シリーズURAの質保証制度

第4回 認定のスキームと審査方法の概要

大阪大学 名誉教授 池田 雅夫
京都大学 学術研究支援室長 佐治 英郎
金沢大学 先端科学・社会共創推進機構・准教授 稲垣 美幸

2021年3月15日

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本シリーズのこれまでの連載で、URAの質保証制度がどのような経緯で検討されてきたかを説明した。そして、第3回で、文部科学省リサーチ・アドミニストレーター活動の強化に関する検討会による「論点整理」**1に基づき、文部科学省令和元年度科学技術人材養成等委託事業「リサーチ・アドミニストレーターに係る質保証制度の構築に向けた調査研究」**2において認定制度の具体化の検討がなされたことを述べた。さらに、文部科学省令和2年度科学技術人材養成等委託事業「リサーチ・アドミニストレーターの認定制度の実施に向けた調査・検証」**3において制度の試行がなされるなど、現在も検討は継続している。このような状況を踏まえ、本稿では、令和元年度事業における認定スキームと審査方法に関する成果を中心に紹介する。最終的な実施の段階において審査方法が多少異なる形になる可能性があることをお断りしておく。

認定のスキーム

認定のスキームとしては、第2回に掲載した図2が「論点整理」に示されている。そこでは、認定申請のプロセスとして、まず研修の受講が求められている。その上で、一定の実務経験と所属する大学等の推薦(評価)のもとに認定機関に申請し、認定機関が提出書類に基づき面接等の審査をすることになっている。

現在、研修としてはFundamental、Core、Advancedの三つのレベルが考えられている。それらを第3回の図1と組み合わせると、(認定における研修と審査)のようになる。この図で、〇〇となっているところには、第3回で紹介した大学戦略の企画立案、プロジェクト企画・運営、セクター間連携、知的財産管理と活用、医療系等の専門業務区分が書き込まれる。

図
認定における研修と審査

研修のレベルは
  Advanced:URA業務上の課題の発見と解決を主導的に行うことができる知識と理解力のレベル
  Core:URA業務上の課題の発見と解決を自立的に行うことができる知識と理解力のレベル
  Fundamental:URA業務上の課題の発見と解決を上司の指示のもとに行うことができる知識のレベル
のように考えられている。これらの履修の関係は、Fundamentalレベル研修の修了がCoreレベル研修の受講要件であり、Coreレベル研修の修了が認定URAの申請要件かつAdvancedレベル研修の受講要件、Advancedレベル研修の修了が認定専門URAの申請要件となっている。

研修の内容については、本連載の次回以降第5回~第9回で詳しく述べる。

審査方法の概要

審査方法を考える基本として、「論点整理」には『認定の基準は(第3回で紹介した)「スキル標準」**4を土台にして作成することが現実的であると考えられる。実際の審査では、「スキル標準」に掲げる知識・能力に照らし、申請者がその業務・レベルに応じて相応の水準を満たしているかを確認するものとなる』と書かれている。この考えに従い、まずスキルの意味を確認しよう。

「スキル標準」ではスキル=業績(経験と実績)+能力という考え方と、スキルのレベルを示すものとして経験あるいは実績についての「業績指標」と知識等をベースにした理解力又は問題解決能力についての「業務遂行能力指標」を初級、中級、上級のレベルごとにスキルカードで定義している。これに基づき、現在検討されている審査方法では、

スキル=業績(経験あるいは実績)+業務遂行能力(知識・理解力と問題解決能力)

とし、申請者のスキルのレベルを確認するために、認定URAと認定専門URAのそれぞれについて、表1の書類の提出を求めることとしている。この表にあるように、申請要件として研修の修了とともに、認定URAについては3年以上の業務経験を、認定専門URAについては認定URAであることを求めている。これらの要件は経験と実績の判断材料の一部である。認定の期間はいずれも5年としており、認定の継続を望む場合は、第2回の図2にあるように、更新審査を受けることになる。

表1 スキルの指標と審査書類
表1

認定URAは書面により基準適合性の観点で審査される。認定専門URAは書面に基づく面接により卓越性の観点で審査される。ここで、基準適合性と卓越性という語を使っているが、これらは「論点整理」に従っている。具体的には、これまで述べたように、認定URAが「スキル標準」の中級に、認定専門URAが上級に相当することから、基準適合性は「スキル標準」の中級のスキルカードに書かれているレベルを意味し、卓越性は上級のスキルカードに書かれているレベルを意味する。

以上の考え方の下、第3回で示された認定URAと認定専門URAの人材像を基に、それぞれの評価項目と審査の観点を表2のようにしている。

表2 評価項目と審査の観点
表2

認定の信頼性

表2の審査の観点を、実際に認定を受けようとする人たち、もしくは認定結果を活用しようとする人たちの視点で見ると、曖昧だという印象をもたれる方が多いであろう。また、URAの認定そのものが無理なのではないか、たとえば複数の人が認定専門URA(プロジェクト企画・運営)に認定されたとしても彼らの同等性は保証されないのではないか、などの疑問が生じるかも知れない。しかし、このような状況は学位についても同様であるから、学位の授与のように理解すればよいのではなかろうか。

例えば、博士(工学)には電気工学、機械工学、化学工学、土木工学など専攻が異なる人々が多数いる。これらの人達の同等性を専門分野に立ち返って示すことは不可能である。

では、博士(工学)の同等性は何で担保されているかというと、学校教育法**5と大学院設置基準**6に基づき、その基本は大学院に5年以上在学し、30単位以上を修得し、かつ、必要な研究指導を受けた上、当該大学院の行う博士論文の審査および試験に合格することという条件によっている。実態として、専攻間で博士論文の審査および試験の合格のレベルの調整は行われていない。それでも、専攻の違いに関わらず、世の中は博士(工学)を同等に扱っている。ただし、この前提として、教育課程と教員が適切であるか、つまり大学院自体の存在が審査され、認可されているということがある。

このように考えると、URAの認定制度が信頼されるには、研修の内容と修了判定、そして審査の仕組みというシステムとともに、認定の結果がURAに関わる多様な立場の人々に納得してもらえるものであることが必要である。

今後の課題

言い換えれば、審査については、関係者がその方法の詳細を知らなくても、審査に合格して認定された人々が、関係者が納得するレベルにあることが最も大切なことである。そのためには、URAの業務について偏らない知識を持ち、認定URAあるいは認定専門URAのレベルを正しく理解した審査員の確保・育成を認定制度の開始までにしなければならない。それが当面の大きな課題であると考える。

参考文献

**1:
文部科学省リサーチ・アドミニストレーター活動の強化に関する検討会「リサーチ・アドミニストレーターの質保証に資する認定制度の導入に向けた論点整理」ホームページ
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**2:
金沢大学「リサーチ・アドミニストレーターに係る質保証制度の構築に向けた調査研究」報告書ホームページ
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**3:
金沢大学「リサーチ・アドミニストレーターの認定制度の実施に向けた調査・検証」ホームページ
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**4:
東京大学「リサーチ・アドミニストレーターを育成・確保するシステムの整備」(スキル標準の作成)報告書ホームページ
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**5:
学校教育法ホームページ
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**6:
大学院設置基準ホームページ
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