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大学発ベンチャー創出推進

平成15年度採択課題事後評価報告書

 

 

4.

研究開発課題の個別評価

(1)情報機器用超薄型IC電源の開発

 

開発代表者

大田 一郎(熊本電波工業高等専門学校 情報通信工学科 教授)

起業家

栗林 英行

 

1 ))

研究開発の概要

小型で良好なエネルギー変換効率を有する電源装置の開発を行う。キャパシタとICスイッチで電源回路を構成するスイッチトキャパシタ (SC) 方式により、小型で低ノイズな電源が可能となり、現在普及率も高く小型化のニーズが顕著な携帯電話に組み込み可能な電源や直流変圧器など広範囲な分野での利用が期待できる。 

2 ))

事後評価内容

A)成果
2回のICチップの試作を行い、キャパシタやスイッチの数の低減と配線抵抗やボンディングの抵抗による損失が少なくなる新しい回路構成により、最大出力電流500mA、最大出力1Wの目標を達成する見通しを得た。
  さらに、電源全体の効率では約80%の効率が得られることをシミュレーションと実測で確認し、これらの成果をもとに、
エスシパワ株式会社を設立した。

B)評価

計画の達成度

さらに改良を図った第3回目のチップを試作中であるが、効率、サイズ、スケジュールに未達成な部分がいくつかある。本研究では試作の度に半導体量産製造施設の協力を得なければならず、進捗上のネックとなる等やむをえない原因もあったが、途中で明らかになった問題を解決しながら計画を進めたことで、全体的には計画に従って進めることができたといえる。

知的財産権

原権利として、スイッチトキャパシタ電源回路に関して11件の国内特許を申請しているが、回路構成やレイアウト設計に関して得られた知見は、あえてノウハウとして公開を見合わせ知的財産権の確保はなされていない。しかし、回路は、製造方法と違いリバースエンジニアリングすれば判明することであり、戦略的な対応も必要と考えられる。

起業計画

ICの電源としては、当初計画の目標値を超えるものが市場に現れたため、商品化は見直しが必要になったが、SC電源としての技術開発の成果を生かす形でバッテリー延命装置の分野で新たな起業計画を策定している。当面は可能性があるところで起業を図り、携帯電話電源、音響電源、車両制御をターゲットにしたIC電源についてはその先のターゲットとして設定することで、結果的に現実を踏まえた妥当なビジネスプランと考えられる。

新産業創出

当初のIC電源から考えた新産業創出の期待からはかけ離れたものとならざるを得なかった。競争は激しく既存方式との競争に勝てるかどうかは今後の課題であるが、電源の小型軽量化の分野はニーズが確実にあり、本技術は多くの電源分野で新たな展開を引き起こす可能性がある。

総合・その他

本開発は、基本技術の研究開発ではほぼ計画に沿って進んだが、商品化開発に関しては成功しているとは言えない。当初予定の技術達成の可能性を明確にして、IC電源としての目標達成へ向けて挑戦を期待したい。

 

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This page updated on September. 10, 2007

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