特集短期大学

地元企業との連携による商品開発への取り組み

鹿児島女子短期大学 寺師 睦美

写真:鹿児島女子短期大学 寺師 睦美

2022年4月15日

  • Twitterを開く
  • Facebookを開く
  • LINEを開く
  • 印刷ボタン

■プロジェクト活動の背景

鹿児島女子短期大学は、2014年度より「地(知)の拠点*1」活動の一環として地域との密接な連携に基づく実践的教育による地域活性化の意欲的な担い手の育成を目指している。全学的には、既存の全学必修科目「WE LOVE 鹿児島!」を中心にCOC科目を充実させ、研究、プロジェクト活動などの継続的な実施に努めた。食物栄養学専攻では、本専攻1年生と2年生、教員、助手を構成メンバーとした食と食育に関連する「鹿女短スマイル食育プロジェクト」を立ち上げ、各教員の専門分野や連携する企業の特性に応じて活動を行った。

主な活動内容は、契約を締結した地元企業と連携して地域食材を活用し、企業の要望や地域の課題に基づいた研究・開発を推進し、製品販売の実施などである。企業を通して地域の現状に触れる機会を増やすことで、学生の「ローカル・アイデンティティ」を培い、地域課題に意欲的に取り組む人材教育の充実を図ることを目的とした。1年間の活動は、講義や学内外の行事に沿って計画的に運営され、年度末に学生が各プロジェクト活動の成果を発表し、相互に次年度の活動目標や活動内容を改善につなげ、さらなる教育効果の向上を目指して継続的に活動した。

鹿児島県いちき串木野市の鹿児島協同食品株式会社は、鹿児島県経済連グループ(JAグループ)の一つで、地域に密着した取り組みを推進する企業である。鹿児島県産や国産の食材の特徴を生かし、食肉加工課(ウィンナー・ハム・ベーコンなど)、日配製造課(豆腐・麺・こんにゃくなど)、惣菜製造課(冷凍食品・餃子・煮物など)の三つの専門工場で製造し、その商品は同グループの株式会社エーコープ鹿児島の県内一円にある各店舗にて販売される。

本学は、鹿児島協同食品とともに鹿児島県における地産地消の実現に向けて、「食」全般に対するニーズや高齢化社会への配慮、高まる安全志向などについて、本学、JAグループ一体となって研究を行うことで、新しい「食」の可能性を創造・追及していくことを目的とし、2005年4月に本学と覚書を交わした。その後、2016年4月に協定書を締結し、鹿児島協同食品と連携した取り組みを行い、社会の現状やニーズに対応した幅広い見識および実践的な技能を修得し、約5年にわたって地域社会に貢献できる人材育成を目指す活動を行った。

■活動の概要

鹿児島協同食品とのプロジェクト活動の主旨は、各ライフステージにおいて社会のニーズに対応した「女性および栄養学的」視点からレシピを提案し、商品化を進めることである。鹿児島協同食品からは、若い女性の意見や、栄養学的エビデンスを基にした提案の要望があり、学生の感性や日頃の講義の学習内容を反映することを心掛けることとし、2015年から連携活動を開始した。プロジェクト名は、2016年度の本プロジェクト発足当初の学生が「Healthy & Smileプロジェクト」と命名した。

依頼される食材は、主に鹿児島県産や日常的に食生活に用いられ、工場のラインで製造可能なものである。商品化後は、商品を用いた調理方法や献立のアレンジなど、健全な食生活となるように予防医学的な観点から食品の選択や調理の工夫など献立の提案を検討した。鹿児島協同食品と連携し、2016年度から開発した商品を示す(表1)。

表1 鹿児島協同食品株式会社と産学連携等により商品化されたもの
表1
2019年度に商品化された「ベジ揚げ」
「現代風にアレンジした郷土料理~郷土料理を未来に伝承していくためには~」をテーマに、鹿児島特産
の野菜や肉を主原料にした郷土料理を、嗜好や携帯など工夫することにより、幅広い年代や現代の生活に
取り入れやすい新しいスタイルの郷土料理惣菜を提案した。

メンバー構成は、前年度末に学生の希望を募り、4月初めに新メンバーが決定された。1年生と2年生をそれぞれ四つの班に分けて、プロジェクトリーダー・副プロジェクトリーダーを選び、各班長・副班長、学内外行事や商品開発作品発表会・試食会などの担当者を決定した。活動計画と日程は、学生と鹿児島協同食品が対面して意見交換し、実現可能な計画を検討した。その際は、学生の学習や企業の運営に大きな影響がないように、実施項目と時期を話し合い、状況に応じて調整を行った。6~7月は、鹿児島協同食品が製造する商品のモニタリング、パッケージや資料などの作成、開発中の商品のアンケート調査などを実施、8~10月は、学内外行事に応じたレシピ提案と試作、開発中の商品アンケート調査の実施、資料作成など、一般の方や学生を対象とした行事で直接意見や感想を伺い、情報収集と改善に努めた。11月以降は、新しいテーマの商品開発作品発表会・試食会開催のために、学生は「商品提案書」を検討し、各自でレシピ提案作品を試作した内容をレポートとしてまとめて提出した。食材の特徴や栄養的効果、調理方法対象者や食べる状況に応じたニーズなどを考えて、日頃の講義、実習での学びや成果を発揮できるように指導した。1月には、学生が作成した「商品開発提案書」から企業が選抜し、その作品を班ごとに分担し、発表準備に取り組んだ。その後、さらに作品の特徴を際立たせるために、班ごとに作品の試作を行い、食材の特性や栄養的効果、調理方法、盛り付けなどを検討した。発表用スライド作成と発表準備、調理作業の衛生管理、食材の発注、会場設営などを鹿児島協同食品と学生、教員・助手で話し合い、分担しながら具体的に進め、2月の商品開発作品発表会・試食会の開催に向けて準備した。

2月に商品開発作品発表会・試食会を開催し、鹿児島協同食品とエーコープ鹿児島から評価と助言があり、計画から発表に向けた工程や内容を反省し、それぞれの改善につなげた。3月は、エーコープ鹿児島にて開発された商品の販売促進活動を行い、直接、消費者に提供する機会を得て、商品のアピールや日常生活への活用方法などを説明する体験をした。3月の製造工場の見学研修では、各工程や衛生管理、原材料搬入から製造工程、検査、搬出など、商品の提案から製造、販売までの流れを具体的に学んだ。

■活動の成果と課題

本プロジェクト活動を行うにあたり、学生が主体性と目的意識を持つことや、情報を共有できる関係性の構築を心掛け、鹿児島協同食品の担当者と学生、教員・助手の作業分担、スケジュールを明確にして、検討会では相互の情報を共有し、いろいろな状況に対応できるよう努めた。その他、製造工場の流れや消費者ニーズなど、現実的な事項について説明を受けることができ、商品開発のやりがいや難しさも理解することができた。レシピ提案で食品の栄養、機能性を理解し、調理方法を研究する中で、各ライフステージや代謝、疾病などの理解が必要であり、日頃の講義で学ぶことを商品開発で実践することでフィードバックし、必要な科目や理解する方法の工夫、演習や技術の研さんにつなげることができたと考える。

本専攻の卒業生が、企業の栄養士として本プロジェクトを担当しており、商品開発の過程において明確な提案や助言があることで、学生が理解しやすく意欲的に取り組むことができた。本プロジェクトメンバーの学生1人が、商品開発や企業での栄養士業務に興味を持ち、鹿児島協同食品に採用され、現在も活躍している。企業が目指す目標や要望を理解し、販売促進活動で消費者と接することで、社会や消費者ニーズを直接感じることができ、実践的な経験を通して栄養士として必要な技能の習得に効果的であり、進路の選択や社会人への成長にもつながったと考える。

商品開発の提案には、身近な家族や日常生活、社会や経済などを日頃から認識することが必要である。このプロジェクト活動を通して、講義や教科書で学ぶ基本的かつ専門的な技能について、「誰に」「何を」「どのように」生かすのかを明確にし、対象者や社会での目的、方法などをしっかり伝えることで、学生の理解や興味が深まり、社会や周りの人々に役立つ存在になる喜びも感じる経験が可能となる。

今回のプロジェクト活動は、班活動で複数の学生が関わるため、コミュニケーションを図り協力体制を作ることに努め、各班の特徴に即した指導やサポートが必要であった。学業と並行して取り組む際には、学生の主体性を生かしながら、活動意欲を高める指導も大切だと痛感した。プロジェクト活動から学んだことを生かして、社会の状況や地域の課題解決に向けた人材育成や研究につなげることに努めたいと考える。

*1:
文部科学省 地(知)の拠点整備事業(大学COC 事業)
本文に戻る