特集短期大学

栄養士の卵「しののめベジガール」の挑戦

松山東雲短期大学 食物栄養学科 田中 洋子

写真:松山東雲短期大学 食物栄養学科 田中 洋子

2022年4月15日

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松山東雲短期大学は、1886年に四国で最初の女学校として、キリスト教精神に基づく教育を実践して135年になる。食物栄養学科は、1957年に松山東雲栄養学院が設立されてから栄養士の養成を行い、間もなく65年を迎える。

2020年には、松山東雲短期大学食物栄養学科2年生の亀岡ゼミ・田中ゼミの学生で構成する「しののめベジガール」が、中国四国農政局「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」に選定された。結成4年目のことである。

■「しののめベジガール」の誕生

2015年の「平成27年愛媛県県民健康調査結果」より、愛媛県では、特に20~30歳代の若い世代において朝食の欠食率が高いことや、野菜の摂取量が目標量350gに比べて約270gと少ないなど、食生活において様々な問題があることが明らかとなった。そこで県では、愛媛のものづくりを担う若い世代・働き盛りを対象に、バランスの取れた食事は「健康寿命の延伸」につながるとして、食生活・栄養改善に向けた取り組み「愛顔のE-IYO(えがおのえいよう)プロジェクト」を推進。食物栄養学科は2016年には県と連携し、若い世代にも簡単に不足分の野菜が摂れる朝食レシピを考案し、レシピは県のホームページにも掲載されている。この活動が翌年2017年の色とりどりの野菜帽がトレードマークの「しののめベジガール」の誕生につながる。

■活動の概要 

2年次の通年科目として、週1コマの「卒業研究」がある。2017年より亀岡恵子教授のゼミと合同で実施し、教員は、学生指導はもちろんのこと、連携先との調整や諸機関への働き掛け、イベント準備や情報発信などを行う。ゼミを選択した学生たちは、愛媛県と連携した「愛顔のE-IYOプロジェクト」ほか地域課題解決に取り組んでいる。

■産官学連携の継続した取り組み

①2017年(連携先:1件、啓発活動日数:8日、メディア露出数:2件)

愛媛県包括連携協定企業のカゴメ株式会社と連携し、コップ1杯で愛媛県民の不足分の野菜が補える野菜スムージーや野菜スープレシピを考案し、カゴメ「親子手作りケチャップ教室」ほか、年間8回の啓発活動に取り組んだ。

野菜スムージーは学内スムージーコンテストを経て、カゴメの管理栄養士よりレシピのブラッシュアップ、商品紹介や声掛けの仕方についてもご指導いただいた。学内の生協食堂とも打ち合わせを重ねて販売に至り、この開発プロセスは、地元ニュースで放送され、多くの反響から、「初代しののめベジガール」のやりがいや自信につながったようであった。

②2018年(連携先:2件、啓発活動日数:8日、メディア露出数:7件)

新たに西条保健所・東温市より連携依頼をいただき、西条市の産直市場「周ちゃん広場」において、「しののめベジガール」が考案したスムージーの試飲活動や3日間限定で販売を行った。新聞に掲載されたこともあり、3日間とも午前中で完売。また「東温市健康フォーラム2018」においても、スムージーの試飲やステージ発表などを通して「朝食を食べよう!野菜を食べよう!」の啓発活動を行った(写真1)。

写真1
写真1  3代目しののめベジガール 東温市健康フォーラムにて

食育月間の6月には地域への啓発活動として、花園まちづくりプロジェクト協議会(松山市後援・協力)が主催する「お城下マルシェ花園」にて、スムージーの販売をしながらリーフレット配布による啓発活動を行った。スムージー200杯は5時間で完売し、不足分の野菜の摂取方法として、1歳の子どもから高齢者まで大好評であったこと、また、「2代目しののめベジガール」が考案した「ベジスイーツ」の一つ「人参・ほうれん草のシフォンケーキ」も完売でき、責任を持って売り切れた達成感を感じるとともに、学生たちの大きな自信となった活動であった。

これらの取り組みは、四国の地域課題の解決に知恵を絞る「四国活性化プロジェクト2018」のイベントに先立ち、愛媛県を代表した取り組みとして愛媛新聞に掲載された**1

③2019年(連携先:4件、啓発活動日数:10日、メディア露出数:23件)

「3代目しののめベジガール」は、これまでの連携に加えて新たに、大塚製薬株式会社、フジ株式会社の小学生親子を対象にした「家族で大豆を育てよう!」イベントでの食育や、帝人株式会社との「麦麦ごはん」の開発・学食での販売を行った。

「家族で大豆を育てよう!」イベントでは、農業経営者の指導の下、小学生親子21組が「しののめベジガール」と一緒に種植えから収穫まで行い、「しののめベジガール」考案の4品を調理し、収穫したての味を堪能した。食生活改善普及運動月間の啓発も行った。

「麦麦ごはん」は、日本人の成人女性は食物繊維の摂取量が不足していることより、愛媛県産のもち麦と帝人のスーパー大麦、それぞれの食物繊維の特性を生かしつつ、お茶碗1杯で不足分が解消できることを目的に開発。販売開始30分で売り切れる学食の人気メニューとなった。帝人の東京での新商品発売会にも参加させていただき、健康課題の解決には、「当事者意識」と「専門性」が重要であることを学べた。

④2020年(連携先:2件、啓発活動日数:1日、メディア露出数:3件)

新型コロナウイルス感染拡大に伴いイベントが次々と中止になる中、久万高原町(くまこうげんちょう)の教育委員会より、上浮穴(かみうけな)高校学生寮「星天寮」の夕食献立作成の協力依頼があった。活動の機会を失ったほかの2ゼミと一緒に、「スマートミール」(2018年に開始された「健康な食事・食環境」認証制度)の基準を満たした16種類のレシピを掲載した「『しののめレシピ』2021」を作成した。

10月には大洲市主催の「食育講演会」(テーマ:「野菜で“からだ革命”withしののめベジガール」)が、感染予防対策を講じ、参加者を中・高校生と食生活改善推進員約60人に限定して実施された。スムージー・麦麦ごはんを配布し、野菜摂取量テストやアンケート調査、ステージ発表を行った。後日来場者からは、「学生の皆さんの姿がとても素敵で、野菜のことがよく分かり、しっかり食べるようにしたいです」、「栄養士の仕事にとても魅力を感じました」など、うれしいコメントをたくさんいただいた。

「4代目しののめベジガール」のイベント活動は1回であったが、学生たちにとっては、貴重な経験となり、「相手に分かりやすく伝える力と計画的に物事をすすめ、周りの人と協力する力が身に付いた」、「できることを探して実行することの大切さを学んだ」と1年を振り返った。

■初めての商品開発から「しののめ魚魚っとガール」誕生へ 

愛媛県は養殖真鯛の⽣産量が⽇本⼀であるが、2020年、コロナ禍で飲食店向けの流通が滞り、出荷価格が低迷してしまったことから愛媛県産養殖真鯛の需要拡大にも取り組んだ。

これは、「2代目しののめベジガール」の1人が卒業後、愛媛大学農学部に3年次編入をし、卒業研究として養殖真鯛の消費拡大のための加⼯⾷品の開発・商品化に取り組むことになり、「4代目しののめベジガール」に協力依頼があったことに始まる。そこで、愛媛大学と愛媛県八幡浜市の養殖真鯛業者である株式会社オーシャンドリームとの共同研究・開発をすることになった。

まず初めに、⽔産加⼯会社から提供されたマダイの加⼯商品、試作品について、調理プロセスの適正化、商品の優位性などを検討。この結果を基に、試作を重ねてウコンとミカンの⽪を加え機能性⾷品として販売候補のスープカレー4品と、タイの消費につながる6品を完成させ、試食会を行った。人気のカルパッチョを筆頭に、随時商品化されることになり、2021年度も「5代目しののめベジガール」が引き続き加工商品の開発に取り組んでいる。

そのような中、高級魚とされるマハタ・キジハタのレシピ開発に、愛媛県農林水産研究所水産研究センターから委託を受けた愛媛大学との共同研究で取り組むことになった。野菜帽から魚の帽子に装いを変え、愛媛の魚の魅力を発信するべく「しののめ魚魚っと(ぎょぎょっと)ガール」を結成し、試作を重ねて2魚種の特徴を生かした10品を完成させた(写真2)。このレシピ開発が、販路拡大につながることを期待したい。

2021年度の連携先は6件、啓発活動日数4日、メディア露出数14件であった。

写真2
写真2 「しののめ魚魚っとガール」 マハタ・キジハタの試食会にて

■成果と今後の方針

「しののめベジガール」「しののめ魚魚っとガール」の活動は、学生が教室で得た知識を生かして社会貢献活動を行い、これにより学生と地域社会が連帯することで双方に利益がもたらされる、まさに実践型・循環型の教育プログラム、サービス・ラーニングであると言える。

産官学連携プロジェクトのメリットは、①活動が注目されてマスメディアに取り上げられやすくなり、波及効果が高まること、②連携することにより予算獲得が可能となり、活動の質・量が高まること、③行政や企業の管理栄養士の姿をロールモデルに、学生がキャリアビジョンを描けるようになることなどである。

愛媛県は、瀬戸内海、宇和海という二つの海に臨み、魚類養殖生産量で42年連続1位を獲得している。「魚離れ」が加速する中、今後は「しののめ魚魚っとガール」としても県民の魚食推進に産官学連携の力を注ぎ、ステークホルダーの皆さまとともにシナジー効果を生み出していきたい。

参考文献

**1:
若い力 スムージー開発, 愛媛新聞,2018-10-11, 朝刊,p.17
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