巻頭言

ヘルステック・デバイスのものづくり拠点への挑戦

株式会社アイカムス・ラボ 代表取締役 片野 圭二

写真:株式会社アイカムス・ラボ 代表取締役 片野 圭二

2021年6月15日

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当社が所在する岩手県は、「少子高齢化、過疎化、人口減少、人口流出」など、日本の各地方が直面する重要課題の最たる地域であり、若者たちを定着させるための「働きがいと経済成長(SDGs8)」が必須で
ある。そのため、私は、当社を含む地域中小企業群が魅力ある企業に成長し、地域課題の解決のために貢献していくことを目標に活動している。

当社は、2002年大手電機会社の盛岡工場閉鎖に伴い退職した3人で2003年に設立した岩手大学発ベンチャー企業であるが、その当時はまさに、製造工場の海外移転による地方の空洞化が始まった時代であり、会社理念として地域で研究開発から量産まで行う開発型ものづくり企業を目指した。

経済産業省の支援を受けて、コア製品である超小型プラスチック歯車(一つの歯の大きさが約0.1mm)による不思議歯車減速機を開発し、「光学機器・産業機械分野」を中心に各種製品に搭載されてきたが、さらなる高付加価値を目指して「ライフサイエンス分野」に事業を展開している。

2011年の東日本大震災を機に、当時岩手県災害対策本部で医療班長として指揮した岩手医科大学の秋冨慎司先生と共同で、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の復興促進プログラムにより「救命救急用スタンドレス輸液装置」の研究開発に着手した。本開発は、災害現場だけでなく一般病棟や在宅での使用も可能とするため、新たなポンプの技術開発は難易度が高く、10年ほどの時間を要したが、2022年には製品を上市する予定である。自然災害が多発する中、災害現場はもちろん、高齢化社会における在宅医療にも有用な製品である。

2013年には、小型電動ピペット「pipetty」を自社開発した。昨今のCOVID-19の問題からPCR検査の効率化として期待されている。さらに再生医療の分野では、高品質な細胞を培養する細胞培養の自動化にも注力しており、2016年に採択された研究成果展開事業研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)では「かけ流し式細胞培養」の技術開発に成功し、現在はA-STEP企業主導フェーズのNexTEP-Bでこの技術をマルチウエル化することで市場拡大の研究開発を行っている。

盛岡市を中心にライフサイエンスの産業集積拠点を目指して、2014年には、東北の産学官金連携体である「TOLIC(Tohoku Life-science Instruments Cluster)」を設立した。TOLICは、地域のベンチャー企業が中心となり、企業が目指す事業を学官金で応援する「民間主導」の取り組みを特徴としており、現在25社46機関に発展している。また若者に刺激を与え将来の人材確保を目指し、地元高校生のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)、スーパーグローバルハイスクール(SGH)の活動支援や海外見本市派遣などの取り組みを共同で行っている。また岩手県は医療機器産業拠点形成のため2020年4月「ヘルステック・イノベーション・ハブ(HIH)」を設立し、現在当社を含むTOLIC企業10社が入居して連携して事業拡大を行っている。

地域創生が叫ばれる中、TOLICは、世界の「ヘルステック・デバイスのものづくり拠点」となることを目指して、科学技術・産業・人材育成の「共創の場」を作ることで、ベンチャービジネスや海外ビジネスで賑わう「働きがいと経済成長」の街づくりを目指している。