国立の研究機関による技術支援

全国各地の多様なニーズから豊かな新技術をつくる
国立研究開発法人科学技術振興機構

国立研究開発法人科学技術振興機構 産学連携展開部 地域イノベーショングループ 丸本 萌

2021年10月15日

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国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)は、競争的研究費の配分機関として、産学連携・技術移転の支援を行っている。本記事では、中小企業にも多く活用されている技術移転支援プログラム「研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)トライアウト」、および全国各地に駐在し、支援制度の活用についての相談対応や、研究開発課題の掘り起こしを行うJSTの専門人材「マッチングプランナー」について紹介する。

■JSTの技術移転支援プログラム「A-STEP」

JSTは、科学技術・イノベーション基本計画に基づき、国の目標に基づく戦略的な基礎研究、および全国各地の大学等研究機関の研究成果の社会還元に向けた技術開発について、主に研究開発テーマを公募し研究費等を支援することにより推進している。

研究成果の社会還元を目的とする事業の一つが、産学が連携した研究開発による「技術移転」を促進するプログラム「A-STEP」である。A-STEPは、産業界が目を付けた「新技術の基となる可能性を秘めた研究成果」について、その新技術の実現可能性検証や事業化に向けた研究開発を産学連携で実施することを、JSTが支援し、社会還元に結び付けていくプログラムである。

研究機関から企業への技術移転においては、①企業がその可能性に目を付け、実現可能性を確認できれば、②本格的に共同研究開発に乗り出し、③企業が主体となって製品化に向けて技術を整えていくというプロセスが一般的である。A-STEPは、表1の通り、研究開発の段階や主体となるプレーヤーに合わせた複数の形式があり、技術の特性や開発の状況に合わせて適するものを選んで研究開発をステップアップできるよう設計されている。また、多種多様なニーズに対応するため、「世の中で必要とされる、新しい技術」であれば技術分野は問わない*1

表1 研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)支援メニュー
表1

■はじめの第一歩「トライアウト」

技術移転に向けて、まずは、「企業がその技術に注目していながらも、実用化に向けてはエビデンスが不足している状態」を打開することが必要である。そこで、すでに共同研究開発を行っているプロジェクトの支援にとどまらず、その前段階として、「技術の実現可能性を検証する」ためのリスクの大きい試験研究について支援を行うためのメニューが「トライアウト」である。

トライアウトは、「技術の実現可能性の検証」段階を対象として、研究者が中心となって行う試験研究を支援する。この成果を元に企業が技術の実現可能性を判断することで、技術開発のステージが本格的な産学共同研究開発へとステップアップすることを期待している。リスクの大きい研究開発をJSTが支援することで、企業の規模にかかわらず、全国各地の多様なニーズに対応する技術の社会実装を目指すことが可能となる。

トライアウトが対象とする技術は、必ずしも大企業が経済的に大きなインパクトを与えるようなものだけではない。地域の特色や状況によって様々な課題があり、解決が望まれている。これに対応する新技術はユーザーから直接的に求められ、社会的な意義を持つ。一方、異なる地域で類似のニーズに直面していることも多い。地域特有のニーズを解決する技術が、日本中、世界中で同様のニーズを抱える地域に展開できる可能性もある。多様なニーズに対する有用な技術を広く社会実装につなげることがトライアウトの狙いであり、全国各地の中小企業から、イノベーションにつながる様々な研究開発課題が提案されている。

図1および図2は令和2年度公募で採択した課題のデータである。

図1
図1 A-STEP トライアウト 令和2年度公募採択課題 研究機関の所在地域別割合
図2
図2 A-STEP トライアウト
令和2年度公募採択課題 ニーズ元企業の規模別割合

図1の通り、採択課題の研究機関の所在地は各地域でシェアを分け合っており、全国各地で実施されている。また、図2の通り、ニーズ元企業は中小企業*2の割合が高く、企業規模を問わず利用されていることが分かる。

具体的な技術についての説明はここでは割愛するが、前身となるプログラムを含め、これまでに多くの「地域特有のニーズ」由来の技術を支援している。具体的な例については、ホームページ**1にある成果事例をご覧いただきたい。

■JST地域の顔「マッチングプランナー」

「JSTマッチングプランナー」は、ニーズや研究成果(シーズ)から研究開発課題を掘り起こす、JSTの専門人材である。日本全国を、北海道・東北、関東甲信越・北陸・静岡県、中部・近畿、中国・四国、九州・沖縄の五つのブロックに分け、各地に計22人*3が駐在し、企業や大学等の研究機関、自治体、金融機関など、様々な機関と直接コンタクトを取り、地域のネットワークの中に入って活動している。

マッチングプランナーは主に、A-STEPトライアウトをはじめ、JSTの支援制度の活用についての相談に対応している。他機関の公的支援制度についても情報収集などを図っているため、技術開発の状況に合わせて様々な支援制度を紹介することが可能である。さらに、全国に点在するマッチングプランナーのネットワークを活用して、広域での産学連携などについてもサポートすることができる。

前項で、A-STEPトライアウトの狙いは「多様なニーズに対する有用な技術を広く社会実装につなげること」と述べた。マッチングプランナーは、地域のニーズを敏感に察知できる。多様なニーズとその重要性に着目し、研究開発課題の「掘り起こし」ができることで、A-STEPトライアウトの研究開発課題の多様性が生まれているのである。

地域のニーズを解決したい、研究成果(シーズ)を活用したい、新技術を開発したい、「でも…」とお悩みであれば、ぜひJSTマッチングプランナーにお声掛けいただきたい。ホームページ**2にて、マッチングプランナーを紹介している。代表窓口から各地域の担当マッチングプランナーにつなぐことが可能なので、お問い合わせいただければ幸いである。

支援制度探索についてマッチングプランナーへ相談する、技術移転のリスクヘッジにA-STEPトライアウトを利用する、状況に合わせてA-STEPや他の事業を利用するなど、企業や研究機関の皆さまにJSTの制度をフル活用していただき、新技術の社会実装が加速されることを期待している。

*1:
医療に特化した研究は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が扱っているため、本事業では対象外
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*2:
資本金3 億円以下の企業、または、従業員数が300 人以下の企業として集計
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*3:
2021 年8 月現在。最新のマッチングプランナー一覧はホームページ**2に掲載
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参考文献

**1:
(ホームページ 研究開発成果事例の紹介)
・研究成果最適展開支援プログラム A-STEP: 研究開発成果 (A-STEP から生まれた研究開発成果)
・研究開発成果| A-STEP 機能検証フェーズ(旧・地域産学バリュープログラム)。
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**2:
(ホームページ マッチングプランナーの紹介)
研究成果最適展開支援プログラム A-STEP: トライアウト:マッチングプランナー
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