保健用食品や医薬品を狙う事を旨とするビジネスプランは概ね妥当と思われる。今後、許認可に関する要件や環境情報に留意して開発を進め、経口免疫寛容剤として確実に実用化することを期待する。
④新産業創出の期待度
本事業が成功すれば、経口免疫寛容剤という新しい概念の医薬品や健康食品産業の創出に繋がる。
本事業が成功すれば、経口免疫寛容剤という新しい概念の医薬品や健康食品産業の創出に繋がる。
⑤総合・その他
国民病であるスギ花粉症の根治療を可能にする経口免疫寛容剤を事業化する試みは多くの花粉症患者の期待に応えるものであり、社会的な要請度は高い。開発ターゲットを特定保健用食品とするのか医薬品とするかを明確にし、パートナー会社や医療機関との連携や協力のもとに、関連法規制に沿った許認可申請手続きを経て、1日も早く実用化される事を望む。
国民病であるスギ花粉症の根治療を可能にする経口免疫寛容剤を事業化する試みは多くの花粉症患者の期待に応えるものであり、社会的な要請度は高い。開発ターゲットを特定保健用食品とするのか医薬品とするかを明確にし、パートナー会社や医療機関との連携や協力のもとに、関連法規制に沿った許認可申請手続きを経て、1日も早く実用化される事を望む。