巻頭言

コロナ・パンデミック下で再認識したスタンフォード大学のリーダーシップ&スピード力と日本の課題

スタンフォード大学 医学部麻酔科 創薬医療機器開発研究所 所長 西村 俊彦

写真:スタンフォード大学 医学部麻酔科 創薬医療機器開発研究所 所長 西村 俊彦

2021年5月15日

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スタンフォード大学の優れた点はリーダーシップ、科学を信じ創出する力。今、必要な科学技術をしなやかに確実に社会実証できるスピード力だ。2020年、世界中がCOVID-19禍に翻弄された。2021年1月30日、世界の感染者は1億300万人、死者は223万人を超えた。米国はCOVID感染者2,610万人、死者44万人の世界最悪COVID-19受難国だ。中でもカリフォルニア(CA)州は感染者、死者、50州中最多だ。だが、スタンフォード大学は最悪のCA州の中央に位置しながら医療崩壊も社会混乱も起きていない。

2020年3月16日、スタンフォードのリーダー達は大学封鎖した。オンラインでShelter in Place(SIP)を一斉通達した。それはCA州知事の通達の3日前であり、ニューヨーク州知事の6日前だ。それ以降スタンフォードは今日までSIP継続中だ。教育はオンライン。研究もオンライン主体のハイブリッド。臨床も90%がリモートだ。1月末でのCOVID-19の入院患者は延べ1,446人、死者76人だが入院の中央値は4日、平均値は6日と非常に短い。

スタンフォードは昨年6月の段階でSIPが本年9月まで継続すると予測し大学運営計画を再編し我々に共有した。各学部で教育プログラムが再編され、研究はCOVID-19関連が通常研究に追加された。臨床研究も外部から産官学共同研究が追加された。Facebook、Google、Appleの支援やインフラを活用しフィールド調査、製薬企業とワクチン臨床試験、NIH、FDA、CDCと連携を強化した。UCSF、Johns Hopkins、Harvardなどと毎週のWebinarが日常となった。特筆すべきは情報更新の頻度と透明性だ。大学、学部、病院のリーダーから毎日定時に更新される。速さだけに重きを置かず精度も非常に高い。科学のみに拘泥せず世論も傾聴する。そのバランス感覚と透明性、信頼感がスタンフォードの真髄と再認識した。

CES2021もオンライン開催だった。ラスベガスで毎年開催される世界最大の情報震源地だ。SIP関連以外ではデジタルヘルス、デジタル機器、オンライン不動産事業などElectronicCommerce(EC)関連が話題だった。中心は欧米企業と中国企業だ。ECの実績は米中が牽引して来たが、2020年は特に中国が驚異的に飛躍した。スタートアップも企業もパンデミックに柔軟にデジタルトランスホーム(DX)し、人も考え方もトランスフォーム(HX)した。Zoom、SlackはもとよりSpotifyに刮目した。しかし、日本のプレゼンスは例年以上に希薄化しECも伸びていなかった。

米中に比し日本が今停滞する原因は少子高齢化が根底にある。DXの主体であるGenZやミレニアル世代の少なさとDX無縁の高齢者世代の多さだ。米中はDXに迅速に対応したが、わが母国はリーダーシップ、教育、研究、臨床、社会実証に至るまで精度に重きを置き過ぎる余りスピード力を軽視している。コロナ・パンデミックは終息に向かい漸減するが影響は2022年以降も継続する。まだまだウィズコロナだ。コロナで多くが変化・変革した世界で日本のV字復活の鍵は日本の科学・技術を再編成し少子高齢化研究とアマルガムを作り出すリーダーシップとスピード力だ。