巻頭言

「産学官連携ジャーナル」の発行終了にあたって

地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所 事業プロデューサー
産学官連携ジャーナル発行推進委員会 委員長 馬来 義弘

写真:地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所 事業プロデューサー 産学官連携ジャーナル発行推進委員会 委員長 馬来 義弘

2023年3月15日

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18年間の歴史

「産学官連携ジャーナル」は、2005年1月以来これまで18年間にわたって毎月発行されてきましたが、本年3月号をもって発行を終了することになりました。「自ら取材し、分かりやすく書く、解説する」という執筆姿勢で長らく編集長を務めてこられた山口現編集長をはじめとする歴代編集長の皆さま、掲載文を執筆していただいた多くの方々、および歴代の発行推進委員会や編集委員会の委員の皆さまの頑張りのおかげで、このように長期間にわたって発行を継続できたことに改めて敬意を表させていただきます。またこの間、「産学官連携ジャーナル」をいろいろな形で支えていただいた読者の皆さまにも心から御礼申し上げます。

「産学官連携」の重要性は不変

上述したように「産学官連携ジャーナル」の発行は終了しますが、「産学官連携」の重要性は不変です。日本の発展には「イノベーションが必要である」ということは言うまでもありません。

日本ではイノベーションは「技術革新」と訳されることが多いようですが、イノベーションの本質は「新しい顧客価値の創造」であり「技術革新」はあくまで主要手段の一つと認識しています。

研究者、技術者の皆さまは、顧客が困っている事を見いだす「課題発見能力」に加えて、将来発生が見込まれる潜在的課題を予測する「課題推察能力」を高めることにより、顧客に本当に喜ばれるイノベーション創出(売れる商品創り)に貢献することができます。この「売れる商品創り」は、産業界の協力なしには達成できません。また、このような商品を速く顧客の皆さまに届けるには、できるだけ早い段階からの協力関係の構築(産学官連携)が必要となります。

残念ながら、日本において産学官連携を本当にうまく活用している成功事例はかなり限られるのではないかと推察しています。今後はこの成功事例を大幅に増やしていくことが重要であり、そのためには、「研究者等の課題推察能力の向上」、「大企業等から大学等への共同研究費の大幅増額(本気の共同研究の実施)」、「中堅優良企業と大学等との共同研究の拡大」、「大企業・ベンチャー企業(大学発ベンチャー等)・大学等との三者共同研究の推進」等々が挙げられます。

また国の科学技術予算が限られる中で、日本の企業(特に大企業)の皆さまにお願いしたいのが、今後の日本のイノベーション推進の担い手として「志と覚悟」を持っていただきたいことです。企業の皆さまが、この「志と覚悟」でこれからの産学官連携を牽引(けんいん)し、お互いがウイン・ウインの関係となる真の「産学官連携」の成功事例が今後大幅に増大することを心から祈念して、最終号の巻頭言とさせていただきます。