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大学発ベンチャー創出推進

平成15年度採択課題事後評価報告書

 

 

4.

研究開発課題の個別評価

(1)無線LAN国際標準IEEE802.11bおよび11gに準拠した高性能受信チップの研究開発

 

開発代表者

末広 直樹(筑波大学 機能工学系 教授)

起業家

数田 泰三

 

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研究開発の概要

無線LANの国際標準IEEE802.11bおよび11gに用いられている変調方式について、受信機側のみの改良による耐マルチパス特性、耐雑音特性に優れた技術開発や、将来の無線LANのOFDM方式における情報伝送速度高速化のための技術開発を行う。これにより、無線周波数の高効率利用が可能となり、地上波デジタル受信機やワンセグ携帯電話、WiMAXなど広範囲な分野への展開が期待される。 

2 ))

事後評価内容

A)成果
情報伝送速度高速化のためOFDM方式に関して、ベースバンド信号レベルで互いに直交無干渉となる複数の信号のうちの1個をマルチパス特性測定用のパイロット信号とすることにより、反射波・回折波を有効利用し、現状のOFDM技術と比較して同一マルチパス環境下、ほぼ同じ誤り率で約2.5倍の情報伝送速度を、ハードウェア化を考慮した計算機シミュレーションにより確認した。これらの成果をもとに、シグナルデザイン合同会社を設立した。

特許出願数:国内出願数10件、外国出願数3件

 

B)評価

計画の達成度

11b/g方式については、市場調査を進めるに従って度重なる研究開発計画の方向変更がなされたため、装置自体の試作はしたが、ハードウェアとして性能の実証はなされてはいない。将来の無線LANのOFDM方式については、受信部について原理的には理論計算とシミュレーションにより効果は確認されているものの、さらにデータを積み重ねる必要がある。

知的財産権

本研究開発成果としての知的財産権は周辺特許として13件出願しているものの、基本特許を具体化するための直接的な応用特許は余り多くなく、他社が出願した重要関連特許があるかどうかの確認など戦略的な取り組みも十分とは言えない。

起業計画

知的財産権の販売を主体にしたビジネスモデルは、この分野の状況として基本的には妥当であると考えるが、国際標準になると特許実施料は安くなると思われ、兼ね合いをよく考える必要がある。起業後の技術の実証と、先行していくための戦略が重要であると思われる。

新産業創出

無線周波数の利用効率を上げる技術は、目標通りの研究開発成果が出れば、関連分野への波及効果が大きく、新産業創出の可能性があるが、方式提案だけで技術販売は難しく、実際に通信装置の試作品を製作し、実測の性能として優位性を提示していく必要がある。

総合・その他

効果が実証されれば技術としての優位性はある。しかし、変化が激しいビジネス世界の中で事業として大きく展開できるかどうかは、スピードとタイミングが重要な要素である。まず、効果を実証し、良いパートナーと組んで、関係者に認知され、商品および標準化の候補の中に取り入れられるように、早く動くことが重要である。

 

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This page updated on September. 10, 2007

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