視点

地方大学の産学官連携の行方

岩手大学 研究支援・産学連携センター 教授 今井 潤

2023年3月15日

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地方大学の産学官連携は、非常に厳しい状況にある。コロナの影響ではなく、それ以前から「オープンイノベーション」、SDGs、大学発ベンチャーの創出支援など、大学が組織として取り組まなければならない課題が出てきたことなどによる。本誌の連載「地方国立大学は産学官連携でどう活路を見いだすか(2019年2月号〜2020年1月号)」にも記載されていたが、地方国立大学は限られた資源を有効に活用するため、重点研究分野を設定し、リーダーシップを持って徹底的に支援をすることが重要であるが、大学の中にそのような文化がないためか、うまくいかないことも多い。

地域企業や自治体にニーズ調査を行うと、最近は研究シーズより、まずは人材を地域に残してほしいとの要望が強い。人材が地域に残らないと産学官連携も始められないという時代が始まった。

一方、最近の課題解決学習などの成果により、自己肯定感が強い活動的な学生が増えてきている。彼ら彼女たちに、地域の産学官が連携して、十分な知識と活動の場を提供することにより、関わった地域の全てのメンバーが豊かで幸せになれる未来をデザインできる可能性がある。イノベーティブで新しい産学官連携は、一番苦しくて、困っている地方大学から生まれると確信している。