リポート

室蘭工業大学「工大カフェプロジェクト」
NPO法人の設立とカフェにおける
「地域課題解決・共創」型の取り組み

室蘭工業大学大学院 工学研究科 教授 市村 恒士

写真:室蘭工業大学大学院 工学研究科 教授 市村 恒士

2022年11月15日

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「地域課題解決・共創」型のカフェづくりを目指した、地域住民・学生参画型のワークショップ「工大カフェプロジェクト」。ワークショップで決定した「工大カフェ8か条」などに基づき、地域住民によって設立されたNPO法人のカフェ運営の下、産学民の「共創」による様々な取り組みが始まっている。

■「工大カフェプロジェクト」の始まり

2018年ごろから、室蘭工業大学では、学生や教職員の福利厚生を目的とした学内カフェ設置が検討されていた。そのような中、2019年9月に、本学事務局長や施設課から学生などの意見を聞き入れるワークショップ(以下、WS)のとりまとめについて筆者に打診があり、それを受け一般的なカフェとは異なる、多様な人のつながりによる「地域課題解決・共創」型のカフェを目指すWS「工大カフェプロジェクト」をスタートさせた。

同年11月から、1回目WSの開催に向け、「共創」を念頭にコアメンバーとなりそうな学生や地域住民を集めるため、大学ホームページや学内ポスター、口コミなどを利用して、アイデアや参加者の募集を行った。結果として、1回目のWS開始に向け、コアメンバーを含めた有力なWSの参加者体制が構築された。

■第1回WSの開催と工大カフェ8か条の決定

2020年1月に第1回WSを実施し、初顔合わせながら26人の地域住民や学生が集った。WSでは、①工大カフェの大きな目標像や、②工大カフェの活用方法について話し合い、その結果をとりまとめ現状の工大カフェ全体の方針とチェックリストともいえる「工大カフェ8か条」が決定した(表1)。

「工大カフェ8か条」は、「地域課題解決」や「共創」との関わりの強い「学内/地域リソース」、「エンゲージメント」、「イノベーション」、「プラットフォーム」といったキーワードによって整理された。

表1 工大カフェプロジェクトで決定した「工大カフェ8 か条」

■新型コロナ感染拡大によるWS中止とオンラインアンケートによる議論

しかし同年2月、コロナ渦の影響により実施予定だったWSは中止となる。その後、議論を継続させるために一部のコアメンバーと整理をしながら、オンラインによるアンケート調査を実施することとした。

調査内容は、工大カフェの「設置場所の選定」、「デザインイメージの把握」、「空間の利用方法(ゾーニング)の意向把握」などである。その結果、「設置場所」は地域住民も比較的利用しやすい「大学会館内」への設置を希望することとなった。また「デザインイメージの把握」では、WSメンバーに求める具体的なカフェのデザインイメージを収集してもらい、それをWSメンバーに提示し導入希望について尋ねた。さらに「空間の利用方法(ゾーニング)の意向把握」では、「設置場所(大学会館)」の各空間の利用像を想定した五つのゾーニング案を作成し、それらに対する意見を尋ねた。なお、この頃(2020年3月)、カフェデザインの設計者として本学OB設立の建築設計事務所の参入が決定している。

■WS・ワーキングの再開と最終WS・最終報告会の実施

その後、いったん活動は中止していたが、同年7月から当初のWSメンバーに改めて呼び掛けワーキング活動の再開を果たした。ワーキングは、オンラインと対面を併用して実施し、実際には、①「広報(情報管理)部門」、②「ソフト(イベント・メニュー)部門」、③「ハード(店舗デザイン)部門」の3部門に分かれ、週1回のペースで議論を進め、各回の参加者16〜23人で、回数は全17回にも及んだ。同年9月には、最終WSにおいて部門ごとの課題共有や意見交換を行った後、コアメンバーによるワーキングを継続し、同年10月にはWSメンバーに向け前述の建築設計事務所によるデザイン案の中間発表も行った。

さらに同年11月には、工大カフェプロジェクトの一区切りとなる「最終報告会」を実施し、これまでの経緯や各部門の成果についての発表などが行われ、工大カフェのコンセプトやカフェデザインが決定した。

■プロジェクト後「NPO法人の設立とカフェにおける地域課題解決・共創の取り組み」

2021年3月には、カフェ事業者の公募を開始した。公募条件には、工大カフェプロジェクトで決定したコンセプトを理解することが掲げられ、カフェ事業者として工大カフェプロジェクトの一部のメンバーが中心となって設立した「特定非営利法人ten to ten(以下、同NPO)」が選定された。同年9月から工大カフェ「TENTO」がオープンし、同NPOが現在の運営を担っている(写真1)。オープンまでには、同NPOの設立やオープニング準備と同時並行的にWSメンバーの学生や地域住民が、本学の学生プロジェクトの助成制度を活用し、地域住民向けのイベントを開催し、新たな「共創」によるサービス提供や組織化が行われ、学生メンバーによる工大カフェファンクラブ「はんもっく」も設立された。

写真1 工大カフェ「TENTO」における共創の風景「例)学生によるデザイン発表会」
人のつながりを呼ぶカフェデザインのもと各種取り組みが継続的に実施されている。

「TENTO」のオープン以降、同NPOは工大カフェプロジェクトで定めた工大カフェ8か条やコンセプトにのっとり、道内や地場の野菜や果物などの食材や地元の福祉施設が作る天然酵母パンを使用したホットサンドや自家製レモネード、各種のコーヒーメニューなどを提供している。また「同NPO」、「はんもっく」、「地域住民」や「地域事業者」が協働しつつ各種のイベントが開催され、その数はオープン後1年間で概ね80回(NPOの主催、共催、協力、一部大学主催などを含む)となり、多くが新聞に掲載されるなど、大学の広報へも寄与している。また同NPOでは、地元事業者に向けに、事業者と地域住民や学生との「共創」を促すプログラム「室工大カフェ『TENTO』共創事業(パートナー事業)」も開始し、2社のパートナー企業を獲得し各種の連携も行っている。

このように本学では、工大カフェプロジェクトの流れを組み、同NPOが主体的に「地域課題解決・共創」型のカフェの運営をスタートさせ、多くの成果を挙げている。今後、スタート後に把握された課題も存在するため、大学の同NPOに対する支援や連携強化を図ることが課題として挙げられる。