特集短期大学

「みんなが知っている元気なおだたん」を地域に発信

小田原短期大学 乳幼児研究所 所長 宮川 萬寿美

2022年4月15日

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■「神奈川西湘地区に女子の高等教育機関を」から65年

小田原短期大学は、1957年、「神奈川県の西湘地域に女子の高等教育機関を」という地域の方々の熱い要望を受け、箱根の山を背景に、前には相模湾を臨む小峰の地に、旧閑院宮別邸を寄付していただき「小田原女子短期大学」として開学された。開学以来65年、同窓会人数も1万3000人を超え、地域でたくさんの卒業生が活躍しており、学校の実習支援・就職などに強力な支えとなって下さっている。

2014年に、学校法人三幸学園と法人合併、その時、通信教育課程の開設に際し、学校名から女子が抜け、「小田原短期大学(小田短)」となった。食物栄養学科・保育学科の通学生と保育学科の通信課程生が在学する学校である。

小田原短期大学

■乳幼児研究所とは

本学は、高等教育機関の短期大学であると同時に免許・資格を付与できる専門家を養成する「養成校」である。食物栄養学科は、栄養士・栄養教諭を養成、保育学科は、保育士・幼稚園教諭を養成している。教員は、大学教員としての専門性*1を持つ役割と養成校の教員としての役割を持ち、いわば、自分の専門的な領域*2での研究・実践と学生への教育活動の二足(あるいは三足)の草鞋(わらじ)を履いている。教員の大学の教育課程の担当科目は、もちろん教員の専門性によってはいるが、授業や学生指導は教育者としての教育活動である。一方の専門性を十分に発揮している場合ばかりではない。 

そこで、各教員の専門性を生かし、かつ地域の皆さんと協働しながら、実践即研究ができないだろうかと考え、2015年に、乳幼児研究所が立ち上げられた。学校という大きな組織の中では今ここですぐ新しく柔軟に活動・実践することは難しいが、乳幼児研究所では、「こんなことを地域で行いたい」、「こんな研究・研修・講座を継続したい」、「学生たちにこんな体験をしてほしい」と願う教員が、学生と一緒に特色あるプロジェクトを立ち上げ、そこで様々な実践をこまめに継続して展開している。

また、地域の行政や企業・団体からの要請があり、学科の専門性に根付いた活動も実践されている。大学や学科として取り組んでいる企画もあるが、乳幼児研究所でのプロジェクトとして地域企業や行政と取り組んでいる事業を幾つか紹介したい。

■これまでの活動から(Ⅰ) ー地域の企業と協働するー

①甘藷の葉を用いたレシピの開発(富士フイルム株式会社との協働)

2017年に富士フイルムより、甘藷(さつま芋)の葉を活用したレシピ開発依頼があった。「甘藷の葉は、塊根や茎などに比べ多くの機能性成分(ファイトケミカル)を含んでいると言われています。しかし、それらの機能性成分の中には、苦味や渋みを持つものもあり、調理時に工夫しないとおいしく食べられないという欠点があります」――というわけでレシピ開発を本学が担うことになった。

まず、甘藷の葉を利用した料理のレシピコンテストを実施。コンテストに先立ち、学生へ意識啓発のために、教員が試作、小峰祭(文化祭)で参加者に試食を依頼したところ、「甘藷の葉っぱと思えない」、「おいしい」と好評であった。

その後、食物栄養学科の各クラス単位での試作を行い、一次審査の書類選考を経て、レシピコンテストが実施され、選ばれたものが以下のレシピである。

  最優秀賞    「甘藷の葉のジェラート」

  優秀賞     「甘藷の葉のキッシュ」「甘藷の葉香るゴマ団子」

  富士フイルム賞「甘藷の葉のスノーボール「甘藷の葉ドレッシング」「甘藷の葉ふりかけ」

          「Super easy 甘藷の葉chips」

甘藷の生葉は冷蔵庫に保存しても褐変しやすいため、生葉の入荷日により試作日を決める徹底ぶりで、おいしいレシピが出来上がった。雑味を感じずにおいしく食べる方法を学生と教師職員が一体となって模索する中で、甘藷葉への愛着、地元で採れる甘藷を慈(いつく)しむ心が育ち、まさに地域連携と地域創生ができた**1

②「適塩」提案―澄まし汁の「適塩」試食(イトーヨーカドー小田原店ハッピーライフフェアに参加)

2019年には、イトーヨーカドーのハッピーライフフェアに参加した。テーマを「野菜たっぷり適塩メニューのすすめ~あなたのお食事のお悩み解決致します~」とし、活動内容は、管理栄養士によるお食事相談と適塩すまし汁の試飲である。

この「適塩」は本学の提案している考え方である。小田原市は脳血管関連の疾病が多く、塩分を控えた食習慣の確立を保健センターでも取り組み中である。そこで、小田原市の保健師にも協力を得て、減塩というよりは、「適塩」の考え方を広報している。

塩分濃度が異なる澄まし汁の試飲、家庭で普段に作っているみそ汁の塩分濃度測定、食事のメニューの塩分カードつくりなど、学生と共に取り組んでいる。

澄まし汁%
③子どもと一緒の生活を考える(さがみ信用金庫との協働)

さがみ信用金庫とは、協定を結び子育てセミナー等に取り組んできている。「さがみ信金&おだたん親子力up!子育てセミナー30年度」では、(1)プロダクティブ・エイジングで目指す「シニアが輝くゴールドタウン小田原」事業へさがみ信用金庫と小田原短期大学が参画 (2)育休明け職員対象子育てミーティング(さがみ信用金庫職員対象)を実施した。

(1)は「子育て今昔物語」というタイトルで、世代や時代によって変化する子育て観や育児方法を紹介。講演型で開催した。(次年度ワークショップを継続する予定であったが、新型コロナ流行下で休眠中)

(2)では、さがみ信用金庫本店にて、当該職員を対象に、子育て講座と親子遊びを紹介した。

■これまでの活動から(Ⅱ)-行政の活動に協力・連携するー

①赤ちゃんひろばの導入と活用

神奈川県の「平成26年度大学発・政策提案制度」に採択され、2015・2016年度に実施された「子育ての孤立予防のためのひろば全戸参加事業(赤ちゃんひろば)事業」を実施した。赤ちゃんを育て始めたお母さんに「もっと地域の方々と触れ合ってほしい、赤ちゃんをみんなで見守っていきましょう」というメッセージを発信したもので、「乳幼児全戸支援プログラム(おだたんモデルOMP)」**2を開発した。

このプログラムは、集団が苦手だったり、漠然と育児に不安を持ったりしているお母さんの子どもが安心してひろばデビューができるように工夫した内容になっている。ひろばを行う支援者の方に運営の手助けになるようにプログラム**3をDVD化し、どのように会を進めていったら良いかのヒントがたくさんある役に立つものである。

また、保護者に向けては「子育て応援ブック」を作成した。「楽しく遊んですくすく育つー感性が育つ・体が育つ・心が育つ」「知っておきたい赤ちゃんの食事」「赤ちゃんと快適に暮らす」「赤ちゃんひろば」のどこから読んでもよく、興味あるところから始められる手に取りやすいことを目指して作成した。

現在は小田原駅東口ミナカ小田原6Fの、おだぴよ子育て支援センターで月1回、赤ちゃんひろばを実施。毎回8~10組が参加。年間100人程の親子が子育ての一歩目を赤ちゃんひろばから始め、その後、子育て支援センターの他の講座や地域のひろばに参加していっている。

子育て応援ブック

■乳幼児研究所での活動

2022年2月現在の各プロジェクトはペアレントトレーニング(地域の保護者対象)、保育現職研究会、支援教育実践研究会、西湘こども発達研究会(臨床心理士研修ポイントあり)、絵本プロジェクト(2022年絵本学会を小田原短期大学で開催)、小田原市幼児教育アドバイザー、おだたんくらぶ幼児教室(地域の2歳児親子対象)、臨床発達相談、創作劇研究会(音楽劇出前中)、赤ちゃんひろば(子育て支援センターおだぴよにて)、こどものうた研究会である。4月より小児衛生研究会が加わることなった。

■これからの活動への展望

現在の乳幼児研究所の活動において、活動をオンラインで試行することが多くあった。新型コロナ流行下にあって、地域の人々との直接的な交流ができにくい状況下にあるが、そのような状況においても、つながり得る人間関係の展開について、新たな方法を開発し、地域に発信していくことができるように思う。オンラインで実施することにより、時間と空間を超えてつながっていける活動もあることを実感した。

半面、学生の体験などは、オンラインでは十分な体験とは言えない部分もある。知識を得ることはできても、人々と状況を共にして情緒的な交流をすることやそのことをきっかけに自らの行為につなげていくことは、実践あってのことであろう。今後、地域の皆さんとの協働をさらに模索し、実践即研究即教育となるような具体的な活動をさらに進めたい。

講座のポスター
*1:
専門の資格とは、管理栄養士、社会福祉士、公認心理師、臨床心理士、臨床発達心理士、介護福祉士等。
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*2:
専門領域については食品学、調理学、栄養学 公衆衛生等、または教育学、心理学、児童文学、舞踊、音楽教育。福祉等 詳しくは、小田原短期大学ホームページ:情報公開・教員紹介を参照のこと。
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参考文献

**1:
甘藷の葉を用いたレシピの開発 2017 甘藷葉レシピ開発報告書 (2017)小田原短期大学編
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**2:
赤ちゃんを育て始めたあなたへ 子育て応援ブック (2015年)小田原短期大学編
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**3:
地域を支える子育て支援者のための 赤ちゃんひろば運営の手引き OMPテキスト(2017年)小田原短期大学編
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