リポート

地方私大の社会連携

新潟青陵大学 福祉心理学部 准教授/新潟青陵大学・短期大学部社会連携センター 副センター長 齋藤 智

写真:新潟青陵大学 福祉心理学部 准教授/新潟青陵大学・短期大学部社会連携センター 副センター長 齋藤 智

2022年4月15日

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■本学と社会連携センターの概要

新潟青陵大学は建学の精神「日新の学理を応用し、勉めて現今の社会に適応すべき実学を教授する」に立脚した社会の切実な要請に応えるべく、保健・看護・福祉・心理の分野で地域に貢献できる高度専門職業人の育成を目指し、2000年4月に看護系では新潟県内最初の 4年制大学として発足した。

大学発足時から地域に根差した大学としての取り組みを進め、2015年4月学内一体となった地域貢献活動を推進し研究成果の産業界への移転ならびに地域振興などを通じた社会貢献活動の支援活動を目的に理事長を委員長、大学学長を副委員長とする「地域貢献・社学連携委員会」を設立し、実務を担う組織として地域貢献センターを大学・短大共通の組織として設置した。

その後、当時学長であった諫山正先生は「地域に開かれた大学」の実現を目指すためには、「大学から知を発信する」一方通行の地域貢献では十分ではなく「知の拠点」としての役割も果たせなくなっており、地域との連携の再検討を指示した。結果、地域貢献センターを改め、「地域社会から大学が学ぶ」側面も明確にし、双方向のベクトルを持つ地域に根差した大学としてさらなる発展を実現する組織として2019年4月社会連携センターに衣替えをした。

■地方新聞社との連携スタート

連携事業の転機となる特徴的な取り組みとして、全国的にも少ない事例と思われる地方新聞社である新潟日報社(以下:新潟日報)との連携事業がある。

新潟日報が新潟市郊外から中心部である万代エリアに本社を移転したことを受け、2012年4月に大学メディアキャンパス(正式名称は長岡造形大学、新潟薬科大学、新潟青陵大学、新潟青陵大学短期大学部メディアキャンパス)を設置した。

特色ある3法人3大学1短大が共同でサテライトキャンパスを構え、各大学の高等教育分野を生かし連携することで、「知」と「人」をつなぎ無限大の価値を創造する都市型キャンパスを目指した。「地域と学生」、「デザインと薬学」「メディアとこどもたち」などこれからの社会を築く新たなコンテンツに挑戦し、発信することを使命とした。

開設にあたり「4大学がそれぞれの強みを生かし連携することで、教育を通じて、地域社会の発展に貢献する「知」と「人」をつなぎ新たな価値を創造するフィールドとなる」を理念として掲げ、愛称を「メディ∞キャン」とした。

■サテライトキャンパスでの試行錯誤

当初連携を進めるにあたって試行錯誤することが多く、苦戦することも多々あった。4大学で理念は共有されていたもののメディアキャンパスは新潟市内中心部にあり、大学所在地からの距離が影響し学生向け合同の講座やイベントを開催しても参加者数の差は否めずその都度、大学間での協働事業運営の難しさを味わうこととなった。

このような環境下で5年間(2014年度、2016~2019年度)共同事業として実施したのが「サテライトキャンパスサミット」*1である。サテライトキャンパスを持つ強みを生かし全国の大学と情報交換を行う機会を得た。事例報告に参加いただいた大学は10校(国公立9校、私立1校)であり、どの大学もCOCまたはCOC+事業、社会連携事業で大きな成果を上げている大学であった。

どの事例報告でもスタート段階やその後の安定期と思われる中で多くの問題を抱え、悩み試行錯誤する生の声を聞くことはその後の事業展開の方向性を示唆していた。

連携事業を進める中で2017年10月、新潟日報より学生主体の連携事業を共同で運営できないかとの申し出があり、一つの転機を迎える。これまでの大学教職員が主導して企画し、新潟日報が支援するフローを大きく変え、「主役は学生」でありその裏方を新潟日報と大学が対等の立場で関わり、一方的な企画ではなく連携する者同士が相互に学生を支援する姿勢を共有することになったのである。

当初は学生12人とスタッフが話す場面でもどのような事業が実施できるかは白紙の状態であり、学生へのニーズ把握を行うヒアリングからスタートしている。

学生にとっても、地元新聞社と連携する事業と言われてもイメージできるものはなく、週に1度1時間の話し合いを続けた3回目に一人の学生による提案があった。「フリーペーパーを作れませんか? 自分たちで取材しそれを発行したい」という何気ない発言に他の学生も共感し動き出した。

2018年4月にプロジェクトに参加する学生を募集し、総勢28人が参加する本格的なプロジェクトを5月から開始した。

今に続くフリーペーパーの名称もこの第1号の企画に参加した学生たちにより「Ricerca」(イタリア語で「検索」の意味で「街歩きを、同年代にまだあまり知られていない新潟の魅力を伝えたい」)と命名された(写真1)。

写真1
写真1 学生作成フリーペーパー「Ricerca vol.1 ~ vol.3」

第1号は11月に発行にこぎ着けた。しかし、作成当時、大人の意向が強く出る面が多々あり取材テーマや取材先を学生が自由に選定できると説明しながら、メディアキャンパスを軸に企画するようになど周囲の大人が要望し、制作の方向性については学生の主体性が発揮されているとは言い難く、課題を残すことになった。

そして直ちに学生有志から第2号の制作について、「第2号は学生主体で作りたい」と要望があった。この要望を受け、学生募集や打ち合わせの準備、運営も含め学生の自主性に任せ、大人は見守る体制で実施したところ学生の成長、満足度は大きく向上することになった。

その効果もあり最新号である第3号はコロナ禍であったが、34人(6大学1短大1高専)の学生により2021年10月発行された。当初は4大学メディアキャンパスの共同事業であったが、「高等教育コンソーシアムにいがた」(新潟県内高等教育機関全30校加盟)を通じ本学が呼び掛け県内の全高等教育機関へ学生募集を行う連携事業に発展している。

新潟日報との連携事業は2022年4月さらに前進しようとしている。

県外に進学・就職した若者を応援するプロジェクトである「鮭プロジェクト*2」への関わりである。そのプロジェクトの一役を高校卒業時点で新潟県内大学を希望し在籍している学生が、「はたらく」「たべる」「まじわる」「つながる」のテーマに基づき、四つのグループで取材し内容を新潟日報の設けるウェブサイトを通じ発信する(4月以降は毎週いずれかのテーマにおいて取材情報を更新)(図1)。

図1
図1 「にいがた鮭プロジェクト」サイト内で発信する新潟の情報取材イメージ
はたらく、たべる、まじわる、つながるを大テーマとして、キャンパスライフの中にある新潟の魅力を取材・撮影・原稿制作をして情報発信する。

取材内容、取材先の選定は学生グループの自主性に任せ、新潟日報は企業との橋渡しと取材の基本的知識などについて側面支援、大学は学生募集と運営事務局として関わっており、サイトの4月1日オープンを目指し活動している学生は20人(5大学、1短大、1高専)であり、本格的始動に向け追加メンバーの募集を予定している。

地方新聞社との連携により、1私大としては実現できない地域での関わり、情報発信力は大きく向上することになった。

■地域内連携と大学共同事業

地方私大では中小規模の単科大学が多いため、社会連携活動の推進場面で様々な壁がある。連携先候補とのニーズを確認する話し合いの場面においては、その実現には様々な専門性が求められ、単独校では対応できず連携推進を諦めなければならないことがある。さらに実施段階では在学生の少なさから参加学生が特定の学生に偏り参加者が制約されるケースも散見される。

打開策として重点的に進めたのが、メディアキャンパスでの連携の教訓から得ていた地域性を考慮した連携であり、新潟市との連携強化が念頭にあったことから最優先で検討を進めた。2015年6月新潟都市圏大学連合*3(新潟県立大学、新潟国際情報大学、新潟青陵大学、新潟薬科大学、敬和学園大学、事業創造大学院大学、新潟青陵大学短期大学部)が結成された。専門性の異なる中小規模大学が相互に連携することでバーチャルな総合大学の形成を目指し、さらに新潟市と包括連携協定を締結することによって、人材育成や地域福祉などの分野で地域活性化に貢献するとともに、新潟地域の魅力を生かした国際交流活動に寄与することを目的とした大学連合である。

さらに都市圏大学連合の連携事業として書籍の出版を行い、地域で活動する学生に地域の歴史、その成り立ちを学び背景を理解した上で地域の方々との連携を進める必要があるとの考えから、連携校共通のテキストとなる書籍の発行を進めた。

新潟港開港150年という記念の年であった2019年に向けテーマを「みなと」として準備を進め、その過程で様々な立場の市民と情報交換を行うことで地域との絆を強める機会となった。2018年3月に発行された「みなとまち新潟の社会史」は、講義内で使用するテキストとなっている。

■ハイブリッド型の活動へ

コロナ禍における大きな変化として、未来の生活様式の一つと思っていたことが実現された。Zoomなどを活用した在宅勤務や遠隔会議、対面が当たり前と考えていた講義が遠隔授業へと様変わりした。この変化は連携活動にも好影響を与えることになり、学生同士の積極的な交流が生まれている。

しかし、活動初期に対面による関わりを持った学生のグループと遠隔活動のみに参加する学生のグループでは活動時に差が生まれているのも事実である。対面一辺倒の活動では時間と距離による制約があったが、遠隔活動のみではさすがのスマホ世代の学生でもコミュニケーションに苦慮している。対面と遠隔によるハイブリッド活動は欠かせないが、一方で運営に関わるハイブリッド人材の育成も急務である。

*1:
新潟日報社本社であるメディアシップを会場に新潟都市圏大学連合を中心に実施。第1回(2014年度) 岡山大学、山形大学、北九州市立大学;第2回(2016年度) 岡山大学、福井大学、滋賀県立大学;第3回(2017年度) 佐賀大学、福知山公立大学、東北公益文科大学;第4回(2018年度) 福井大学、福知山公立大学、大正大学;第5回(2019年度) 岐阜大学、北九州市立大学
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*2:
新潟日報社が2022年4月からスタートするプロジェクト。若者たちが人生の岐路に立ったとき、新潟が選択肢のひとつとなるよう「にいがた鮭プロジェクト」は新潟の魅力あふれる人や企業、旬の情報を発信して若者と新潟をつなぎ、若者が戻りやすい環境を整えると同時に、若者が挑戦しやすい風土も育てることを目的としている。
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*3:
新潟都市圏大学連合(新潟県立大学、新潟国際情報大学、新潟青陵大学、新潟薬科大学、敬和学園大学、事業創造大学院大学、新潟青陵大学短期大学部)は、専門性の異なる中小規模大学が相互に連携し、さらに新潟市と包括連携協定を締結することによって、人材育成や地域福祉などの分野で地域活性化に貢献するとともに、新潟地域の魅力を生かした国際交流活動に寄与することを目的としている。2015年6月11日大学間の協定とあわせ、同日に新潟市との包括連携協定を締結している。
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