巻頭言

開発研究に必要なのは---?

筑波大学 学長 永田 恭介

写真:筑波大学 学長 永田 恭介

2022年2月15日

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初夢を見た。

カーボンニュートラルを掲げる官と、ゼロカーボンのエネルギー生産手段をわれ先に実現したい皮算用の民と、非線形性と非平衡性に関わる謎を追いかける学が協働する夢である。常温核融合システムの開発とその商用化の話であった。

こうした産官学連携に必要なことの一つは、2000年代前半から提唱されたオープンイノベーションというムーブメントである。自前開発一辺倒だった企業が自社以外の力も借りて、事業開発の効率とスピードを上げるモデルである。研究資金を求める大学の方策にも合致し、官の競争的資金への企業の参入を求める施策などもあり、大学への民間資金の導入が拡大してきた。日本の大学全体では、2015年からの5年間で、民間企業からの資金流入額が1.55倍に増大した。

産学共同研究において、学は自分のシーズの社会実装を全面に出してきた。開発研究が狙うのは、今現在の顕在化しているニーズのみならず、社会へのサービスとそれを通じた事業に結び付くニーズである。社会や企業のニーズに則した研究、すなわちニーズドリブン型共同研究が求められている。そのために、レガシーな手法のみでは変化に対応することは困難であり、米国西海岸のデザイナーが発案した手法であるデザイン思考の手法が組み合わされるようになってきている。さらに、本学ではSF思考という新しい未来予測の研究も進めている。関係者でSF小説を書き上げて未来像を顕在化する手法である。

大学の研究成果を迅速に社会実装するために今後ますます重要になるのは大学発ベンチャーである。既存の企業との協働とは異なり、大学の研究成果を直接社会実装できる重要なプレーヤーとなる。社会課題の解決に向けて、官の支援と、企業と大学、そこに大学発ベンチャーを加えて、資金と人の循環を進める新たなエコシステムの構築を進めることが肝要である。このベンチャーエコシステムを推進することにより、持続的な大学発ベンチャーの創出とニーズドリブン型共同研究もさらに加速化し、新たな産官学連携が生まれるものと考えている。

最後に産学連携論文が重要である証拠を示しておく。デジタルサイエンス分野で活躍されているメリーランド大学のBen Shneiderman博士と議論をした際に、興味深いデータに触れることができた(その一部は、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 115, 12590 (2018))。それは、米国のトップ六つの私立大学、六つの州立大学、さらに英国のトップ6大学から発表された論文の引用数について、著者の組成別の比較を行ったデータである。全てにおいて、単著者論文<機関内共同研究<国内共同研究<国際共同研究<産学共同研究となっていた。調べた限りの日本の大学では、東京大学、京都大学、筑波大学の順で上記の傾向であり、他の大学では産学共同研究<国際共同研究となっていた。

産官学連携に必要な方策や効果などについて述べた。しかし、本当に大切なのは、実は夢を見て夢を持つことなのだと思う。いかがだろうか?