つなぐしくみ申請
H19年12月


燃料電池改質器への応用を目的とした炭化水素の酸化的改質反応の常温駆動系の構築

大分大学 工学部 応用化学科

准教授 永岡勝俊

1.課題概要

家庭用燃料電池システムに搭載されている改質器の起動時間を現状の1時間から一気に1分以内に短縮することを可能にする。具体的には、触媒担体として酸素欠陥を有する希土類酸化物(e.g.CeO2-xなど)を使用することにより、改質反応起動時に反応ガス中の酸素と触媒の反応による自己発熱を利用して触媒温度を200℃以上に急速昇温せしめ、改質反応を外部加熱無しに短時間で開始可能とする。



2.申請時の状況

申請時、本技術には明確な特徴・優位性が認められたが、以下の問題があった。

・実用化へ向けての基礎的技術課題
- 一度の無加熱短時間駆動は可能であるが、繰り返しの起動停止機能が不十分
- 初期の触媒の活性化(還元)処理温度が600℃と高く、無加熱起動の価値が不十分

・PCT出願済みであったが、国際調査機関見解書で主要クレームの特許性が否定されていた。
・技術発表しても企業との連携には至らず、本技術の実用化への課題・ニーズが不明確であった。



3.つなぐしくみによる支援の内容

・データ補完による技術課題の解決
- 繰り返し起動停止が可能で、初期還元温度が100℃以下の触媒材料を見出し、実用化の為の基礎的要件をクリア。

・出願特許のグレードアップ
- 目利きレポートでクレーム補正により特許性確保の可能性があることを指摘。JSTイノベーションプラザ福岡と連携して弁理士を紹介、クレーム補正を実施した結果、国際調査機関から特許性有りという回答を獲得。

・実用化に向けた課題・ニーズ分析と企業との連携に向けた活動
- 関連業界のA社をJST単独で訪問、技術を紹介し、本技術の問題点及びニーズ情報を獲得。
- 本技術を広く企業に紹介する場としてFC-EXPOを申請者に紹介し、JSTも協力して展示・プレゼンを実施。そこで多くの企業から実用化に向けた課題・ニーズに関する情報を獲得。
- JSTにて燃料電池関係の出願特許から詳細に技術動向を分析し、実用化への課題を抽出。
- これら獲得情報・ニーズ分析を基に技術課題を整理し競争的資金獲得に向けた活動を支援中。



4.結果

 データ取得による課題の解決、特許性の補強、課題・ニーズの把握。


5.申請者からのコメント

 地方大学では、折角見つけたシーズが埋もれてしまうことが多々あります。しかし、本研究では「つなぐしくみ」の支援を受け、企業のニーズに合うこと、市場価値があることを確認できました。さらに、特許の強化、作成においても尽力頂き、JST特許出願支援制度にて5カ国への移行出願が決まりました。これらが大きなモチベーションとなり、現在も実用化を目指し鋭意研究を進めています。
 以上のことは「つなぐしくみ」があったからこそ可能となりました。この事業が早期に復活することを願っております。

(作成日:平成22年3月31日)

Copyright © Japan Science and Technology Agency. All Rights Reserved.