つなぐしくみ申請 H20年4月 |
本技術は術中における脊髄領域近辺で脊髄虚血が生じているか否かを判定して警報を発生する術中誘発電位診断サポートシステムに関するものである。胸腹部大動脈瘤手術において、従来は手術中の脊髄虚血障害による対麻痺を予防するため、刺激電極を頭蓋や頚部脊髄硬膜外、下肢末梢神経上において、胸腰部硬膜外においた記録電極から波形を得るという脊髄誘発電位測定法であった。これに対して、本技術は、罹患大動脈病変より上位肋間神経から刺激して、病変下位の肋間神経で記録する経肋間神経―脊髄誘発電位測定を行うものである。本手法により、術前準備が不要で急患にも対応でき、麻酔の影響も受けにくい脊髄誘発電位測定法が可能になる。
本技術に関して、申請者は本分野における第一人者であり多くの知見と経験を有しているが、新技術のより確かな可能性の確認のために、電極構造の最適化、誘発電位信号処理手法、安全性の確認などの課題を解決する必要があった。また、開発の協力が得られる企業の探索も必要であった。そこで、本技術が想定している市場調査、ライセンス先企業の探索、および開発支援を希望して「つなぐしくみ」へ申請があった。
「目利きレポート」で本技術に関連した特許調査、市場調査を行い有用性の高いことを示し、実用化を促進するために「つなぐしくみ」で提供するデータ補完費により、実験検証を行った結果、経肋間神経刺激―脊髄誘発電位は、従来の脊髄知覚誘発電位や脊髄運動誘発電位同様に脊髄誘発電位が記録でき、かつその特異度、感度ともに従来の脊髄誘発電位より優れていることが、臨床応用で明らかになった。今後は、肋間神経の刺激電極、記録電極の形状や絶縁に工夫を行えれば、術野で使用できる臨床応用可能な新たな脊髄誘発電位測定法として広く普及していくことが期待できることが判った。この成果については「テクニカルアイ」にて技術を公開した。
特許出願1件。データ補完によって、臨床応用で有用であることが確認され、普及にはずみがついた。
(作成日:平成22年3月31日)