特集大学発ベンチャー表彰2022

大学発ベンチャー表彰2022

国立研究開発法人科学技術振興機構 起業支援室 風間 悠佑

2022年10月15日

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■大学発ベンチャー表彰2022 文部科学大臣賞にChordia Therapeutics(コーディアセラピューティクス)、経済産業大臣賞にbitBiome(ビットバイオーム)

国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)と国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は「大学発ベンチャー表彰2022」の受賞者を決定した。

大学発ベンチャー表彰制度は2014(平成26)年度に創設され、今回は第9回となる。大学等*1の成果を活用して起業した大学発ベンチャーのうち、今後の活躍が期待される優れた大学発ベンチャーと、特にその成長に寄与した大学や企業などを合わせて表彰することで、大学等における研究開発成果を用いた起業および起業後の挑戦的な取り組みや、大学や企業などから大学発ベンチャーへの支援や協力がより一層促進されることを目指している。外部専門家で構成された選考委員会によるウェブ面接選考等を経て8社のベンチャー企業が受賞した。

大学発ベンチャー表彰2022 受賞者

文部科学大臣賞のChordia Therapeutics(コーディアセラピューティクス)は新しい抗がん剤の創生により次世代のがん医療の実現に貢献し、いまだ治療方法が確立されていないがん患者に対して治療薬を届けるべく研究開発に取り組んでいる企業であり、パイプラインの一つであるスプライジング制御薬の開発が、新たな抗がん薬として世界を舞台に今後活躍することが期待され本受賞となった。

経済産業大臣賞のbitBiome(ビットバイオーム)は独自技術で構築した膨大かつユニークな微生物ゲノムデータベースを活用した、バイオものづくり産業の革新を目指す企業である。シングルセルゲノム解析により世界最大・最高解像度の微生物ゲノムデータベースを構築し、微生物遺伝子を活用した産業構造を刷新する可能性を秘めており、今後の成長が期待される。

JST理事長賞のKAICO(カイコ)は難発現性タンパクをカイコで作るユニークな生産プラットフォーマー企業である。KAICO社は蚕を利用した経口ワクチン開発などを手掛けるなど、同社開発の技術・ノウハウと特許をうまく活用しながら展開している点が評価された。

NEDO理事長賞のElevationSpace(エレベーションスペース)は宇宙ステーションに代わる小型・無人宇宙環境利用プラットフォーム開発を目指す企業である。同社が担う宇宙実験プラットフォームの提供は、食料、創薬、材料等、あらゆる産業分野にとって重要である。宇宙利用、その普及を加速させる可能性のあるベンチャー企業である点が評価された。

日本ベンチャー学会会長賞のニューロシューティカルズは迷走神経を刺激する新たな医療デバイスを開発しているが、デバイス開発のみでなく、収益面では受託等をバランス良く取り入れることで会社の成長に必要な優れた収益・成長モデルを構築している点が評価された。

アーリーエッジ賞のLQUOM(ルクオム)は、長距離量子通信の社会実装を目指すベンチャーである。同社は量子インターネット実現の観点からキープレイヤーとなる可能性を秘めていることに加え、国産の量子通信システムが実現した際の社会性・公共性の高さから、一層の成長が期待される。

大学発ベンチャー表彰特別賞のアイ・ブレインサイエンスはアイトラッキング式認知機能評価法(ETCA)の社会実装を目的とした企業である。今後増加する予備軍を含む認知症の早期診断への貢献が期待される。同社の開発アプリは想定される利用シーンが多いこと、海外を含む市場性もあると考えられる点が評価された。

また、もう一方のベンチャー表彰特別賞であるPURMX Therapeutics(パームエックスセラピューティックス)は細胞に老化を誘導できるマイクロRNAを用いて、がん細胞に老化のスイッチを入れる新規抗がん剤コンセプトの研究開発を行っている。年々注目が高まっている核酸医薬(がんの老化を促すマイクロRNAに着目)の実現が期待され本受賞となった。

足元ではスタートアップ庁の新設、スタートアップの支援の拡充等、スタートアップを日本経済の原動力として活用する動きが進んでいる。しかし大学発ベンチャーが創出され、成長し、社会にイノベーションをもたらすまでの過程においては、産学官による息の長い支援が必要である。本表彰制度が、そうした支援体制のより一層の整備のための一助になれば幸いである。

*1:
国公私立大学、高等専門学校、国公立試験研究機関、国立研究開発法人、公益法人などの非営利法人
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