巻頭言

産学官連携のエンジンとしての大学

岩手大学 学長 小川 智

写真:岩手大学 学長 小川 智

2022年3月15日

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岩手大学の校是が「岩手の“大地”と“ひと”と共に」であることからも、岩手県における産学官連携が、30年前となる1992年のINS(岩手ネットワークシステム)発足に端を発し、極めて強固な連携関係にあることを理解いただきたい。そこで築かれた地域社会との関係基盤があったからこそ、2011年3月の東日本大震災の際には、いち早く被災地に入り教職員一丸となって復興支援活動に貢献することができたと考えている。さらに昨今では新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大が、これまでに経験のない「未知の常態」とも言うべき日常をもたらし、われわれの生活に大きな制約を及ぼしている。執筆の時点ではワクチン接種による集団免疫獲得の段階に入っているが、岩手県では産学官の連携により、滞りのない対策・対処がなされている。今後は元に戻るのではなく「新たな常態」を受け入れての社会活動を営むことになるであろう。

そのような状況下でも岩手大学は、学術文化の創造と幅広く深い教養と高い専門性を備えた人材の育成により、地域社会の文化の向上と国際社会の発展に貢献していく責務がある。そこで10年後の2030年を見据え、目指すべき方向性を示すものとして「岩手大学ビジョン2030」を策定・公表した。ビジョン策定に際し、岩手大学が地方国立大学としての使命・役割を再認識し、地域における高等教育機関・中核的学術拠点としてのセントラルドグマ(中心命題)を明確にする必要がある。卒業生である宮沢賢治の精神「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」を受け継ぎ、誰一人取り残さない持続可能な社会の実現と予測不能なVUCA時代を切り開く強靭(きょうじん)でしなやかな人材を育成し、社会に貢献していくことをセントラルドグマとした。すなわち2030年の岩手大学は変化する社会・予測不能な時代において、レジリエントな人材を育成し、その人材がターゲットである「産業振興」「次世代育成」「食糧問題」「環境問題」「安全・安心」「地域振興」などで活躍し、社会に貢献することを目指す。そして『岩手大学は、よりよい未来を創造する「地域の知の府」「知識創造の場」として、地域に頼られそして尊敬され愛される大学となる』。現在「共考と協創(共に考え、協力して創る)」を行動規範とし、岩手大学総体としてビジョン実現に向かって邁進(まいしん)している。ビジョン実現の取り組みの一例として2021年6月に「いわて高等教育地域連携プラットフォーム」を設置し、岩手県における高等教育をキーワードに、地域に貢献する優れた人材の育成・地域への還元や高等教育機関の専門性や特色が生かされる地域づくりについての議論を行う場をスタートさせた。関係する21団体がそこで共有した課題を各団体が随時連携し、また必要に応じてプラットフォームの枠組み全体を活用して、効果的に解決することを目指していく。今後の岩手大学の活動に注目いただきたい。