つなぐしくみ申請
H20年8月


単分子膜を介した樹脂材上への金属被膜形成技術の開発

香川大学 工学部 材料創造工学科

教授 小川一文

1.課題概要

金属皮膜

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 樹脂材料への金属皮膜コーティング技術は実用化されているが、接着強度を必要としない分野に限定されている。従って、樹脂基板に、接着強度を維持しながら、金属被膜をコーティングする技術が産業界の課題であった。本研究シーズは、上記課題を解決する有機単分子膜を介在させた金属被膜形成技術である。



2.申請時の状況

 申請時には、本研究の有機単分子膜の候補材料と特定な樹脂基板の実験を通じて、接着性評価を行った結果、従来技術比で、「5倍の接着強度1N/cm²」を確認した段階であった。しかしながら、この段階では、産業界のニーズと考えられる“広く市販されている樹脂への金属コーティング”に対して、ごく一部の樹脂の評価結果を提示したのみであった。より多くの実験と追加データを必要としていたものの、推進のための研究リソース不足が問題であった。実際、共同研究の候補となっている企業もあったが、共同研究の決断に必要とする研究成果が不十分であることから、保留状態にあった。


3.つなぐしくみによる支援の内容

・ 本研究シーズは、基本的な試作を確認した段階で、技術移転のためのデータ整備の必要性があることを確認し、「目利きレポート」で、研究開発資金、市場調査、用途拡大への情報提供をするとともに、データ補完費により、①一般に市販されている多くの樹脂材料への金属被膜形成追加評価、②信頼性評価実験、等の追加実験を支援した。
・ 一方で、本研究シーズは応用範囲が広く、応用分野によっては更なる育成が必要と考えられた。そのため、JST研究成果最適展開支援事業(A-STEP)をはじめ、研究資金申請への助言を行った。



4.結果

 当初のデータ補完計画に沿って、①樹脂基板に関する前処理技術の最適化、②種々の樹脂基板に関する金属被膜コーティング実験、③耐環境性評価実験、等を行い、良好な結果を得た。特に、ABS樹脂やAS樹脂に対して、実用化に問題ない見通しを得た結果、2つの企業との共同研究を実施することになり、現在、推進中である。


5.申請者からのコメント

 種々の樹脂基板への金属被膜製造実験を行ったが、ABSやAS以外の樹脂基板に関しては問題点が残り、対応策を検討中である。研究を継続して本研究シーズ実用化に努力していくため、興味がある企業や、支援機関の連携を取りたいと考えている。また超撥水の技術シーズにも対応可能であるため、興味がある企業との連携を取りたい。

(作成日:平成22年3月31日)

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