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大学発ベンチャー創出推進

平成15年度採択課題事後評価報告書

 

 

4.

研究開発課題の個別評価

(1)神経変性疾患と虚血性疾患治療薬の開発

 

研究代表者

井本 正哉(慶応義塾大学 理工学部 教授)

起業家

望月 順一朗

 

1 ))

研究開発の概要

アポトーシス阻害という特異的な作用機構に基づいて、神経変性疾患や虚血性疾患の治療薬を開発する。これら疾患の発症に関わるアポトーシス促進タンパク質BaxのN末端配列に存在するアポトーシス抑制活性配列を、膜透過型ペプチドとすることにより、神経細胞や虚血状態に陥った細胞の死を抑制することが可能となり、アルツハイマー病、パーキンソン病や動脈硬化など広範囲な疾患に対する治療薬として利用が期待される。 

2 ))

事後評価内容

A)成果
BaxのN末端に膜透過性配列TATを付与したペプチドTAT-ART1320を作製し、強いアポトーシス阻害活性を観察した。さらに、ラットにおける血中濃度推移試験により、静脈内投与による投与方法を確立すると共に、脳虚血実験モデルにおいて治療薬として期待できる有効性を確認した。これらの成果をもとに、株式会社Pharmishを設立した。

特許出願数:外国出願数1件

 

B)評価

計画の達成度

アポトーシス抑制ペプチドの最適化を行い、作用機構解明の可能性を見出し、動物実験についても一定の有効性を示すことができたが、アルツハイマー病、パーキンソン病治療薬とするためには、その根拠となる実験データの積み重ねが今後とも必要である。

知的財産権

ペプチドについてはPCT出願が行われているので、一定の範囲で確保されているが、周辺特許等を整備し、事業化に必要十分な知的財産権の確保が今後とも不可欠である。

起業計画

起業はなされたが、創薬ベンチャーの発展環境は米国ほど十分ではなく、臨床試験が進んでいない状況で今後資金確保が課題であると思われる。治験に達している物質を数個は所有する等今後の努力を期待したい。

新産業創出

老人性神経疾患や虚血性疾患の治療薬開発は今後市場規模が大きくなる分野であり、またペプチド医薬が現在期待されているので、製品化へのスピードを上げる必要がある。

総合・その他

BAX関連アポトーシス抑制ペプチドの有効性を様々な疾病に対して追及する姿勢はベンチャー的であり基本的研究は十分であるが、細胞死を阻止しても脳細胞が正常に機能するかどうかなどの検証と、今後の治験への更なるスピードアップが望まれる。本事業での成果を、すでに起業したベンチャー企業において十分に活かすことを期待したい。

 

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This page updated on September. 10, 2007

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