つなぐしくみ申請 H19年6月 |
本課題の技術はイリジウム等の錯体触媒によりニトリル化合物等を水和し、アミド類を高効率で製造する方法であって、無溶媒型製造、酸・アルカリ不使用製造、100℃以下の省エネルギー製造、廃水ゼロでの製造という革新的なアミドの製造技術に関するものである。
アクリルアミドやメタクリルアミド等のアミド化合物はニトリル化合物の加水分解法により工業的製造が実施されている。加水分解の方法により硫酸水和法、還元銅による固体触媒法、酵素法等の方法があるが、硫酸水和法は最初に開発された技術であるものの、反応の苛酷さ等の困難な点があり、その後開発された固体触媒法に代替されてきていた。その後低温反応が可能で、金属イオンの分離の必要もなく経済性に優れる可能性を有する酵素法が開発され伸びてきている。
しかし、以上の方法では製造工程で多くの水を使用し、特に酵素法では大量の水を要し、その後処理にも多くのエネルギーを必要としている。世界的に環境、水の問題が深刻になってきている状況下、可能な限り低エネルギー、少量の水で反応可能な新しい技術がますます重要になってきている。
申請時には、イリジウム錯体が水の沸点以下の80℃で無溶媒下、芳香族ニトリル化合物の加水分解反応を触媒することを見出したところであった。この技術の工業への応用展開の一つとして、工業的に有用なアミド類(例:ポジトロン断層撮影(PET)用造影剤に使用可能な安定同位体標識アミドの高速合成)の大規模製造が考えられるのではないかとのことで、アミド類の市場調査、連携企業探索を希望して「つなぐしくみ」に応募があった。この時アクリルニトリル等の重要な化合物を得る加水分解反応についてのデータは得られてなかった。
(1)「目利きレポート」において、「つなぐしくみ」申請で提案のあった、工業的に重要なアミド類の具体例と市場規模を明示した。そして、「つなぐしくみ」で提供するデータ補完費により、アクリルアミドやメタクリルアミド等の工業上重要なアミド化合物の製造可能性について、試験を行った。その結果、収率向上検討は引き続き必要なものの、反応が進行する条件を見出すことができた。
(2)企業探索機会の提供支援を行った。JST新技術説明会、イノベーション・ジャパン、オルガテクノでの新技術説明会・ブース展示を支援し、多くの企業へ技術内容のアウトリーチ活動を進めた。その結果、複数企業から個別相談を受け、一部の企業は研究室訪問・技術相談・秘密保持契約等を行うに至った。
「目利きレポート」の指摘「アクリル系化合物製造は地球規模(資源・エネルギー問題に直結)の重要課題」に従い、独自のコア技術から研究・連携先を大幅に拡張することができた。丁寧な継続支援によりシームレスに他事業への移行に成功した。本制度は、極めて優れた”しくみ”である。
(作成日:平成22年3月31日)