つなぐしくみ申請
H19年12月

ナノシート状BaTiO₃誘電体材料の開発

香川大学 工学部 材料創造工学科

教授 馮旗

1.課題概要

ナノシート状BaTiO₃誘電体材料

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 強誘電体材料は、PZT(Pb(Zr,Ti)O₃)が、特性が良く、実用化されている。しかし、環境問題で、脱Pb材料の開発が急がれている。種々の代替材料が検討されており、BaTiO₃もその一つであるが、特性の点で、PZTに劣っている。本研究シーズは、新規な製造方法である水熱ソフト化学法を用いて結晶配向性の良好なBaTiO₃ナノシート状素材と焼結体を得る技術である。



2.申請時の状況

 申請時には、本ナノシート製造法が、従来の球状粒子形状のBaTiO₃製造法に対して、誘電体特性が優位である事を確認し、約100nmの厚さのシートの試作を行っていた。しかし、①誘電率と合成条件、②シート作成条件と配向性、③焼成条件と誘電率・配向性・圧電特性の関係、等を明確にすることが実用化を目指すための課題としてあり、申請時にはこれらの検討途中にあった。


3.つなぐしくみによる支援の内容

・「目利きレポート」により研究開発資金、市場調査、用途拡大への情報提供をするとともに、①本研究シーズがコンデンサー適用材料としてだけでなく、圧電素子材料としても比較的市場が大きく重要であること、②上記の課題を解決するためには、試作すべきデータの不足を指摘した。さらに、データ補完費により、ナノシート作成等、実用化に必要な追加データ取得や実証試験、試作を行った。
・データ補完の結果をJST新技術説明会で発表、3社からの個別相談に対応した。



4.結果

実験結果

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・試作と新データ取得の結果、申請当時にあった実用化への課題は解決した。さらに、配向度90%に達する試作の達成により、PZTに近い圧電係数が可能となることを確認できた。
・応用分野として重要であることの指摘をもとに、圧電デバイス材料の開発に関して、METI「地域イノベーション創出研究開発事業(H20)」へ申請し、採択された。



5.申請者からのコメント

 公的研究資金獲得により、一定の応用分野について実用化の可能性を得たが、本格的に脱Pb化を進めるためにはまだ多くの研究課題がある。現在、PZTはRohs指令の除外品として扱われているが、除外品解除も時間の問題である。本研究をさらに強力に進め、いち早く差別化する材料として世に出したい。このため、今後も興味をもつ企業や支援機関との連携を取りたい。

(作成日:平成22年3月31日)

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