つなぐしくみ申請
H19年12月


薬物注入装置の開発

鹿児島大学 理学部 物理科学科

教授 立野洋人

1.課題概要

 本技術は、超音波振動を利用して、薬物を生体やその他の物質に効率的に拡散させる技術である。目的とする薬物の拡散物体に対するドリフトベロシティ以下の振動振幅スピードで、超音波振幅を鋸歯上にゼロから大きい振幅へ時間に対して一定の傾きで増大させることにより、生体内または特定物質等へ効果的に薬物を注入することが可能となる。主に美容用途の超音波美顔器などへ応用が想定される。



2.申請時の状況

 申請時には、超音波振幅をゼロから増大させることで効果的に薬物が注入されるという基本原理の有効性は確認されていたものの、美顔器として実用化するには実測データが不足しており、制御回路も未完成であった。そこで、課題解決に向けた支援とともに技術と市場に対する評価を希望して、つなぐしくみへの申請がなされた。


3.つなぐしくみによる支援の内容

・「目利きレポート」により、技術及び美顔器市場が将来性あるものとの市場調査結果を報告した。
・一方で、コンパクトな制御回路を設計・試作を目的として、また美顔器として不足していた追加データの収集を行うため、データ補完費を措置した。
・研究開発を進めるとともに新技術説明会等での発表を誘導した。
・新技術説明会で発表した(発表2回、個別相談2社)。



4.結果

・データ補完の結果、薬物の効率的な注入とともに、メラニン色素に基づく“しみ”の除去、にきびの治療にも効果的であることを見出したため“注入美白とにきび治療器”の試作機を製作することができた。
・新規特許を2件出願した。
・大学発ベンチャー企業を設立した。現在、美白化粧・脱脂美顔器の製造販売を計画中である。



5.申請者からのコメント

 この支援により、人体皮膚への適用を実証するため皮膚の角質層の通過に限定し、薬物注入器としての有効性を確認することができた。一方で独自に美白剤も開発し、シミ、そばかすやニキビ除去を目的とした美白器を開発した。また、薬物注入器の別の応用として、糖尿病患者のための無針超音波インシュリン注入器の開発も行った。結果、これらに関連した大学発ベンチャー企業を立ち上げることができた。

(作成日:平成22年3月31日)

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