リポート

竹需要を喚起し、多次元社会問題の同時解決を目指す大分大学発ベンチャー 株式会社おおいたCELEENA

大分大学 理工学部 准教授/株式会社おおいたCELEENA 取締役兼CTO 衣本 太郎

写真:大分大学 理工学部 准教授/株式会社おおいたCELEENA 取締役兼CTO 衣本 太郎

2022年4月15日

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国内で余剰となっている竹。この需要を技術開発で喚起し、地域規模から宇宙規模までの複数かつ多次元のSDGs課題をビジネス化で同時に解決することを目的に、大分大学発ベンチャーの株式会社おおいたCELEENAを起業した。その取り組みを紹介する。

■竹害と過疎化と脱プラを解決

竹は古来日用品や食品などとして利用されてきたが、化成品、特にプラスチック製品による代替や輸入材の増加などの理由で、国内需要は減退し、使われない竹が自然環境と人の生活環境に悪影響をもたらしている。この「竹害」と言われるSDGsの11や15のテーマに関係する問題を解決していくには、竹を切って活用することが必要だ。

そこで私は竹の特長から、今後の竹の用途は、燃料ではなく素材であると発想し、2012年から竹を素材化する研究に取り組み、竹からセルロースを精製し、ナノメートルサイズまで微細化してセルロースナノファイバー(CNF)を製造する「大分大学プロセス」を開発した。セルロースおよびCNFは生分解性を有する強靱(きょうじん)な植物繊維で、脱プラ素材として期待されている。

プロセスを開発するにあたり、竹は中空構造で嵩(かさ)ほど重量が運べないことから、①可能な限り竹林の近くで加工して素材化する必要があると考えた。

そこで、竹が繁茂する地域を見て回った。緑豊かな環境を損なわないように竹を加工する必要、つまり、②使用できる機器や薬品などが限られることを認識した。

さらに、このような地域では高齢化・過疎化が進んでおり、社会実装には、③専門知識や経験がなくとも携われる安全・簡単なプロセスでなくてはならないと考えた。同時に、①を達成する方策として、④竹林周辺の廃校などの遊休施設を工場として使用することを着想した。

以上の点に留意して、独自に開発した「大分大学プロセス」を簡単に紹介する。

■大分大学プロセス

大分大学プロセスは、竹からセルロースを精製する段階と、ナノメートルサイズまで微細化する段階に大きく分けられる。

竹からセルロースを精製するにあたって、②と③に留意した。セルロースは紙として汎用で、製紙現場で木材から主に製造されている。その薬品や工程をそのまま使用することは、②や③の点で難しいと考え、私は食品製造で使用される薬品を使い、「竹を調理する」独自のプロセスを開発した。そうして製造したセルロース製品を写真1に示す。

次は、ナノメートルサイズまで微細化する。機器を用いるが、②~④の点に留意して製造すると、白色で20ナノメートル程度の太さの繊維ができる。これが次世代素材として期待されるCNF(写真2)である。CNFとは、紙と同じ成分(セルロース)からできていて、太さは髪の毛の千分の一以下、髪の毛のように細長い素材だ。

大分大学プロセスでは、セルロース以外の有効成分も取得でき、竹を余すことなく使用できる。

写真1
写真1 セルロース製品
(株)おおいたCELEENA 提供
写真2
写真2 次世代素材として期待されるCNF
(株)おおいたCELEENA 提供

■ 株式会社おおいたCELEENA

株式会社おおいたCELEENAは、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の大学発新産業創出プログラム(SCORE & START)の支援の成果として、大分大学プロセスの社会実装を目的に、2021年9月28日に起業した大分大学発ベンチャー企業である。同社では、写真1の製品を製造し、主に化粧品、食品、脱プラ、塗料関連の企業や商社から引き合いを頂いて販売している。

現在は起業直後で、ラボスケールの極小規模での製造にとどまっており、生産量の低さから価格が高くなる課題がある。その課題を克服するために、同社では大分県竹田市の廃校跡に製造設備を設置する計画を進めている。そして、2021年10月18日に、大分大学旦野原キャンパスにて、同社が竹田市へ進出する立地協定の調印式を行った(写真3)。事業所が稼働すれば、雇用が生まれる。地元産品とのコラボレーションなども含めて地域を活性化させられると期待されている。

写真3
写真3 立地協定の調印式

市長からは「過疎と高齢化が進む地域に活力を生み出す『逆転の一打』となるよう、バックアップしていく」との期待を受けており、早期に計画を実行できるよう、まずは数千万円規模の資金調達と販路拡大に取り組んでいる。

■株式会社おおいたCELEENAが目指すSDGsへの貢献

株式会社おおいたCELEENAが解決したい問題は「地球上」にとどまらない。地球を取り巻く、あえて言うなら「宇宙環境問題」への貢献も期待できる。人工衛星などが廃用になる際の問題の一つにスペースデブリ(宇宙ゴミ)の発生がある。同社製品は燃え尽きる性質であるため、人工衛星部品として使用してもデブリを残さないで済む可能性がある。

竹を切って竹林を整備して自然環境を、製造・販売を通して地域の活性化を、脱プラ用途展開でマイクロプラスチック削減や脱炭素を、人工衛星部品展開で宇宙環境問題を、このような複数かつ多次元のSDGs課題(図1)を、一手に解決しようとする株式会社おおいたCELEENAへのご支援をお願い申し上げたい。

図1
図1 同社とSDGs ウエディングケーキモデルとの関係