特集短期大学

コーオプ教育を導入し短期大学に産学連携キャリア創造コースを開設

大阪夕陽丘学園短期大学 学長 東田 晋三

大阪夕陽丘学園短期大学 キャリア創造学科 産学連携キャリア創造コース 准教授 神殿 織江

2022年4月15日

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■概要

本学は、大阪の中心地区にある2学科・学生数440人の都市型小規模の短期大学である。食物栄養学科(定員120人)、キャリア創造学科(定員100人)で戦後設置認可された短期大学149校の1校であり、70年を超える歴史を持つ。

ここで紹介する「キャリア創造学科 産学連携キャリア創造コース」は、2021年度からスタートし、2022年度に第1期の卒業生を出す予定である。現在、コース在籍学生は11人(男子3人、女子8人)で、当面1学年15人程度を想定している。

インターンシップの期間は、1年生後期(10~12月、週3日、無給、計36日)、2年生前期、4~7月、週4日、有給、計50日)の総日数86日間となる。インターンシップ受け入れ企業は、株式会社アクトワンヤマイチ、株式会社近鉄百貨店、スイスホテル南海大阪、司法書士事務所ともえみ、ナカザワ建販株式会社、株式会社オンワード樫山、株式会社セントラルフルーツ、株式会社アルゴセキュリティー、株式会社エムズプランニングの9社である。

■コース設置の目標、特徴、設置背景

本学の教育目的は、建学精神と理念に基づいた「実社会において役立つ専門性とその活動を支える幅広い知識・教養と豊かな人間性を持った人物を育成する」である。AP(アドミッション・ポリシー:入学者受け入れの方針)、CP(カリキュラム・ポリシー:教育課程編成・実施の方針)、DP(ディプロマ・ポリシー:卒業認定・学位授与の方針)の三つの方針においてもその教育目的を達成するために明記し、短大の全ての教育活動に貫かれている。DPに示した「専門性、社会での実践力、コミュニケーション力、ホスピタリティ精神」を学生が確実に身に付けて卒業するため、CPは講義に加えて学外の演習、実習に重きを置いている。それを一層具体的に実現する教育プログラムとしてコーオプ教育を展開し、建学の精神・理念で提示する人材の育成を実現する。そのために、社会で生き抜く力を育み、知識と経験の融合と他者と積極的に関わる力を付けようとしている。

産学連携キャリア創造コースの目標は、長期の就業体験および事前・事後の学修を通して、他者と協力して、問題解決しようとする姿勢を持ち、自分の人生を自分で切り開いていく環境適応力を身に付けた学生を社会に送り出すことである。短大2年間の多くを事前・事後学修(教室)・長期就業体験(企業現場)で学習し、企業からは「新人研修の必要がない学生」と評価され、4年制大学編入学には「低学年キャリア教育が完了した」レベルまで学修した学生を育成し送り出す。この成果は数週間程度の就業体験では不可能であり、長期就業体験でこそ成し得る。この点が本プログラムの最大の特徴である。キャリア創造学科の新しいコースとして入試を行い、本コースの目指す姿を高校、受験生、保護者にも繰り返し伝え、入学者は、そのことを十分に理解し、その覚悟を持った学生を選抜し、コーオプ教育の敷衍(ふえん)にも力を入れている。

短期大学において食物、繊維について学ぶ家政系学科で学生募集を図るのは極めて難しくなり2011年度は定員に対して70%台の充足率に陥り経営の危機に直面した。学科の再構築を試み、現在の食物栄養学科とキャリア創造学科(製菓、ファッション、ブライダル、ビューティーの4コース)で再スタートをした。しかし、短大進学者の減少の影響も受け、充足率90~95%と慢性的な定員未達の状態が続いていた。特に、キャリア創造学科は充足率80%を切る状態が続いた。そこで本学の教育目的を文面だけでなく短大全体で具体的な形に示すべく、2019年キャリア創造学科の新コース(コーオプ教育)として「産学連携キャリア創造コース」の設置を決定し、2020年度より募集を開始した。

本コースの新設は、単に学生募集だけを目的としたのではなく、人生100年時代、働き方改革、女性のさらなる社会進出という社会の変化に対応した人材の育成を目指したためである。募集活動にあたり、まずは高等学校の教員に対して、産学協働についての勉強会・研究会を開催、その成果として産学協働に関するテキスト開発も構想している。また、連携企業を開拓するために学内のネットワークを最大限に活用し、一社一社丁寧に説明することによって、9社から長期の受け入れを了解された。この活動を通して、高等学校、企業に対して産学協働教育の意義を広げることにつなげ、「コーオプ教育の大阪夕陽丘学園短期大学」を高校、地域、企業にPRし、「大阪の“小さいけれど元気のある”短大」の評価を得るべく、これからの20年未来の方向性を明確にする。コーオプ教育の導入は、その象徴的な取り組みである。地域との連携に加え、教職員の意識変革を促すFD・SD*1研修、付設高校との連携、インターンシップ専門スタッフの配置も並行して行い、2021年度入試においては、過去最高の充足率127.7%となった。学外との連携も「学生の育成に本気で取り組んでいる」短大として、様々な提携依頼が来るようになり、現在、複数のプロジェクトが動いている。

■正規の教育課程に組み込む

短期大学卒業要件62単位のうち、事前学修・事後学修・長期就業体験で37単位を配置している。しかし、事前・事後学修は長期就業体験のためだけを目的としているのではなく、建学の理念に基づく人材を育成するために大学の「教育」として行っている。学科特性である色彩学、生命科学と倫理、食と健康、ビューティー基礎・ウオーキング実習、リラクゼーション論などの学修も含まれ、コーオプ実践ゼミでは、コミュニケーション、フレームワークなどの思考法、問題発見・解決法についてトレーニングを重ねている。特に、論理思考を大切にしたプレゼンテーション力の育成に注力している。

最初に述べた本学の教育目的を達成するための三つの方針がしっかりと押さえられていることが大前提であるが、その上で、1年後期から2年前期の企業実習がこの産学連携キャリア創造コースのコアとなり、「新人研修の必要がない学生」を具体的な人物像として目指す。実習は、1年後期、3社にて1カ月ずつ長期就業体験(企業研究Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ 313.5時間、9単位)、2年前期、1社に絞り14週から15週の有給インターンシップ(企業研究Ⅴ、Ⅵ、Ⅶ 364時間、13単位)である。1年後期就業体験は、学生が希望する3社とのマッチング(リモートも使った学生・企業・担当教員の粘り強い話し合い)は無給の就業体験で、業界の違う仕事を体験、観察する。2年後期は、1年生で就業体験した3社の中から1社に絞り有給で14~15週の実習を行う。基本的に学生が望み企業もそれを認めた関係で実習が行われ、もはや実習というより勤務となる。入社したばかりの新入社員と比べられながら業務に取り組む環境は、有給であり長期であるからこそ、厳しさと実践的な学びが得られる。

1 社における1 カ月のフローチャート これを3 社繰り返す

■短期大学2年間の半分がインターンシップ

1年後期、1人3社3カ月間、1社あたり1カ月間、週3日の無給インターンシップ、実習日数36日。週2日は学校に戻り、毎週のインターンシップ成果と課題について振り返る。その他教養科目を受講する。実習だけでなく学科として求められるCPにも関心を持ち、学修視野を広げる。2年前期、1社に絞り3カ月間、週4日の有給インターンシップ、実習日数50日。2年間でトータル86日のインターンシップで職場にある様々な仕事(人、商品、会計、物流、情報など)について広範囲に体験、観察、訓練ができ、一定の業務を任せてもらうことで仕事のつながりを理解し、他者とのコミュニケーションや業務目的を深掘りする目的意識の涵養(かんよう)ができる。有給であることで、学生はリアルな職場でお客様扱いされず「仲間」として扱われ、同時に仕事成果や職場への貢献を求められ失敗も成果も職場で共有する現実を生で学ぶ。社会で求められる人間関係や失敗しても真摯にその失敗に向き合い、ダメ出しをもらっても何度もやり直す意味を理解する。長期であるがゆえに、また2年生前期は有給であることから学びだけでなく職場への貢献が求められる。1年生後期インターンシップ開始時は、半年前まで高校生だった学生にとって、長期間の意欲継続は簡単ではなく、環境変化に耐えられずエンストを起こす。しかし、長期だからこそ、短大側の支援が大きな意味を持ち、学生が“挑戦する”“キャリアの礎を築く”重要な時間となり、それを短大・企業と共有することで産学双方の連携教育としての厚みが生まれる。そして、“やり遂げる実感”を体得していく効果は短期のインターンシップでは得られない。学生のエンストやトラブルは、短大と企業のホットラインを機能させ(普段からの信頼関係作りが肝)、スピードと短大側のフットワークで修復できることがほとんどである。

日報(インターンシップノート)

■企業との信頼関係づくり

知識と経験の融合と他者と積極的に関わる力を付け、社会で生き抜く力を育む教育目的およびそれを達成した人材像として「新人研修の必要がない学生」を育成する短大の考え方について受け入れ企業に説明し、十分に理解してもらった企業と連携協定を交わし、具体的な運営・評価方法について参画してもらっている。これらはコーオプ教育をやるなら当然のことであるが、企業独特の方針や慣習がありそれらについて具体的に意見交換をしていく必要がある。協定を交わせた企業は、長期および有給インターンシップが初体験であることがほとんどで、インターンシップ運営について互いの齟齬(そご)がないよう「一緒に学生を育てている」マインド形成を図っている。

コーオプ教育、キャリア教育に関するアカデミックなレクチャーは重要であるが、何よりも重要なのは、事前に学生とのコミュニケーションを充実させることである。口で言うほど簡単ではないが、学生の企業研究プレゼンや企業による事業紹介プレゼンなど双方が互いを知ろうとする情報提供の場や授業を通した交流の機会を粘り強く作る。

「コロナ禍中」でもあり、企業側の提案でリモート会議を状況に合わせて活用している。学生が作成するインターンシップノートへのフィードバック、学生のインターンシップ計画や成果のプレゼン実施、期間中の面談など各企業の業態に合わせて実施し、双方の負担と教育目的のバランスを考え、効率化を図っている。

コーオプ教育研究所を学内に設置すべく、提携企業、外部コンサルタント、専門人材との定期的な情報・意見交換会を持って地場企業との関係づくりを進めコーオプ教育の安定的な質の向上を図ることを目的に各組織と調整を進めているが、この研究所に知識や経験を蓄積し、その知見を社会に発信していくことになる。

■課題と今後の可能性

コーオプ教育は、学生サポートと企業との密な連携なくしては成り立たない。各役割を担うフットワークと熱意ある人材が不可欠となる。大学、担当教員・専門職員、受け入れ企業の協力体制が互いの信頼関係を生み出し、そのコミュニケーションを学生が肌で感じることが、学生のやる気を引き出し、学修を勇気付ける。大学と企業、教職員と受け入れ現場担当者、そして学生の3者のコミュニケーションを「教育」という情熱でつなぎ、活性化させ続けることが、常に、大きな課題となる。この課題解決のために、担当教員の大学内、受け入れ関係者、学生への働き掛けに連続性が求められる。また、企業にとって納得感のある専門知識を教員は身に付けておく必要がある。こうした教員、そして教員をサポートする専門人材を配置できるかどうかが最大の課題である。同時に、これらの人材を育成していく仕組みの考案もこれからの課題である。

コーオプ教育に理解を持ってもらう社会活動や企業開拓の課題も小さくない。コーオプ教育について情報を持つ企業、団体は、まだまだ少ない。本校の心意気としては、産学連携キャリア創造コースを成功させ、その成功プロセスを多くの人たちに知ってもらえることがコーオプ教育の唱道活動になると信じている。

私たちの取り組みは、まだ緒に就いたばかりである。たくさんの難問が見えてきている。それらを乗り越える先に、コーオプ教育が多くの人に認められ社会に広く定着する姿があると信じている。本校は、その先頭に立ち続けたい。

1 年後期終了時に企業様をお招きした成果発表の様子
*1:
FD は、ファカルティ・ディベロップメント。大学の教育の内容および方法の改善を図るための教員の組織的な研修等の略。SD は、スタッフ・ディベロップメントの略。管理運営や教育・研究支援までを含めた、教職員の資質向上のための組織的な取り組みを指す。
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