評価報告書 > 評価対象研究開発課題の個別評価

大学発ベンチャー創出推進
平成17年度採択課題事後評価報告書

4.評価対象研究開発課題の個別評価

1.研究開発課題名称

人工核酸BNAを用いた簡便・迅速・高精度遺伝子検査診断システムの開発

2.開発代表者、起業家 氏名(所属)

開発代表者:今西 武(大阪大学 名誉教授)
起業家:田村 格

3.研究開発の目的

 従来の遺伝子検査診断法は、遺伝子の検出感度が十分ではないため、PCR法等での遺伝子増幅工程が不可欠であるが、この工程には、時間と手間や費用が掛かり、本手法の普及拡大の大きな支障になっていた。本研究開発では、高機能性人工核酸BNAを開発し、その特性を利用した核酸材料側の増幅技術と、高感度な化学標識分子技術も新たに開発することにより、簡便・迅速で高精度な遺伝子検査診断システムを開発する事を目標とする。この煩雑な遺伝子増幅過程を経由しない次世代型の遺伝子検査診断システムは、医療現場での判定所要時間の短縮や患者の経済的負担の軽減等に大きく貢献することが期待される。

4.事後評価内容

A)成果
 新規化学発光(蛍光)分子の合成と機能評価、核酸材料側の増幅新技術の開発、遺伝子検査診断用BNAの開発、遺伝子検査診断用BNAと標識分子の複合体合成技術・機能評価について、概ね当初計画通りの検討を行い試作品を作製するに至った。これら試作品の一部については、時間的制約から、生体由来試料を用いた有用性の実証が完了していないが、従来のPCR法を遥かに凌ぐ迅速性で遺伝子検出が可能な事を確認しており、本システムは十分に高い有用性を兼ね備えているものと考えられる。これらの成果をもとに、株式会社BNAを設立した。
本事業期間中の特許出願数:2件
B)評価
①研究開発計画の達成度
 遺伝子検査診断用BNA分子や化学発光(蛍光)分子の開発、それらの複合化やシステム化に関する基礎研究はほぼ計画通りに進展したと言える。しかしながら、キット作製を初めとした実用化面では多少の遅れがあった。
②知的財産権の確保
 原権利2件に加えて、新権利としての特許を2件出願するなど、知財権確保はなされている。
③起業計画の妥当性
 研究開発型のバイオベンチャーとして起業し、製品化予定順に研究用BNA試薬類、診断薬、診断装置、医薬品等の各分野関連企業とのアライアンスにより研究協力金等を確保しながら、共同研究体制により最終製品を開発しようとするビジネスプランは概ね妥当と考えられる。早急に診断キットのプロトタイプを作製して、実用性と優位性を実証し、認知度を高める努力が必要だと思われる。
④新産業創出の期待度
 開発したBNAを用いる遺伝子検査診断システムは、従来の遺伝子検査診断の課題を解決し、遺伝子診断の新分野を開拓する可能性を有する。また、BNA自体も、核酸分解酵素に対して安定であるという優位性を活かし、研究用試薬分野等での差別化商品となる可能性を有す。
⑤総合・その他
 基盤技術開発はほぼ計画通りに進捗した。今後重要なことは、プロトタイプ製品による遺伝子検査診断システムの実用性と優位性の実証と、それに伴う認知度向上であろうと思われる。

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