つなぐしくみ申請 H20年8月 |
微生物農薬は化学農薬と比較して、(1)自然界に存在する微生物を利用するため人体等への影響が小さい、(2)宿主特異性が高く標的病原菌が明確であり、多重散布が防げるなどの大きなメリットがある。本課題は、ブドウ圃場から分離した新規微生物Bacillus subtilis KS1株を利用し、ワイン用ブドウの各種病害(べと病他)への防除効果を検討すると共に、その先の展開として世界のワイン産業への応用を目指すことを目的としている。
申請者が発見した新規KS1株は、ブドウ灰色かび病菌に対して生育抑制効果を示すと共に、試験圃場で自然発生した「ブドウべと病」の抑制効果をも示していた。但し、実規模栽培条件下での試験が未実施であること、当該微生物病害防除メカニズムの解明等、検討すべき項目が残っていた。また、KS1株を微生物農薬として開発してくれる企業の探索も必要であった。これらの点を解決するために「つなぐしくみ」へ申請があった。
「つなぐしくみ」が提供するデータ補完費による研究を実施するにあたり、実規模栽培試験に加えてワイン醸造への当該微生物の影響試験を行うように打合せた。既に協力関係のあったワインメーカーであるB社との共同研究を進め、中規模散布試験(5ヶ月間)によりべと病抑制効果を確認できた(圃場における微生物と培養物の効果)。さらに実験室規模での試醸ワインの製造及び品質への影響がないことも検討した。また商品化にあたって必要となる安全性評価については、データ補完費のみでは費用が不足するため、別途競争的資金を導入する必要があり、「A-STEP」への応募を勧め、採択に至った。
微生物農薬メーカーの探索に関しては、テクニカルアイや新技術説明会等の技術公開の場を提供すると共に、申請者自ら積極的に情報発信を行い、3社からの相談を受けた。そのうち、2社とはMTAを締結し、KS1株の評価を実施している段階である。
公的資金獲得1件を獲得するとともに、企業2社にてサンプル評価を実施中である。
(作成日:平成22年3月31日)