リポート

バイオコミュニティ形成に向けた福岡県の取り組み

福岡県商工部 新産業振興課 企画主幹 藤田 敏明
株式会社久留米リサーチ・パーク 常務取締役 赤尾 哲之

写真:福岡県商工部 新産業振興課 企画主幹 藤田 敏明 株式会社久留米リサーチ・パーク 常務取締役 赤尾 哲之

2022年5月15日

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2021年6月、福岡県が県南地域である久留米市を中心に進める「福岡バイオバレープロジェクト」の取り組みが評価され、国の「地域バイオコミュニティ」第1号に西日本で唯一認定を受けた。

本県の認定を受けるまでの取り組み、今後の展望を紹介する。

■福岡バイオバレープロジェクトの取り組み

福岡県では、2001年から福岡市、北九州市に次ぐ第三の都市である久留米市を中心に、バイオテクノロジーを核とした新産業・バイオベンチャーの創出や、関連企業・研究機関の一大集積拠点(バイオクラスター)の形成を目指す「福岡バイオバレープロジェクト」を推進してきた。

県南の久留米地域は、もともとオールドバイオと呼ばれる酒や醤油などの醸造産業や医療機関が集積しており、バイオ産業の拠点となるポテンシャルを有していることに加え、久留米市の強い協力が得られ、スタートさせたプロジェクトである。

プロジェクトを推進する組織として、産学官連携の「福岡県バイオ産業拠点推進会議」(事務局は株式会社久留米リサーチ・パーク、以下「KRP」)を設置し、「創薬」「スマートセル」「機能性表示食品」などの分野を中心に、
 ①競争的研究費助成などによる「研究開発支援」
 ②インキュベーション施設などによる「ベンチャー育成支援」
 ③機能性表示食品開発支援や専門人材(研究開発、起業、資金調達等)による「実用化支援」
 ④大型展示会出展支援などによる「販路開拓支援」
 ⑤セミナー開催などによる「人材育成」
 など起業から事業化まで切れ目のない支援を行っている。

インキュベーション施設については、KRPで4棟77室を安価に提供しており、特に、2021年4月に開設した4棟目の福岡バイオイノベーションセンターには、創薬やゲノム編集などに対応できる高度な機器を揃えたオープンラボを設置し、最先端の研究開発を支援する体制を構築している。

また、機能性表示食品開発については、開発相談、目利き調査(論文探索などによる開発可能性の調査)、研究レビュー作成支援、届け出支援など、相談から届け出まで、切れ目のない支援を行っており、全国的にも充実した支援との評価を受けている。

■実績

このような支援を進めた結果、プロジェクト開始当初30社程度であったバイオ関連企業が、現在、200社を超えるなど、企業集積は順調に進んでおり、創薬をはじめ有望なベンチャーも多数集積している。

また、機能性表示食品開発については、消費者庁への届け出が、東京、大阪に次ぐ第3位の届け出数を誇っている。

主な集積企業

■バイオ戦略策定

2019年6月に「バイオ戦略2019」が策定され、2030年のバイオエコノミー社会の実現のための戦略が示された。その中で、戦略実現のためには「国際バイオコミュニティ圏」が必要とされた。

翌年6月に策定された、「バイオ戦略2020」では、バイオコミュニティの考え方に「地域バイオコミュニティ」が加わり、2021年に「国際バイオコミュニティ圏」に先立ち、公募、認定する計画となった。

本県は、福岡バイオバレープロジェクトの軸足を「クラスターの形成」から「コミュニティ形成」に移し、さらなるプロジェクト発展を目指してこの「地域バイオコミュニティ」認定に挑戦した。

■地域バイオコミュニティ認定へ

地域バイオコミュニティ認定を目指すうえで、われわれが目標としたのは、「バイオエコシステム」の構築である。これまでは、研究開発支援を中心にプロジェクトを進め、多くのバイオベンチャーが起業したが、大きく成長するまでにいたっていない企業が多い。その主な理由としては、大きな成長に不可欠な①資金調達、②人材確保が関東・関西圏と比較すると難しいことが考えられた。

われわれは、地域バイオコミュニティ認定に向け、これら課題を克服し、多くのベンチャーが福岡の地で、起業から成長までを持続可能とするバイオエコシステム構築のための必要な施策を検討し、実施可能な活動計画を策定し、地域バイオコミュニティ認定申請をするに至った。

この活動計画が評価され、2021年6月に全国で4カ所、西日本で唯一の地域バイオコミュニティ第1号として認定を受けることができた。

この認定を起爆剤として、われわれの強みである創薬、機能性表示食品分野の開発をさらに進めるとともに、バイオエコシステム構築に向けた新たな施策に取り組み、「福岡バイオコミュニティ」形成を加速させていく。

■今後の取り組み

①組織改編

福岡県バイオ産業拠点推進会議を発展的に再編し、「福岡バイオコミュニティ推進会議(仮)」に改編、強化する。具体的には、課題である資金調達、人材確保、情報発信などの分野に強くコミットできる組織、人材を推進会議に取り込む。

②具体的施策

2022年度から、資金調達環境を整備する第一弾として、起業から資金調達まで伴走支援するバイオ分野に特化した「アクセラレーションプログラム」をスタートさせる。実績のある投資顧問会社と連携し、大学等の有望なシーズの早期事業化を後押しする。人材確保については、大学、人材派遣会社等との連携を視野に、ベンチャーに必要な人材を容易に確保できる仕組みを検討していく。その他、情報発信、異分野融合、地域間連携、バリューチェーン構築など、福岡バイオコミュニティの発展につながる施策を推進していく。

③将来目標

これら施策を確実に実施し、バイオ戦略の目標である2030年のバイオエコノミー社会実現に寄与できる福岡版バイオエコシステムが構築された福岡バイオコミュニティ実現を目指していく。