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大学発ベンチャー創出推進

平成15年度採択課題事後評価報告書

 

 

4.

研究開発課題の個別評価

(1)超高精細、軽量、低消費電力、長寿命、カラーマイクロディスプレイの開発

 

開発代表者

田中 義人(長崎総合科学大学 大学院・新技術創成研究所 教授)

起業家

笠野 和彦

 

1 ))

研究開発の概要

低消費電力かつ長寿命な、電界放出型(FED)カラーマイクロディスプレイの開発を行う。カソード側を制御する従来のFEDとは異なり、アノード側を制御することにより高精細で、LSIを用いたアクティブマトリックス駆動が可能となり、ヘッドマウントディスプレイ等のNear-To-Eye用途や、カメラのビューファインダ、プロジェクター等への応用が期待される。 

2 ))

事後評価内容

A)成果
マイクロディスプレイの主要構成要素である、カラーVGA(640×480画素)対応の低消費電力(約50mW)アクティブマトリクス駆動のイメージエンジンLSIの試作と、電場と電子軌道のシミュレーションにより、カソードとアノードLSIとの間にメッシュグリッドを設け、LSI上にはクロス対策用の立体グリッド構造を設けるマイクロディスプレイの最適構造を決定すると共に、LTCC(低温同時焼成セラミックス)3次元パッケージを開発した。これらと熱フィラメントに変更した電子エミッタを用いてモノクロディスプレイとして組立を完了した。

 

B)評価

計画の達成度

マイクロディスプレイの主要構成要素のイメージエンジンLSIの開発はできたが、カーボンナノチューブを用いたコールドカソード方式の開発、蛍光材料及びカラー化の開発が未達である。また、高解像度(SVGA)カラーマイクロディスプレイは、モノクロで解像度をVGAに落として組み立てを試みたが、現時点では評価に至っておらず、当初目標から大きく離れた結果となった。

知的財産権

特許マップを作成するなど知財確保戦略を策定するも、特許は1件出願準備中のみであり、知的財産権の確保は十分とは言えない。

起業計画

起業検討の一環として本技術・製品の競争力評価や生産拠点の考察を行っているが、技術そのものが確立に至っていないため起業を検討する段階ではない。技術開発の見通しがついた時点で、現実的なコスト分析に基づき、もう一度、事業計画を確認する必要がある。

新産業創出

市場は大きく、技術が確立されれば新産業創出の期待度は大きいが、イメージエンジンLSIを適用した超小型プロジェクターや有機ELの開発も簡単にできるものではなく、既存の競合相手もあると思われ、優位性を明確にして取り組む必要がある。

総合・その他

新しい可能性にチャレンジしたが計画通り進まなかったということでありやむをえないが、これまでの成果を生かそうとする新たな起業計画にも不確実な要素が多い。無理をせずもう少し時間をかけて技術開発に力をいれ、既存企業との連携などで現実的にイメージエンジンLSI等の成果を生かす方法を見つけることが必要と思われる。

 

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This page updated on September. 10, 2007

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