巻頭言

真の復興を追及して

陸前高田市長 戸羽 太

写真:陸前高田市長 戸羽 太

2021年9月15日

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東日本大震災により、全市民の7パーセント以上が犠牲となるなど、壊滅的な被害を受けた岩手県陸前高田市は、今日までそのやりきれない気持ちや後悔を力に変え、復興に取り組んできた。

「真の復興」とは何なのか? 津波で壊滅したまちを「安全なまち」に作り直すことと同時に、人口の減少・少子高齢化への対応、新しい産業展開による雇用の場の創出、公共交通の脆弱さへの対応など、震災以前から山積する課題を少しでも解決に近づけることを強く意識しながらまちづくりを進めてきた。それが意味するところは、陸前高田市が持続可能なまちとなるべく未来への可能性を探求すると同時に、生き残りをかけた復興であるということだ。

復興が本格的に始まるのとほぼ時を同じくして、2014(平成26)年に安倍内閣は「地方創生」という方向性を打ち出した。被災前の陸前高田市であったら、課題解決に向けた踏み込んだ取り組みを進めることは容易ではなかったと思われる。

なぜならば、地方中の地方の自治体において、自分たちの知恵や英知を結集しただけでは、現状の課題克服や新しい取り組みを進めることには限界がある。

従って、理想やアイデアは示せても、どこかに諦めがあるのが「地方」なのだと思う。しかも、「地方」の定義も曖昧で、企業などからすれば県庁所在地の市など大きな地方都市に目が行きがちになるのは当然であり、陸前高田市のような小さな自治体が産学官の連携を進めていく枠組みを作ることさえ実際には難しいのが現実である。

震災は我々から多くのものを奪い去った。

しかしながら一方で、多くの方々との出会いをもたらした。

震災がきっかけの出会いであるから、ある意味皮肉みたいなところもあるが、現実には市民を前向きにし、若者に希望を与える出会いであることは間違いない。

この出会いこそが、産学官連携の枠組みを作り、地方創生に取り組む大きな原動力となっている。

例えば、東京大学や大阪の菓子メーカーサロンドロワイヤルと連携して始まった「ピーカンナッツプロジェクト」や、大手飲食チェーンのワタミや東京農業大学との連携による「農業テーマパークオーガニックランド構想」。

JT(日本たばこ産業)や農協、商社、地元農業者などと取り組んでいる「地域ブランド米たかたのゆめ」、立教大学・岩手大学とともに空き校舎を活用し全国の大学や海外の大学、地域の方々をつなぐ「グローバルキャンパス」の運営など、それぞれ「産」・「学」・「官」の強みや持ち味を生かした連携が図られており、未来に向けての可能性を市民が感じ取ってくれているものと思う。

今後は、これらの取り組みにSDGsの考え方を加味する中で、ビジネスとして発展させながら地域の課題解決につなげることが求められており、最終的に「真の復興」を果たすことが我々の責務だと考えている。