巻頭言

産学連携によるこころを動かす「社会交流空間づくり」

株式会社丹青社 代表取締役社長 高橋 貴志

写真:株式会社丹青社 代表取締役社長 高橋 貴志

2021年7月15日

  • Twitterを開く
  • Facebookを開く
  • LINEを開く
  • 印刷ボタン

株式会社丹青社は人と人、人とモノ、人と情報を結ぶことで、心を動かす「社会交流空間づくり」に取り組んでいる。1946年創業以来、総合ディスプレイ業を生業にそのフィールドを広げてきた。商業施設の装飾からスタートし、博物館の展示を手掛けるようになり、1970年大阪万博のパビリオン作りなどの機を捉え、技術とクリエイティブに磨きを掛けてきた。社会の変化やテクノロジーの進化に対応し、空間創造プロフェッショナルであり続けるためには、常にイノベーションを推進することが求められ、産学連携による研究や実験にも挑戦してきた。

2002年秋、当社の寄付により東京大学総合研究博物館にミュージアムテクノロジー寄付研究部門が発足。国内初の産学連携ミュージアム・シンクタンクとして、次世代型ミュージアムを模索するにあたり、当社エグゼクティブ クリエイティブディレクター(現職)の洪恒夫が特任教授を務め、実践的な研究活動に参画してきた。

多様な体験を展開する場である「空間」、そしてコミュニケーションメディアである「展示」について、実験的な要素も加えながら、いくつものミュージアムの具現を試行してきた。博物館展示室における、空間デザインへのさまざまなチャレンジはもちろんのこと、インターメディアテク西野館長が構想した「モバイルミュージアム」を体現すべく、展示をコンパクトなパッケージに仕立て「どこにでも持ち出せるミュージアム」も具現した。これは広く国内外に文化的な資産を提供するツールにもなった。

また、展示や情報を「リアル」に持ち出すことにとどまらず、インターネットを用いて離れた場所に「バーチャル」で展開することも試行した。「スタジオ型ミュージアム」と名付け、複数の拠点をネットでつなぎミュージアムのレクチャーや質疑のコミュニケーションを行った。発想力、技術力をもってすれば、さまざまなスタイルで、人々とミュージアムの接点を生み出す機会創出も可能となる。

こうした産学連携による取り組みから生まれたコンセプトは、文化施設のみならず幅広い分野の空間にも展開することができている。企業や自治体が事業展開する、商業施設やエンターテインメント施設、教育施設などのプロジェクトでも発展的に具現化されており、今後もさらに可能性は広がると考える。

コロナ禍の今、コミュニケーションの在り方が一変した。また、テクノロジーも加速度を増して進化していることから、従前に捉われずに挑戦する姿勢が重要となっている。一方、人は根源的にはフィジカルな体験を求めており、リアルの空間が持つ価値は変わらないであろう。 

今後は、これまで培ってきた「体験をデザインする力」を生かし、リアルとバーチャルの融合による空間価値を実現し、新たな「こころを動かす社会交流空間づくり」に挑戦していく。そのためにも、産学連携による異分野のプロフェッショナルとの協働で生まれる成果を、最大限に活用していきたい。