シリーズURAの質保証制度

第6回 研修科目の概要

筑波大学 馬場 忠
RA 協議会(金沢工業大学大学院) 高橋 真木子
京都大学 学術研究支援室 白井 哲哉
横浜国立大学 大学戦略情報分析室 矢吹 命大

2021年7月15日

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本シリーズのこれまで5回の連載では、制度の検討に至る背景と、制度の概要、そして研修と審査の位置付けについて述べてきた。この6回からは、研修にフォーカスし、それぞれの科目の考え方、概要、そして身につけてほしい知識や能力について簡単に紹介する。

本シリーズで紹介するのは三つある研修レベルのうち、FundamentalレベルとCoreレベルの二つである。これら二つのレベルは、Fundamentalレベルの受講後にCoreレベルを受講する関係である。いずれのレベルも10科目群15科目で構成されている。今回は、科目群A「研究機関とURA」の「A1:大学等の研究機関」と「A2:日本のURA」、科目群B「研究力分析とその活用」の「B3:科学技術政策概論」と「B4:研究力分析とその活用」の4科目について紹介する。なお、執筆担当者は教材作成者あるいはシラバス作成者である。

■A1:大学等の研究機関(担当:馬場忠)

■当該科目の考え方

Fundamentalレベルでは、⼤学等の研究機関でURA業務を行うための基礎知識を説明する。次に、CoreレベルではURA業務の高度化に関連する重要な事項を選択して解説する。⼤学等の研究機関に勤務するURAとして、これらの情報を深く理解し自分自身の考えを持つことによって、高いコミュニケーション能力の涵養(かんよう)につながればと考えている。また、そのことはURA業務の質向上や組織の研究活動活性化に必ず寄与すると思われる。

■当該科目の概要

Fundamentalレベルでは、わが国の⼤学がどのようにして⽣まれ、どのような根拠で設置されているか、どのような役割(使命)を課せられているか等の⼤学の根底にある本質を述べる。また、研究とは何か、⼤学の運営と財務、教職員の職務、⼤学以外の公的研究機関等についても紹介する。これらの解説を通して、大学の存在意義や使命、運営形態の基本、および公的研究機関等が理解できると考えている。

Coreレベルでは、URA業務の高度化のために、(1)激変する社会状況の中で構築される大学関連の政策や施策、(2)大学に対する評価のされ方、(3)社会に対して研究機関のあるべき姿に関連する国際的な宣⾔と⽬標等に関して、特に重要でタイムリーな事項を選択して述べる。これらの解説を通して、URA業務を行う際に、⼤学を取巻く諸々の政策・施策を理解し、加えて大学に対する外部の評価、大学と社会のあるべき関係を意識できるようになることを期待する。

■当該科目で身につけてほしい知識や能力

大学は未来のための社会資産であり、新しい人材やイノベーションが生まれる源泉である。したがって、大学の組織構成やガバナンス等を知ることは、大学の存在意義や使命、研究の位置づけを理解するために必須である。大学以外の研究機関に関しても同じことがいえる。例えば、外部研究資金の獲得業務に技能(ノウハウ等)は大切であるが、もしそれだけに終始すると、当該業務の根底にある最も重要な目的や意義を知らないままの近視眼的な小手先業務となり、組織の持続的な研究発展につながりにくい。外部資金獲得の重要性が理解できれば、研究組織でのURAの必要性も認識できるはずである。

■A2:日本のURA(担当:高橋真木子)

■当該科目の考え方

本科目は、科目群A「研究機関とURA」の二つ目の科目にあたり、URAという職種の必要性、位置づけ、職種が生まれた背景などを概説する。⼤学等の研究機関に勤務するURAとして、これらの理解を通じ自分自身の役割を客観的に理解する基盤を作るという意図に基づくもので、FundamentalレベルとCoreレベルはいずれも、実践的な知識というよりも、URA業務の従事者は一度は聞いておいてほしい、そして必要に応じ思い出してほしい事項を整理して構成したものである。

■当該科目の概要

Fundamentalレベルでは、URAの業務を理解するための前提として、国の主導で進められてきたわが国のURA整備の経過と現場の解説をする。そしてこれまでの整備によって、URAの業務とスキルがどのように考えられているかについて述べる。また、機関の経営者層、研究者、事務職員、URA類似職(産学連携コーディネーターなど)との関係を示す。

Coreレベルでは、個人レベルのみならずURA部署を超えた自立的な人材として発展し、研究活動の活性化や組織の機能強化により一層貢献するために、自身の将来のキャリアを考える機会とする。そして、キャリアアップの一助となる自身の質の向上に資するURA認定制度について概況する。また世界のURAとの交流のため、各国のURA組織と業務の概要にも触れる。

■当該科目で身につけてほしい知識や能力

まずFundamentalレベルの達成目標は、URAとして押さえておいていただきたい三つの事項の理解である。具体的には、1)URAがわが国の科学技術政策の中でどのように期待され、どのように整備されてきたか、2)URAの業務とスキルの全体像、3)URAとして他の職種の人たちと連携して業務に携わるため、経営者、研究者、事務職員、URA類似職の業務との関係性の理解である。

Fundamentalレベルが重要な基礎知識の理解であるのと比し、Coreレベルの達成目標は、より能動的な行動に結びつくことを目指している。すなわち、1)URAとして、将来のキャリアを自身で描き、目標となすべきことを把握する。2)URAの認定制度を理解するとともに、認定に向けてなすべきことを把握する。3)海外のURAの業務を理解することで、国内外の関係者との交流を円滑にすることができる、等である。

■B3:科学技術政策概論(担当:白井哲哉)

■当該科目の考え方

科学技術政策は、資金や規制などで大学や研究機関における研究活動に様々な影響を与えている。URAは大学・研究機関の機能強化という科学技術政策上重要な役割を担うとともに、研究の現場と科学技術政策とをつなぐ役割が期待されている。本科目では、URAがそのような役割を果たす上で必要となる基本的知識とスキルを身につける内容とした。

科目の設計においては、政策形成に関する政治学や行政学の知見を前提とはせず、かつ限られた時間内で、基本的知識やノウハウを身につけられる内容となるよう留意した。そのうえで、Fundamentalレベルについては、科学技術政策に係る組織や制度、変遷と現状についての基本的な情報や知識を身につけてもらうことを目指した。Coreレベルでは、科学技術政策に係る動向について調査分析を行い、かつ政策形成プロセスに情報提供や意見表明を行う場合に必要とされるノウハウを身につけてもらうことを目指した。

■当該科目の概要

Fundamentalレベルでは、まずURAが科学技術政策をなぜ学ばなければならないかという本科目の背景となる状況について説明し、次に科学技術政策の構造・行政組織・ファンディング組織等といった科学技術政策に係る機関とその役割を、予算・競争的資金制度といった具体的な事項を踏まえて紹介する。最後に現在の科学技術・イノベーション政策における基本戦略である、科学技術基本計画(第6期からは科学技術・イノベーション基本計画)の変遷と概要についての基本情報を提供する内容とした。

Coreレベルでは、URAが科学技術政策にどのように関わることを求められるか、どのようなアクションが必要となるかを説明し、それらを踏まえた上で、科学技術政策において検討・議論されている動向についてURA自身が情報収集し分析するノウハウを身につけてもらう内容とした。講義の方法としては実際の政策に関する文書を踏まえて一連のプロセスを体験する形をとり、科学技術政策の形成プロセスにURAが情報提供や意見表明をするために必要な基本的知識を提供する。どのような方法や経路があるか、また適切と思われるタイミングなどを学ぶ内容とした。

■当該科目で身につけてほしい知識や能力

政策形成のプロセスは、多くの関係者が関与するダイナミックなプロセスである。そのため、本科目で身につけた知識やノウハウを土台に、普段から様々な関係者とネットワークを作ってもらいたい。それが科学技術政策において生きた情報を獲得し、そしてURAから情報を提供する上でも役立つ。

■B4:研究力分析とその活用(担当:矢吹命大)

■当該科目の考え方

本科目は科目群B「研究力分析とその活用」に区分され、研究力分析に関する基本的な事項の理解と基本的な分析手法について身につけることを目的としている。Fundamentalレベルにおいては、研究力分析業務を担当しない者も含めた、すべてのURAを対象とし、基本的な用語を理解するとともに、研究力にかかる情報源について学ぶことを通して研究力の調査分析における基本的事項を身につけることを目的とした。Coreレベルにおいては、実際に研究力分析を担当する者を念頭に、研究力分析作業に着手することができるレベルの知識、技法を身につけてもらうことを目的とした。

■当該科目の概要

Fundamentalレベルでは、研究力分析を行う目的を確認し、研究力分析活動が単なるデータ処理ではなく、大学経営、研究戦略上重要な取り組みであることから説明を始める。その上で、政策上要請される研究力関連指標、主要な大学ランキングにおける指標を概観し、分析によく用いられる各種データベースと、そこから得られる書誌データや代表的な定量指標を紹介するとともに、その利用上の注意点を指摘する。これらの説明に加えて、研究評価に関するサンフランシスコ宣言(DORA)やライデン声明に触れ、定量指標の限界と利用における注意を喚起し、適切な分析活動を行う姿勢を共有するものとした。

Coreレベルでは、実際の分析活動を行う基本として、分析活動の目的を共有し、目的に応じた分析手法を選択する重要性を確認する。その上で、特に文献データベースから導かれる各種研究力関連指標の詳細を説明した上で、実際の分析に必要なデータセットの作成方法やその際の注意点を説明する。基本的な論文関連指標に加えて、科研費や産学連携、特許関連データの利用、インパクトデータについての論点を示すとともに、変わりつつある研究成果の発表のあり方についても言及するものとした。

■当該科目で身につけてほしい知識や能力

受講者には、研究力分析結果として示される各種データ、指標の意味を把握し、実際に研究力分析を担当する場合には、基本的な作業に着手できるようになることが期待されている。本科目において説明される内容は基本的な部分にとどまるが、分析手法は科目中で紹介されたものにとどまらない。本科目で言及されたように、定量指標には限界があることを踏まえ、慎重な態度をもって各々の活動のなかで、さらなる分析手法やその活用について学びを進めていただきたい。