評価報告書 > 評価対象研究開発課題の個別評価

大学発ベンチャー創出推進
平成17年度採択課題事後評価報告書

4.評価対象研究開発課題の個別評価

1.研究開発課題名称

アゾポリマーを利用した「抗体チップ」の作製と食品機能評価への応用開発

2.開発代表者、起業家 氏名(所属)

開発代表者:大澤俊彦(名古屋大学 教授)
起業家:許政傑

3.研究開発の目的

 「特定保健用食品」の認可には、ヒトでの臨床データが必須条件となっており、これらの疾病リスク低減を目的とした機能性食品開発には、今後一層の科学的根拠が要求される状況である。本研究開発は、すでに開発した「酸化ストレスバイオマーカー」に特異的なモノクローナル抗体と、抗肥満やアレルギー抑制、脳内老化抑制作用等に特異的なモノクローナル抗体とを組み合わせ、アゾポリマー上に固定化した「抗体チップ」を作製し、光測定装置と組合せて食品機能性評価システムを開発する事を目標とする。この簡便な評価システムの実現により、食と健康の分子疫学的研究や大規模介入研究に大きな貢献ができるものと期待される。

4.事後評価内容

A)成果
 開発代表者を中心に、関係大学および協力企業との共同研究により、可視光の照射によるアゾポリマーの固定化技術を抗体チップの製造に利用する事で、固定抗体に損傷の少ない抗体チップの基本技術を確立した。この技術を基に動物試験用チップの開発はほぼ終了したが、目標とするヒト検体測定用の抗体チップの開発では、現時点で測定データ蓄積等若干の課題が残されている。
本事業期間中の特許出願数:2件
B)評価
①研究開発計画の達成度
 当該技術による抗体チップは動物検体測定用途での実用化のレベルまで技術開発が進んでいるが、ヒト検体測定用途では実用化に向けた測定データ精度の最終調整が必要である。
②知的財産権の確保
 抗体に関する出願はされているが、抗体チップに関する知財戦略が弱い。
③起業計画の妥当性
 診断薬、診断装置、医薬品関連の各分野の企業とのアライアンスのもと、共同研究により最終製品を開発する研究開発型のバイオベンチャーを設立しようとするビジネスプランは概ね妥当と考えられる。今後、残された課題である測定データ精度調整を早急に終了し、実用性と優位性の実証と認知度を高める必要がある。
④新産業創出の期待度
 臨床データに基づく優位性と実用性が実証されれば、当初計画の食品機能評価への応用以外でも、バイオマーカーによる疾病リスク診断への応用も期待される。
⑤総合・その他
 抗体チップ測定システムの実用化への期待は大きい。今後、提携企業との作業分担を明確にして、ヒトでの実用性の実証試験データ取得にも充分配慮しながら、早期の起業を目指して欲しい。

■ 目次に戻る ■