巻頭言

森林資源活用による産業基盤創造

株式会社トクヤマ 代表取締役社長執行役員 横田 浩

写真:株式会社トクヤマ 代表取締役社長執行役員 横田 浩

2022年11月15日

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わが国のエネルギー政策は今世紀に入って化石燃料からの転換の主軸の一つに原子力を掲げていたが、東日本大震災を契機に原子力は主力電源の位置付けから外れ、安価安定な電源として石炭・天然ガスなど化石燃料が再び主力電源となった。その後、2020年10月に菅総理が2050年カーボンニュートラル(以下、CN)を宣言し、化石燃料からの転換の流れが定まり、ここに来て再び原子力が見直されているのは歓迎すべきことである。特に地理的条件から再生可能エネルギーの量的確保に困難を伴うわが国にあっては化石燃料に代わる安定電源の確保は国の存立に関わる問題で極めて重要である。

一方、昨今のCN議論の中で化学原料の脱炭素議論については、バイオマスはじめ国外に依存する傾向が強いが、将来のわが国のありようを考えるとき、日本国内での化学原料資源の確保についてもっとポジティブな議論が必要ではないかと考える。

特に化学産業にとって安価・大量な化石資源に代わる化学原料の確保は最重要課題であり、かつ経済安全保障の見地からも国内に目を向けることは極めて有意義なものと考える。例えば石油化学の代替原料としてバイオマスが注目されているが、バイオマスに関しては、人権問題がなく非可食であることが前提となり、将来にわたって海外から安価・大量に確保することは極めて困難であろう。幸い、日本には国土の3分の2を占める森林資源がある。林業をスマート化し北欧並みの競争力を実現し、川上(林業)~川中(製材・チップ)~川下(建築・化学原料・燃料など)の効率的なサプライチェーンを構築することで林業が発展し、林業を起点として循環する産業基盤を創造することで日本独自の持続可能な新しい産業構築が可能になるのではないか。

その際、多くのケースにおいて化学産業などと地域の天然資源利用はトレードオフの関係になるように捉えられがちだが、ネイチャーポジティブな取り組み、すなわち、地域天然資源の持続的・循環的活用が地域の暮らしと産業再生・創造・共生につながるという視点での世論形成が重要である。このような社会を実現するためには、地域住民、林業従事者や山林所有者などとの対話・理解をベースに、地域に適した保安防災を含め持続可能な森林計画、競争力ある林業機械開発、材木toケミカルの化学技術開発、私有林の利用促進など多くの課題があり、それらを解決していくためには、あらゆる側面での幅広い産学官の連携が欠かせない。

現在、弊社の主要製造拠点である山口県周南市では市・化学工学会・コンビナート主要企業からなる脱炭素協議会が発足し、こうした議論が始まっている。また、一般社団法人プラチナ構想ネットワークでも同じくこうした議論が始まっており、化学産業に携わる一人として今後このような取り組みに積極的に関わっていき、国民的議論を喚起し、日本の化学産業発展のために微力ながら尽くしたいと思う次第である。