特集1地域発コンソーシアム

ニューノーマルの時代では場所の制約はなくなった
大学支援機構は、大学と国民との双方向のコミュニケーションを支援していく

一般社団法人大学支援機構 リサーチ・アドミニストレータ 小出 静代
一般社団法人大学支援機構 リサーチ・アドミニストレータ 橋爪 太

写真:一般社団法人大学支援機構 リサーチ・アドミニストレータ 小出 静代 写真:一般社団法人大学支援機構 リサーチ・アドミニストレータ 橋爪 太

2021年4月15日

  • Twitterを開く
  • Facebookを開く
  • LINEを開く
  • 印刷ボタン

一般社団法人大学支援機構(以下、大学支援機構)にとって2020年は大きな節目の年になった。大学支援機構は、大学クラウドファンディングサイト「Otsucle(おつくる)」*1において、2016年10月のサービス開始から3年11カ月となる2020年9月末時点で累計支援額が1億円を突破した。また、10月から新たな理事長を迎え設立当初からのコンセプト「全国の大学の経営合理化や資金調達、社会貢献のため」つまり、研究者へのオープンサイエンス活動(研究推進)**1支援を行う機関として再度走り出した。

大学支援機構の設立の目的は

大学支援機構は、全国の大学が抱える共通の課題を解決するために徳島大学の野地澄晴学長をはじめとする有志により設立された。

設立当時、国立大学法人は運営費交付金を約1%、継続的に削減されており大学運営が疲弊していた。一方で、国立大学改革プランが実施されており、各大学の機能強化を実現するための方策に数多くの取り組みが行われていた。少子化、国の財政状況の悪化などを理由に、当面の間、運営費交付金の削減は継続されることが予想されていた。しかしながら、継続的に経費を削減し続けることは困難であると考えられたため、この問題を解決するには、継続的に収入が増加するシステムを構築するしか方法はないと考えた。

大学支援機機構は、大学の外部資金を獲得するための事業を行うことと、ITの活用やシステムの共有などを行い大学の運営を助けるための仕組みを提供することを目指す組織として活動を開始した。大学支援機構は、研究費獲得とアウトリーチを支援するために様々な事業を開始した。

写真
一般社団法人大学支援機構の記者会見の様子、中央が理事長

大学支援機構の取り組み

私たちは5年前から大学のクラウドファンディングへの取り組みをサポートする業務を開始した。クラウドファンディングとは、一般的には中小企業などが新製品を開発・販売する際や新たなサービスを提供する際にインターネットを利用して資金を集める手法だ。資金を提供した方には、その製品やサービスを安価に購入することができるメリットが付いている。この様な仕組みが米国を中心に世界中で定着している。また、社会貢献する団体などに対する寄附を行うクラウドファンディングもある。

大学支援機構が支援する大学クラウドファンディングは、研究者の研究や大学・学生の取り組みを社会に認知していただき、多くの方々の共感を得て事業費を支援していただく仕組みである。これまで大学では、どういった研究や教育を行なってきたかが一般には伝わっていなかった。より具体的に理解していただけるように情報を発信し、大学の活動に興味を持ってもらえることが重要であると考えている。その結果、寄附などの支援につながる効果も期待している。

私たちが大学と共に取り組んできた大学・研究案件のクラウドファンディングでの寄付金は、2020年12月末時点で総額7,298万5,995円を調達している。取り組んだ大学案件のプロジェクト数は40件となり、成功率は約70%となっている。昨年は、新型コロナウイルス感染症拡大により学生への支援を求めた「修学支援クラウドファンディング」プロジェクトを徳島大学と鳴門教育大学で同時期に公開した。両校とも大きな反響があり支援内容が分かりやすく、スピーディーな支援対応につながった。

さらに、クラウドファンディングをきっかけとして、これまでの実績の表には反映されていない、大学に対して直接的な寄附に結びついた事例などもあり、単純に資金を獲得するためだけではなく、相乗効果的に大学の抱える課題にアプローチする手段としてのクラウドファンディングの活用を提案している。

また、大学の使命である地域貢献を進めるため、県や市の行政案件、また地域企業と共同で、地域創生案件や地域経済案件にも取り組んでいる。この分野では39件が支援を集めることができた。

実績
Otsucle のこれまでの実績

大学支援機構 Otsucleサイトの事例

本稿では三つの事例を紹介する。

①テーマ:筋萎縮ゼロプロジェクト~ICUの患者さんにもう一度社会復帰してもらいたい~

挑戦者:徳島大学病院集中治療部 助教 中西信人(なかにしのぶと)
達成額:2,478,000円 サポーター:94人 期間:2020年1月20日~2020年3月27日

プロジェクトについて:

筋萎縮ゼロプロジェクトは、ICUの患者が社会復帰できるために世界初の筋萎縮モニタリング測定のモデルの構築を目的としている。このプロジェクトを通し重症患者の筋萎縮予防に向けた原因・診断・治療に関する研究の発展を目指す、研究費獲得のために挑戦した。

支援者への感謝:

重症患者さんの社会復帰を目指して始めた筋萎縮ゼロプロジェクト。無事クラウドファンディングを終えることができました。支援していただいた方一人一人に今すぐ御礼を申し上げたい気持ちです。クラウドファンディングの目的である研究も順調に進んできております。尿中物質を用いた筋萎縮のモニタリングはもちろんのこと、筋萎縮予防に向けた研究も成果が出てきております。御支援していただいた皆様の期待に応えられるような活動を、人生をかけてしていきたいと思っております。


②テーマ:徳島大学 鳥人間プロジェクト創設メンバーの挑戦! 0から作った飛行機で、空へ

挑戦者:徳島大学イノベーションプラザ鳥人間プロジェクト 八木橋依吹(やぎはしいぶき)
達成額:1,125,000円 サポーター:41人 期間:2020年11月4日~2020年12月14日

プロジェクトについて:

「鳥人間プロジェクト」は毎年7月に開催される『鳥人間コンテスト』で飛行することを最大の目標として発足しました。コロナ禍により2020年のコンテストが中止となりました。創業メンバーにとっては、『鳥人間コンテスト2021』への出場が最後のチャンスです。悲願であるコンテストに向けて滑空機を製作する予算が不足しており、クラウドファンディングに挑戦しました。

支援者への感謝:

皆様のご支援、ご協力のおかげで目標金額を達成することができました。クラウドファンディングをスタートさせたときは、正直どうなるのか不安な気持ちの方が大きかったですが、たくさんの方々から応援メッセージをいただき、その言葉が私たちの力となりここまで頑張ることができました。またこの挑戦を通して、皆様の支えがあっていまの活動ができているということを改めて実感しました。 感謝の気持ちでいっぱいです。メンバー一同、感謝申し上げます。本当にありがとうございました。来年の鳥人間コンテスト出場に向けて、皆様のご期待に添えるように日々精進していきますので、今後も応援のほどよろしくお願い致します。


③テーマ:「国内最古級 恐竜化石 本格発掘調査プロジェクト」 ―徳島県で恐竜化石をもっと発掘したい!―

挑戦者:徳島県立博物館 学芸員 辻野泰之(つじのやすゆき)
達成額:1,543,000円 サポーター:93人 期間:2019年7月12日~2019年9月17日

プロジェクトについて:

徳島県勝浦町には、全国でも珍しい恐竜化石を含む地層ボーン・ベッドが存在し、現在も掘削が可能なボーン・ベッドは日本でこの場所だけである。この場所は、急傾斜の山腹に位置し、木々の足元には、大きな岩が多数あり、安全に発掘できる状況ではない。また、一般道路から離れており、まずは、重機を発掘現場まで運ぶための作業道を確保し、その上で、ボーン・ベッドをむき出しにして、恐竜化石が発掘できる状況にするための支援をお願いした。

支援者への感謝:

皆様のご支援・ご協力のおかげで、目標額を大きく上回り、挑戦を締めくくることができました。コメント欄への、たくさんの応援メッセージもありがとうございます。また、このクラウドファンディングの周知にご協力いただいた皆様、報道関係の方々に、あらためて感謝申し上げます。企画展「とくしまの恐竜時代」が終了し、一部の展示資料は、移動展として勝浦町に貸し出していますが、現在、それ以外の展示資料の撤去作業を行っています。また同時並行で、本格発掘調査に向けての準備作業も行っています。皆様のご期待に添えるよう、発掘調査を頑張りたいと思いますので、引き続きご声援のほどよろしくお願いいたします。今後、発掘調査の状況も発信できればと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。


問題点と課題

私たちは徳島大学の事例を元に様々な意見を取り入れ、クラウドファンディングサイト「Otsucle」の改善を続け、多くの大学にノウハウを提供し、システムを利用していただけるように努めている。今までに、全国の大学に呼び掛けを行い「大学への理解、支援」の機運を一緒になって盛り上げていこうと賛同いただいた大学には賛助会員として登録いただいた(2021年1月現在で、徳島大学、鳴門教育大学、島根大学、香川大学)。

研究者のクラウドファンディング活用の意識は科研費や補助金などの申請に比べるとまだまだ低い。私たちが当初学内の説明会などを通じて、挑戦者を募集していた際に感じたことは研究者の意識として、クラウドファンディングは研究費の無い研究者、つまり科研費や共同研究などが取れない研究者がやるものという偏見を持つ方もいたように思う。また、目標金額に届かず失敗すると自らの研究価値を否定されるかのような思い込みがある方も見受けられた。研究者の心理的なハードルをいかに払拭し、正しく理解を深めていくかが今後の活用のポイントとなると感じてきた。

実際にクラウドファンディングに挑戦した方の結果からは、成功率が科研費の採択率よりも高く、研究内容が外部のメディアなどに取り上げられる機会も多くなっているなど副次的な効果も含めておおむね好評を得ている。クラウドファンディングに挑戦したほとんどの先生が地元紙または地元のテレビ局からの取材を受けている。クラウドファンディングとは直接的に関連しない内容の取材も含まれるが、クラウドファンディングへの挑戦と分かりやすい情報発信が関係している。

アウトリーチと研究費の獲得が同時にできる点で、クラウドファンディングの活用は非常に効果的な研究支援だと考えている。課題は大きな研究に対しては、金額がまだまだ小さいことと長年に渡る研究の一部または、一面しか支援できないことがある。そのような研究に対する研究費は、科研費など従来からの研究費の獲得も重要な役割を持っていると考えている。

今後の展望

国は、公的資金による研究成果については、その利活用を可能な限り拡大することを国のオープンサイエンス推進の基本姿勢とすることとなっている。研究は論文を投稿して終わりではない、世界中でその研究が認知されることで、研究成果を最大化することが求められている。

大学支援機構は、Otsucleの仕組みを利用し全国の大学と連携し、大学と国民との双方向のコミュニケーション機会の充実を増進し、研究者などと国民とが科学技術に関して相互理解を促進する支援を進めている。積極的な情報の発信が外部資金の獲得を増加させることに不可欠だと考え、多くの大学や研究者を支援することを目指している。コロナ禍でテレビ会議などの利用率も増加したことで、場所や地域の制限が少なくなり活動範囲が広がるきっかけとなった。研究者がなるべく研究に集中できる環境を整えるため、情報発信や研究費の獲得をサポートする機能を強化していくことを目指していく。

*1:
「OTSUCLE(おつくる)」とは?
徳島大学がスタートした、大学初のクラウドファンディング・クラウドソーシングプラットフォーム。大学の本来のミッションである教育、研究、社会貢献を目的とした活動のクラウドファンディング、クラウドソーシングを行い、研究者が市民と直接つながることで、社会に開かれ共創する仕組みを作り、大学の知と技術を社会に還元し、かつ収益化することを目的としている。プラットフォームは他大学の教員も利用できる。
本文に戻る

参考文献

**1:
文科省資料「オープンサイエンスの推進について」(科学技術・学術審議会総合政策特別委員会 平成28年11月)より
本文に戻る