リポート

情報通信と農業の融合 産学官で事業拡大

2021年3月15日

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北海道北見市に拠点を置く、株式会社システムサプライは情報通信システムと農業を掛け合わせた産学官連携で存在感を示している。仕掛けてきたのは、代表取締役の門脇武一社長だ。圃場では、ドローンによる生育状態の把握や土壌診断などの仕組みを製品化し、農業生産法人を設立し農産物(食)と健康で産学官の関係者が集う組織を立ち上げ、積極的な情報交換も行う。

地元北見で情報通信業

固定電話回線の電話網が、低コストで通信需要の増大に対応することや通信機器の信頼性向上、通信に対する付加価値を付けるなど多様なサービスの提供を可能にするために、1980年代後半からデジタル化と通信の自由化が進んでいった。

門脇社長は、通信事情の大転換期に、アナログ電話をデジタル化するための研究プロジェクトに参画した経験を持つ。NECから電電公社(現NTT)の研究所へ出向し、ソフトウェア開発を経験。当時は、富士通や日立製作所なども参画し共に仕事をした。

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ロボット技術導入実証事業を経て実装稼働

家庭の事情で地元の北見市に戻り得意の情報通信分野事業で起業した。1983年32歳だった。

今期で38期目を迎える同社の事業を振り返ると、インターネット黎明期の1995年には、プロバイダー事業をスタートさせ、2000年には、精密農業情報システムの開発に着手した。

2002年には、新しい農業のカタチを形成するため、日本で始めて株式会社による農業生産法人の株式会社イソップアグリシステムを設立し事業化、2006年には、精密農業情報システム実証事業をスタート。2007年には、地域情報化促進へ向けたコンソーシアムの事業化、2008年には、持続可能なフードチェーンシステムを構築し株式会社イソップフーズ設立と次々と事業を拡大。

情報通信事業と農業の融合が見て取れ、それらのプロジェクトには、産学官連携の活動が少なからず関与している。

農業と漁業の第一次産業が地元経済を支える北見市周辺地域(オホーツク地域)で情報処理・情報通信システム開発会社を立ち上げた行動力は、地元の主要産業である農業へも関連付けているのが特徴だ。

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門脇社長(2020年4月の社内入社式で)

緩やかな産学官連携組織を主導

門脇社長は自ら主導し、北海道オホーツク総合振興局、北見市、北見工業大学、東京農業大学オホーツクキャンパスなど30人ほどの構成メンバーとなる産学官の枠組みを作ってイソップコリドール活動を立ち上げ、持続可能で緩やかな連携でさまざまなフォーラムを実施してきた。

地方独立行政法人北海道立総合研究機構や北見工業大学、東京農工大学、東京農業大学などと連携してきた。

生産性向上のための農業情報をテクノロジー化するクラウド型精密農業情報システムの一つでもある、農業クラウド連動「土壌診断・施肥設計システム」は、堆肥活用、新基準に対応した土壌診断および施肥設計までをサポートするシステムであり、例えば、JAきたみらいや自治体が共同で仕組みを導入し、農家はそこに土を持って行き分析してもらうことで作物の生産性向上に役立てる。地元で広く活用されているシステムだ。東京農工大学の澁澤栄教授らが研究する知見を活用し、独自に研究改良を重ねながら、環境保全型精密農業の啓蒙や生産性に資する現場システムの実装に取り組んでいる。

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リアル土壌センシング(堆肥の肥効発現分析)

ドローンでは圃場の写真を上空から撮影し、生育のむらなどを確認。畑の上から作物を診断する。GPSデータ収集PDA用ソフトウェア「G-Pad」は、圃場計測用途に機能を特化させ、D-GPS受信機と組み合わせることで、高い精度で圃場管理を支援する。精密農業技術は漁業の養殖場管理としてホタテ操業支援の分野にも活用されている。

どれも、生産性を向上させるために本業であるIT技術を活用している。地域の特性でもある産業が農業に依存する主力産業だから農業で起業するのではなく、ITと農業の融合で事業を拡大してきたと言える。

地域融合フォーラムは毎年開催しているが、直近では、徳島大学大学院医歯薬学研究部生体栄養学分野の二川健教授に筋肉を保持(貯筋)する大豆のチカラについて講演を依頼。イソップコリドール事業推進にも余念がない。大豆の効用を探求し、健康価値の創出を意図した活動だ。大豆の生産から低糖質食品の加工・製品化までを行い、大豆まるごとフレッシュソースや大豆まるごとスティックケーキなど多くの商品を開発、ITと農業の融合、そして畑で生産される作物を製品化し販売までをこなす。その陰には学との連携は欠かせない。

門脇社長は「本業はITですが、農業が地域の産業なので」と必然性を語った。さらに「大学の専門技術はすぐに製品化できるわけではありませんので、その技術を活用し、製品として組み込み事業として広げるのが企業の仕事です」と産と学の役割りを説く。

今後は、情報と健康(農業・食)のインフラを担う豊かな社会を目指したいと話すが、「71歳なので、後継者育成に力を入れています」と笑った。

(山口 泰博)