つなぐしくみ申請 H19年6月 |
UHF RF-IDシステムは通信範囲が広いという特長を有しているが、逆にそれに起因して室内、倉庫などの狭い空間では電波の多重反射による電波障害、誤動作が増大するという欠点も有している。本課題はそれを解決するため、構内用に適した透明性の高い薄型軽量の電波吸収体の技術を実用化するものである。
申請時においては、無線LAN用の5.2GHz帯と2.45GHz帯の複数の周波数帯域に電波吸収特性を有する薄型の電波吸収体を試作し、さらにUHF帯においてもこの技術を改善して厚さ2cm(従来技術の1/5)の電波吸収体が実現可能なことを実証していた。しかし、構内や室内向けの場合薄型軽量だけでなく、電波の吸収性能は保持したまま透明性が高いことが、作業上の安全、安心の確保、店舗での盗難防止の観点から要求されていた。そこで「つなぐしくみ」に応募して高透視性の電波吸収体の開発を行うとともに、開発した技術を広く関連企業にアピールする場を提供することが期待されていた。
透明電波吸収体に関しては関連特許が既に出願されていたため「目利きレポート」で特許調査、技術調査を実施し、新規技術で特許性があり差別化可能であるという調査結果を報告した。また、高透視性の検証を行うため「つなぐしくみ」で提供するデータ補完費により、廉価で透明性の高い電磁波遮蔽金属メッシュ状フィルムを用いた電波吸収パネルの試作を行った。その結果、厚さ2cmで可視光透過率80%のUHF帯RF-ID用電波吸収パネルを企業の協力を得て開発に成功し、その企業と実用化に向けた共同研究を進めることとなった。実用化には素材、パネル製造、ユーザとしての流通業などの企業に技術を認知してもらう必要があるため、JST新技術説明会、イノベーション・ジャパン、テクニカルアイのWeb掲載などを通して技術のPRを行った。これらの活動を通して11社から問い合わせがあり、新たな材料の適用や応用の面で進展が見られた。
UHF帯RF-ID透明電波吸収パネルとして製品化され販売されている。さらに、大型TVモニター用に開発された「モス・アイ」と呼ばれる反射防止膜の追加で大幅な透視性向上に成功したタイプも開発されている。RF-IDタグの普及拡大に伴い電波障害も深刻になることが予想され今後の展開が期待される。
(作成日:平成22年3月31日)