巻頭言

社会が直面する課題克服に向けた実中研の挑戦

公益財団法人実験動物中央研究所 理事長 野村 龍太

写真:公益財団法人実験動物中央研究所 理事長 野村 龍太

2022年4月15日

  • Twitterを開く
  • Facebookを開く
  • LINEを開く
  • 印刷ボタン

皆さんは実中研という呼称を耳にしたことがある方もおられるかと思いますが正式名称は公益財団法人実験動物中央研究所といい1952年に設立された動物実験を基盤とし医学、医療、創薬を通じて人類の健康と福祉に貢献することを目的とした民間の研究所です。

実験動物の開発や共同研究などにより、日本の医学研究の基盤を支えてきているとして内閣府より日本医療健康開発大賞を2020年1月に総理官邸でいただきました。一方で、世界最先端の実験動物の開発、実用化を通じて世界の製薬企業、大学、研究機関での最先端医薬品の開発や医療技術の開発に貢献しています。実中研は民間の公益財団であるために運営費用を自ら作り出す必要があり、また、われわれは研究成果を事業化して世の中の皆さまに使っていただいて初めて公の益になると考えており、以前より研究成果を企業にライセンスし、彼らが世界中に販売することによりそこからロイヤリティーを得ていくビジネスモデルが順調に機能しています。

また、実中研の大きな目標として世界標準システムを作ることを進めています。昨年、開発から35年かけて低分子、中分子医薬品の新薬申請に必ず実施しなければならないがん原性試験用の動物rasH2マウスがICH(医薬品規制調和国際会議)のS1Bという部会が出したガイドラインに具体的な名前が記載され、FDA(アメリカ食品医薬品局)、PMDA(医薬品医療機器総合機構)も認める世界標準システムになりました。10年以上前からWHOのポリオ撲滅世界プログラムで使用されている生ワクチンの安全性検定用のPVR-21マウスシステムに続きました。

現在は超免疫不全NOGマウスをベースにした免疫系や血液、肝臓などを臓器ごとのヒト化した世界にないヒト化マウスシステム作りを行っております。オプジーボ、キイトルーダ等の最先端がん免疫薬の開発や、PDXシステム用マウス、再生医療用細胞の安全性試験等ではこれらの動物が一般的に使われるようになってきています。さらに新たに肺をヒト化したマウスの開発を開始し、コロナウイルスをはじめ新型の感染症の研究に役立つマウス作りも始めました。さらにはアルツハイマー病のモデルとしての遺伝子改変マーモセットや無菌マーモセットなど、世界中の他でやっていない研究開発、実用化を進めていきます。また、世界最強磁場の11.7テスラ―22㎝口径の動物用MRIを既に発注しており、最先端の動物実験システムの構築も進めています。

今後は実験動物開発技術を応用し、細胞分野への展開、最先端技術との融合などにより動物実験に限らず世界最先端の前臨床システムを構築してまいります。

私どもは限りなく産業界に近い公的研究機関でありますが、世界中の学、官とも大変深く関係を持っています。思いっきり尖(とが)り、世界最先端を目指し、その成果を日本発の技術として世界中に広めていくとともに広く世界中のパートナーと協業を進めていく所存でおります。引き続きご支援、ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。