シリーズURAの質保証制度

第5回 認定のための研修プログラムの概要

京都大学 学術研究支援室長 佐治 英郎
金沢大学 先端科学 社会共創推進機構 准教授 稲垣 美幸
大阪大学 名誉教授 池田 雅夫

2021年4月15日

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本シリーズのこれまでの4回の連載で紹介されてきたように、URAの質保証制度導入にあたって、文部科学省令和元年度科学技術人材養成等委託事業「リサーチ・アドミニストレーターに係る質保証制度の構築に向けた調査研究」**1および文部科学省令和2年度科学技術人材養成等委託事業「リサーチ・アドミニストレーターの認定制度の実施に向けた調査・検証」**2において、本制度の基本的な枠組みを設計し、それを具体化していくために必要な認定スキームと研修プログラムに関する検討が進められてきた。前者の認定スキームに関しては、その仕組みの概要と審査方法について前回(第4回)紹介した。今回は後者の研修プログラムの概要を示す。研修プログラムの具体的内容については今後紹介される予定である。なお、本稿では上記の事業における成果を中心に紹介するが、この質保証制度については現在も継続的に検討が進められているところであり、最終的には内容の詳細な部分で多少異なるところがあり得る可能性をお断りしておく。

研修プログラムの種類(レベル)

研修プログラムには、基礎的なレベルのものから高いレベルのものまで、順にFundamental、Core、Advancedの3種類のプログラムを設定している。各プログラムのレベルは下記の通りである。

  • ①Fundamental:URA業務上の課題の発見と解決を上司の指示のもとに行うことができる知識のレベル
  • ②Core:URA業務上の課題の発見と解決を自立的に行うことができる知識と理解力のレベル
  • ③Advanced:URA業務上の課題の発見と解決を主導的に行うことができる知識と理解力のレベル

URAの認定区分と研修プログラムの履修の関係

これまでの検討で、下記に示すように、URAに「認定URAに申請の可能性のあるURA」、「認定URA」、「認定専門URA」の三つの区分を設定し、それをURA質保証制度の枠組みの中に位置付け、その中で認定URA、認定専門URAを認定称号授与の対象とすることとしている。

本シリーズの第4回(前回)で記載されているように、今回の制度ではスキル=業績(経験あるいは実績)+業務遂行能力(知識・理解力と問題解決能力)としており、認定URA、認定専門URAとして認定されるためには、それぞれの区分に応じて相応のスキルの水準を満たしていることが求められる。研修プログラムはこのスキルの中の知識・理解力を学修することを対象としているもので、URAの各認定区分に応じたレベルのものがそれぞれ設計されている。すなわち、URAの認定区分と研修プログラムの履修の関係はFundamentalレベル研修の修了がCoreレベル研修の受講要件であり、Coreレベル研修の修了が認定URAの申請要件かつAdvancedレベル研修の受講要件、Advancedレベルの研修の修了が認定専門URAの申請要件となっている。したがって、Fundamentalは基礎的なレベルの内容で、これからURAになろうとしている人を含めて今後「認定URAに申請の可能性のあるURA」、Coreレベルは「認定URA」、Advancedレベルは「認定専門URA」にそれぞれ必要な知識・理解力の最低限を担保するものである(図1)。

図1:研修プログラムのレベル
図1 研修プログラムのレベル

研修プログラムのカリキュラムの内容

研修プログラムの編成にあたっては、本シリーズの第2回で紹介された文部科学省「リサーチ・アドミニスターを育成・確保するシステムの整備」事業において東京大学が作成した「スキル標準」**4で示された22項目のURA業務を土台にして、URA業務の現状を踏まえて、科目構成および各科目の内容を検討し、FundamentalおよびCoreレベルについては、表1に示す10科目群、15科目を設定した。FundamentalレベルとCoreレベルでは科目間でのつながりが分かるように科目群、科目名は同じであるが、二つのレベルでは内容の範囲や深さが異なる。

この15科目には「スキル標準」の業務内容は全て含まれており、さらに大学の役割、組織構成、大学での研究、わが国の科学技術施策、URAの位置付けなどのURA業務を行う上で基盤となる項目の設置、研究力の分析・評価、国際化等の項目の充実などが行われている。

表1 FundamentalおよびCoreレベルの科目一覧
表1:FundamentalおよびCoreレベルの科目一覧

これらの各科目の位置付け、各科目と学修対象となるURA業務の関係を図2に示す。図2の中の研修プログラムの左側の部分にある科目はURA業務の種類に拘わらず、URAとして必要な基盤的内容やURA業務として共通的に行われている業務に関する内容を身に付けるための科目であり、右側の部分にある科目はURA業務としてそれぞれ専門性のある業務に必要な内容を取り扱う科目である。また、縦軸はレベルを示しており、下から上に向かってレベルが高くなっている。学修する科目の適切な順序が矢印で示されている。すなわち、左下のFundamentalレベルの「1. 大学等の研究機関」、「2. 日本のURA」を最初に学修し、順次上の方向へ進み、その後右側の関連専門業務に関する科目を学修すること、そして、Fundamentalレベルを修了後、Coreレベルへ進み、CoreレベルについてもFundamentalレベルと同様の順序で各科目を学修していくことを基本とする。各科目の位置付けを理解して学修を進めていくことが効果的な業務遂行能力の修得につながる。各科目の具体的な内容は、紹介を予定している。なお、科目の内容とともに、研修プログラム自体も今後定期的に検証を行い、必要があれば改訂していく予定である。

図2:研修プログラムの各科目の位置づけおよび各科目と学修対象となるURA業務の関係
図2 研修プログラムの各科目の位置づけおよび各科目と学修対象となるURA業務の関係

Advancedレベルについては、URAや雇用者からのニーズ、当該専門業務区分の研修の対象となり得る教材シーズの有無(スキルの一般化や標準化という観点でのシーズの有無)、さらに当該専門業務区分の審査が可能な審査員数の確保という実効性の観点を踏まえて、研修が実施可能な区分から具体的に検討を開始し、現時点で、「大学戦略の企画立案」、「プロジェクト企画・運営」、「セクター間連携」、「知的財産管理と活用」、「医療系」の五つの専門業務区分を設定し、各専門業務区分の具体的な内容、科目構成について検討しているところである(本シリーズの第3回を参照)。Advancedレベルの専門業務区分は上記の三つの観点を踏まえ、必要に応じて今後段階的に拡大していく方針である。

研修プログラムの実施方法、修了要件

FundamentalおよびCoreレベルは全科目をオンライン(非同期・同期)で実施する予定である。また、1科目の時間は60分を基本とするが、90分の科目もある予定である。

また、科目ごとに受講修了後、確認テストを行い、8割以上の正解で当該科目を合格とする。各レベルの修了要件は、Fundamentalレベルでは全科目(15科目)での合格、また、Coreレベルでは、必ず合格しなければならない必須科目を設定し、合格必須の科目を含めて、全科目の8割以上(12科目)の合格を修了要件とする。確認テスト、修了要件の詳細については現在検討しているところである。

Advancedレベルの実施方法、修了要件については今後詳細を検討していく予定である。

今後の検討課題

URAの研修については、現在、日本のURAに関係する幾つかの団体において、それぞれ独自の研修プログラムが実施されている。また、URAが所属する大学や研究機関でも、それぞれ独自の研修プログラムが実施されており、URAの育成、質の向上に尽力され、それぞれ成果が挙げられている。これらの団体・大学・研究機関等で実施されている既存の研修が今回設計した研修と内容的に同等のレベルにあると評価できるものもあることから、これらの各団体などが実施している既存の研修の修了結果を本研修プログラムの修了結果とみなすことが可能と思われる。そこで、今後、各団体などが実施している既存の研修との読み替えについて検討することが一つの課題である。その他、教材の改善、確認テスト問題の精査、再試験、受講期間などの研修実施に向けた具体的な対応についても検討していく必要がある。

さらに、Advancedレベルについては既存の研修科目の読み替え以外に、教材の作成、研修の実施方法、修了要件などに関する事項を研修実施前までに決定していく必要があり、これも当面の課題である。

参考文献

**1:
金沢大学「リサーチ・アドミニストレーターに係る質保証制度の構築に向けた調査研究」報告書
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**2:
金沢大学「リサーチ・アドミニストレーターの認定制度の実施に向けた調査・検証」ホームページ
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**3:
文部科学省リサーチ・アドミニストレーター活動の強化に関する検討会「リサーチ・アドミニストレーターの質保証に資する認定制度の導入に向けた論点整理」
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**4:
東京大学「リサーチ・アドミニストレーターを育成・確保するシステムの整備」(スキル標準の作成)報告書
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