視点

埴生の宿

北陸先端科学技術大学院大学 産学官連携本部 副本部長/産学官連携推進センター長 山本外茂男

2022年1月15日

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いよいよ定年退職のその日が近づいてきた。

能登半島にいながら、小学4年生の親子バス旅行で初めて海の広さを見た。根っからの山ザル育ちだったが縁があり海を越え遙か大地に立った。

東アフリカ15カ国でのミッション、トルコの大地震復興支援活動と言葉、文化、習慣、宗教などの違いに困惑しながらも異国の人々と汗を流し語り合った日々が懐かしい。皆が同じ明るい未来を目指していた。

文部科学省産学官連携コーディネーターを経験した。地区会議や全国会議では必ず夜遅くまで、議論の杯を交わした。産学官はもとより、天下国家、歴史、哲学、科学など様々な知識と経験に裏付けされた言霊に心揺さぶられた。知識や経験より行動に駆り立てる熱意の大切さを教わった。

好奇心が未踏の世界へ誘い続けた。共に語り、共に汗を流し、共に杯を交わした仲間の存在はかけがえのない人生の宝であり、心の宿である。

取るに足らない小さな変化しか起こせなかったもしれないが、次の仲間がつないでいってくれれば、いつか大きな変革が達成されると信じている。

11軒の茅葺き屋根が並ぶ山里に、今も埴生の宿が残っている。そして、記憶に深く刻まれた心の宿をこれから何度も訪ね続けるだろう。全ての出会いに感謝しかない。