つなぐしくみ申請 H19年12月 |
多くの水生生物は光に対して一定の反応を示すため、その反応を利用して光条件の調整により装置内で飼育している生物の行動を制御することができる。本技術はイセエビの幼生のように体の構造が繊細で傷つきやすく、水質環境悪化のストレスにも弱い生物を飼育する場合にも、水槽の管理を効率的に行うことができるため、安定的な大量飼育に結びつくことが期待できる。水槽の管理に関する既存の技術として、自動掃除機などがあるが、本技術のような脆弱な生物に対して光に対する反応を積極的に利用した飼育装置は見当たらない。
水生生物の光に対する反応の基本的なデータは採取していたが、特許申請している飼育装置を効果的に用いるためには、飼育を行うそれぞれの生物について光に対する反応条件をあらかじめ調査しておくことが必要となる。また、装置内の水流や生物の生理状態も生物の反応に影響を及ぼす要因となるため、生物を任意の方向へ移動させるためにはこれらの好適な条件を明らかにしておくことが重要である。対象とするイセエビ幼生の飼育への当装置の導入を可能とするためには基礎的データの集積が十分でなく、光に対する幼生の反応や幼生の遊泳力に関するデータ採取が必要であった。そこで、本技術が想定している市場調査および、ライセンス先企業の探索、および開発支援を希望して「つなぐしくみ」への応募があった。
「目利きレポート」で本技術に関連した特許調査、市場調査を行い有用性の高いことを示し、実用化を促進するために「つなぐしくみ」で提供するデータ補完費により、実験検証を行った結果、イセエビ幼生フィロソーマが特定波長の光に効果的に反応することは得られたが、個体差が大きいことも判った。特に栄養状態で光反応に個体差が出る可能性があり、今後給餌条件を変えた試験を進める必要性があり検討を進めている。また、本開発により得られた知見は他の水生生物の調査にも有効に利用出来るものであり、「テクニカルアイ」にて技術をWebで公開した。
実用化に向けたデータの取得。
水生生物の飼育時における光環境制御の重要性が高まっており、今回得られたデータを活用し、光による行動制御技術を更に確実なものとして、飼育成績の向上に努めたいと考えています。
(作成日:平成22年3月31日)